149話 魔女の予言
死刑や、首つりや断頭台など、好き勝手言われている。罵倒に動悸がして手をぎゅっと握った。自分自身を保たないと。
「ふふ、言いがかりはおよしになって」
口元を隠しながら、私は余裕があるような口調で言い放った。何本もの視線が私に突き刺さる。
「言いがかりなどではない! お前の母も占いと称して国に魔術を使う魔女ではないか!」
見下すようにノクタリウス令息を見れば、煽ったかいもあって取り乱すように言い返してくる。
でも、お母様のことまで持ち出すなんて、許さないから。
ここからは私の番だ。いままでの分、覚悟しなさい。
「あはははは」
私は甲高い声をあげて笑う。悪役にでもなった気分で。場内は異様なほど静まり返った。
私は息を吸う。
「では、その魔術とやらでこの国の未来を占いましょうか」
私の声だけが響く。喉を鳴らす音が微かにいくつか聞こえた。裁判長が口を開く前に、私は自分が出せる精いっぱいの声で、言ってやった。
「この国は滅びますわ。魔王と未来の我が夫の手によって!」
場内にエコーする。小さなざわめきが徐々に大きくなる。そしてすぐに恐怖へと変わった。
「我が国を侮辱するか! 死刑、死刑だ!!」
カンカンと怒り任せに木槌が打ち鳴らされる。ステンドグラスに影が映っても、皆私に注目している。私は口端を上げて笑った。
「ふふふ、魔女なのでしょう? 私の予言は当たりますよ?」
言葉を吐いた瞬間、ガシャンというガラスが割れる音が響き渡り、私に大きな影が覆いかぶさった。
「ミラ! 迎えに来た!」
聞きたかった声が私を呼ぶ。大きな影から手を伸ばしたのは金髪が太陽の光に輝き、赤い瞳が燃えるように光ったレオだった。私はその手を躊躇なく掴む。引き上げられて抱きしめられた。
「夫か、いいな」
「聞いてたんですか!?」
いないと思ったのに! と顔を上げて抗議する。微笑んで嬉しそうにしている顔に表紙抜けした。レオも安堵しているのだとわかった。
「間に合って良かった」
「成功したんですね」
私も抱きしめ返して、表情が綻ぶ。良かった、成功した。涙が滲む。
あの日、私はレオに思いだしたすべてを話した。
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