152話 ご褒美
その作戦が見事に成功したのだ。
レオと私が乗っている影は、元魔王の黒龍だ。大きな口を開き裁判長や隣国の人間を威嚇している。レオは約束を守ってくれた。
「さて、ヴァレリアン帝国。我が名はライオネル・カイリス。カイリス国第二王子だ。俺の妻の予言を聞いただろう? 俺が引導を渡してやる」
レオの声に合わせて、黒龍が大きな声で唸り声をあげた。地響きのような音は人を恐怖に陥れるにはもってこいだった。
まだ婚約者なんだけど。と言いたかったけど、ここで口を挟んで場の雰囲気を壊したくはなかった。
裁判長は凍り付いて、後ろの高台に座っていたヴァレリアン帝王に全員の視線が集まる。
「それが嫌なら、交渉の席に立ってもらおう。妻は返してもらう」
手綱を引いて、レオは黒龍を乗りこなす。黒龍はレオの意を汲んで方向転換をして破りさったステンドグラスからまた外に羽ばたいていく。尻尾で裁判長とノクタリウスを払ったのが見えて、笑ってしまった。
どんどんと隣国の騒がしい裁判所は遠のいていった。黒龍が高く、高く空へ上っていく。風が気持ちいい。
「ふふ……」
「嬉しそうだな」
「当たり前です! やっぱりレオは魔王を倒してくれましたし、隣国のこともこれでどうにかなりました。嬉しいに決まってます」
興奮冷めやらないまま、口をつく。身体を少し話して、レオを見上げた。はたっと目を瞬いた。
「頑張ったかいがあったな」
笑う顔に、ところどころが傷があって手を伸ばす。そっか、魔王を倒すんだもの、生半可なことじゃない。よく見たら服だって焼けこげたりしている。
「大丈夫でしたか?」
頬に触れても痛がる様子はない。でも、無茶させたよね……。
「ああ、誰も致命傷は受けていないから安心してくれ」
その言葉にほっとする。みんな無事だということだ。良かった。
触れていたレオの顔が近づいてきて、おでこ同士がぶつかる。触れている体温を意識して、温かいことに心臓がじょじょに早くなる。無事でよかったという安堵も混じって、頭の中で考えがまとまらない。
「ミラからのご褒美がほしい」
赤い目が間近で訴えてくる。ことりと喉が鳴った。
ご褒美って、なに? 私ができることでいいの?
困ってしまって、手で触れた頬を指先で撫でる。指先が金色の髪に触れて少しくすぐったい。
「ご褒美って……何がいいんですか?」
赤い瞳をじっと見て問いかけた。二人きりだった時のことを思い出してしまって、落ち着かない。思いだしたせいで、なんとなくそういうことだろうと、答えはわかっていて心臓がもっと大きく鳴り始めている。
「口づけしていいか?」
「……はい」
どっと顔が熱くなったけど、わかっていたから、大丈夫。と自分を落ち着けて、私は目を閉じた。
軽く触れられて、リップ音がする。目を開けると、蕩けるように笑ったレオの顔が間近にあって、心臓がどきどきした。
じわっと手が温かくなって、嬉しかった。
「レオ――」
だから、今度は私から唇を重ねた。すべてが終わったのだと、やっと感じ始めていた。
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