154話 後始末
「これからの後始末のことだけど、隣国へは多額の賠償金、協力関係を結び輸入関連でこちらが主導権を握る条件を出すよ。あとは、ノクタリウスとハートフォード嬢の引き渡しを要求するつもりだ」
私とライオネル殿下のやり取りを気にも留めず、フィリップ殿下は丁寧に今後について説明してくれる。
賠償金と主導権、無難な要求ね。これを突っぱねたら黒龍とともに攻め入るという圧力があるから、向こうも飲まざるを得ないでしょうね。
横耳で聴きながら、私はじっとライオネル殿下を見た。横目でちらりと見られて、「なんだ?」と口だけ動かされる。それはこっちのセリフなのだけど。
何故か、ケイティが私からそっと離れた。そこでようやっと思い至る。ケイティに焼きもちやいてた? まさか?
何も言わずに見ていると、ため息を吐かれて、手を優しく握られた。やっぱりそうなのかも。ちょっと浮かれて、頬が緩みながら手を握り返す。
「こほん」
フィリップ殿下の咳払いに、はっとして背筋が伸びる。少し恥ずかしい。けど、手は離さなかった。離したくなくて。
「その交渉が終わったら、祝賀会を開くよ。今回の騒動に関わった人間は主役だからね、覚えておいて」
釘が刺された気分だ。ちゃんと今後のことを考えろと戒められたわね、今。そういえば、ノクタリウス令息たちはどうするのかしら? あそこまでした人物だから死刑でもおかしくはない。でも、気持ちのいいものじゃないし、ライオネル殿下やフィリップ殿下の幼馴染でもある。長い時間関わって来た彼に対して、思うところはあるよね。
「わかりました。あの、ノクタリウス令息たちはどうなるんですか?」
フリィップ殿下に聞いてから、ちらりとライオネル殿下を見た。寂しそうに眼を伏していて、胸がぎゅっとなる。やっぱり、あれだけのことをしたのだから……。
「国家反逆罪。一族ともに死刑が一般的だよ……ただ、公にするとそれこそ国家が揺らぎかねないから、ね?」
わかるだろうと、軽くウィンクされる。要するに公に死刑にすることはない。そしてここで言葉を濁すということは、死刑を決行する気もなさそうだ。フリィップ殿下なら、ずっと監視がつくいわゆる終身刑のような形を取りそう。
死刑ではないということだけで、ちょっとほっとした。ライオネル殿下がちらちら見て来て、心配してるのがわかる。しらずしらずのうちに、握る手に力が入ってしまってたようだ。そっと力を緩めると、ライオネル殿下も落ち着いたように息を吐く。
「さあ、ケイティもシルヴァレーン嬢もゆっくりと休んで祝賀会の準備をお願いするよ」
フリィップ殿下は私とケイティを追いやるように肩を軽く押された。ライオネル殿下の手の温もりがそっと離れていくことに寂しさを感じた。でも、わがままは言えない。これから二人は後始末をするのだから。
その日は自宅は戻ることになった。
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