15話 悪役令嬢モノで見たことある
生徒会の部屋の前に着くと、私はいったん落ち着くために立ち止まって深呼吸する。ライオネル殿下が小声で話しかけてきた。
「緊張しているか?」
「……当たり前です。確認されると余計緊張するのですが?」
「そうは見えないがな」
足踏んづけてやりたい。さっきから人をからかってくるのなんなの。普通に話せばまともなくせに。
私の憤りをぶつける前に、ライオネル殿下が一歩前に出てノックをしようする。しかしその手がノックをする前に扉がバタンと空いて、私に何かがぶつかった。衝撃。勢いが良くて私はよろめく。しかも、踏ん張りがきかずに後ろへと倒れてしまった。
「――っ! 大丈夫ですか!?」
床に着いた手が痛くて視線を落としてると、大きな声が間近で聞こえた。びっくりして顔を上げると、目の間には栗色のふんわりとした髪を緩く編み込み、大きな琥珀色の目が印象的な少女――ケイティが心配そうに私の顔を覗き込んでいた。
その琥珀色の目は明らかに赤みを帯び涙の雫がついていて、泣いていたのが明白だった。ぎょっとして思わずまじまじと見てしまう。
「…………だ、大丈夫って。貴女こそ……」
「あっ……」
私の視線に気が付いて、ケイティは目を手で拭ってから顔を背ける。目の前の生徒会室からカツカツというヒールを鳴らす音が近づいてきた。上から振ってくる凛とした声。
「ちょっと、いつまで入口にいるつもりなの?」
凛とした声で棘のある台詞を吐く人物を見た。サファイアの長い髪が歩くたびに靡き、瞳は光で虹色に光る。吊り上がった目と眉からは意思の強さを感じられるが、小さな赤い唇は色気が漂っていた。彼女は――侯爵令嬢アウレリア様だ。堂々と姿勢の良く立つ姿は、いまだに座り込んでしまっている私には圧巻に見えた。口元は扇子で覆い隠しているものの眉根は寄っており不愉快さを露わにしている。
見たことあるよ、そういう顔。悪役令嬢モノの小説で見たことがある。
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