158話 結婚しよう
夜風に当たりたくてテラスへ出る。
テラスの柵に寄り掛かって夜空を見上げると、月が綺麗だった。満月で、煌々と辺りを照らしている。風も冷たくて気持ちがいい。
「ふぅ……」
息を吐けば、少し肌寒くて腕を摩る。
後ろからそっと何かをかけられた。後ろを振り向けば、レオが立っていた。上着を貸してくれたらしい。上着の効果以上に、温かく感じる。「ありがとう」と短くお礼を言うと、頷いてレオは隣へと移動する。
「疲れたか?」
心配気に私の顔を見て、顔にかかった髪を救い上げてくれる。
「少し……ずっと緊張してたから」
「ダンスは前より上手くなったな」
「ケイティに教えなきゃいけなかったし、練習したもの」
軽い話に、肩の力を抜いて返す。褒めてもらえたことは素直に嬉しくて、頬が緩んだ。レオも嬉しそうに頬を緩めていて、気を許してもらっているのだと思うと心が落ち着く。
そっと手を重ねられて、首を傾げる。
「……ミラ」
「なに?」
さっきまで緩やかな空気だったのに、レオが顔を引き締めて真剣な表情をするから、背筋が伸びた。何か言いたげな視線をじっと見つめ返す。
「結婚しよう」
一言だけ静かに告げられた。
頭の中で反芻して、やっと理解する。顔がぶわっと熱くなったのを感じた。
考えなかったわけじゃない。裁判所で”妻”と言われてから、時折考えてしまう。レオだからそんなことはないと思っても、婚約破棄とかジュリアナが復活してきたらとか、頭の中によぎることはあった。だから、うっすらと結婚したいと思ったこともある。
「ミラのことを婚約者としてしか紹介できないのが歯がゆかった。それに婚約者という立場ですら不安があった」
何も言えないでいる私に、レオは説明してくれる。その赤い瞳はまっすぐに私を捕らえていて、手まで熱くなるのがわかる。
同じ気持ちなのを言葉で伝えられて、私は頷くことしかできなかった。胸がいっぱいだ。
「結婚してくれないか?」
今度は問いかけてくる。答えなきゃ。ちゃんと、私の気持ちを。
「――喜んで!」
思わず声が裏がってしまったけど、レオは嬉しそうに破顔した。
顔が近づいてきて、額に唇が触れて離れていく。どきどきと心臓がうるさいけど、自然と目を閉じた。
唇にリップ音と共に触れて、目を開ければ間近にレオの顔があった。
「ふふ……」
笑うとレオの顔も笑った。
「まずは兄上に相談しに行くぞ」
レオは離れると、私の手をぎゅっと握った。嬉しそうに笑った顔はいつもよりも幼くて、子どもの頃を彷彿とさせた。
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