155話 祝賀会前
あっという間に祝賀会の日が来た。私とケイティは控室で二人で待機している。
「うぅ、大丈夫でしょうか」
ケイティは珍しく不安そうな表情をする。でも、それもそうか。初めてのパーティーだもの、緊張するわよね。
あの後、誰もが忙しなく、時間なんて足りないほどだった。私は、主にケイティへ貴族の作法やダンスを教え込んで祝賀会で恥をかかないようにサポートした。王子二人は後始末に祝賀会開催にと大忙しだったので、会う機会もなかった。寂しく思うも、仕方ないのだから気持ちは心の奥に押し込める。
「頑張ったじゃない。大丈夫よ」
ケイティの相手はフィリップ殿下に決まっている。彼ならレオと一緒でダンスにも慣れているだろう。多少こっちが下手でもカバーしてくれるはずだ。
「うぅ、ドレスもこんな豪華だしっ!」
緊張は全然解れないみたい。
ドレスは、私にはレオから、ケイティにはフィリップ殿下から届いた。基調の色は白と金色で統一されていて、とても豪華だ。挿し色がそれぞれ赤と青で違うと言うのが、照れ臭かった。
「私たち主賓だもの。たぶん、フィリップ殿下とレオも同じ基調の服だと思うわ」
私の言葉にケイティが目を見開いてぱちぱちと瞬きする。違和感を覚えて、目を細める。
「……なにかしら?」
「ふふ、愛称で呼ぶようになったんですね」
さっきまでの緊張が嘘のように、私を見てニコニコしだしたケイティに、思わず口元に手を当てる。しまった。手紙のやり取りとかでずっと愛称だったから、そのまま呼んじゃった。恥ずかしさが込み上げる。
でも、否定するのは何か違う気がして、恥ずかしいけど認めるしかなかった。
「そ、そうよ……」
「きゃーー! いいですね、仲良しさんじゃないですかっ!」
興奮したケイティに、恥ずかしさも霞んで笑ってしまった。
「さっきまで緊張してたのに、もう大丈夫ね」
「あ、そうですね。愛の力は偉大です」
うん、何言ってるかよくわからないけど、ケイティがいつもみたく笑ってくれて良かった。私も緊張がほぐれた。
扉が開かれる。迎えが来たのだ。それだけで、私の心臓は期待に大きく跳ねる。会いたかった。その気持ちが溢れ出る。
「二人ともお待たせ」
「ミシェル!」
レオが大股でパッと私の目の前に来る。腰を掴まれて宙に浮いた。足の浮遊感に体が強張る。
「似合ってる」
嬉しそうに笑う笑顔に体の力が抜けた。同じ基調の服に、挿し色は薄い紫なのが目に入って心が躍る。嬉しい。
「あ、ありがとうございます」
抱き上げられたのは一瞬で、すぐに足が地面についた。見上げて赤い瞳を見つめる。
「レオも似合ってますよ」
目元が緩んですぐに、抱きしめられた。びっくりして体が固まるけど、抱き着きたい気持ちが顔を出して、おずおずと背中に手を回した。ぎゅっとすると温かい。寂しいのがどっかへ行ってくれる。
「嬉しい、ミラ」
囁かれてドキっとする。愛称で呼んでほしいと言ってたから、喜んでもらえるとは思ったけど。ここまでされると恥ずかしさが勝る。
服を引いて、少し身を離せばレオも腕の力を緩めてくれた。
「レオ、そろそろいいかな?」
フィリップ殿下がタイミングを見て、声をかけてくる。そうだ、祝賀会に行かないと。ケイティを見ればにっこにこだったので、思わず頭を下げた。フリィップ殿下とケイティがいるのに、やってしまった。会いたかった気持ちのまま行動してしまって、恥ずかしい。
「兄上の方は話、終わったのですか?」
レオがフィリップ殿下とケイティを見比べるも、どうも話していたようには思えない。ケイティがきょとんとして首を傾げた。
「いいんだ、今は」
フリィップ殿下は曖昧に笑ってから、ケイティの手を取った。
「ケイティは私がエスコートしてもいいかな?」
「わ、え!? も、もちろんです!!」
腰をかがめて、下から覗くように言うものだから、ケイティが驚きの声をあげている。真っ赤な顔をしながら何度か大きく頷いていた。
「ミラは俺が」
「ええ、お願いします」
レオが手を取ってくれたので、笑って返す。
これから、祝賀会が始まる。
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