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147話 魔女裁判

 隣国――ヴァレリアン帝国の裁判所に私はひとり立たされている。魔女として、隣国に引き渡されたのだ。

 場内は綺麗なステンドグラスが上の方まで突き抜け、前世の教会に似ていた。

「汝、アウレリア・ ロセリウスをかどわかし、逃走させた魔女として告訴されている」

 辺りを観察していると、告訴状を読み上げられる。魔女というコールと、弾圧するような否定的な怒号が響く場内。この場に私の味方は誰もいない。

 どうせ処刑にするくせに形ばかりの形式ばった裁判をやるなんてね。公開して攻め入る口実にでもするのかしら?

 あら、見知った顔があるわね。赤い髪のトラウマだった女ジュリアナ嬢と、黒髪が目立つノクタリウス子息。隣国に逃亡というのは本当だったようだ。

 前々から繋がっていたとみてよさそうね。あちら側の身分の高い席にいるみたいだし。

 こんな状態、心細くないと言ったら嘘になる。でも、私は彼らを信じているから、大丈夫。

「いいえ、私は占いをしたまでです」

 淡々と答えたけれど、場内はブーイングの嵐が巻き起こった。耳をつんざく様な悪態が次々と浴びせられる。傍聴席も私を敵だと認識しているのがひしひしと伝わって来た。

 悪態が悪態を呼んで、さらに白熱していく。

 コンコンと裁判長が木槌を鳴らし、場内を沈めた。

「嘘をつくのはよくないぞ? こちらには証人がいるのだ」

 煌びやかな服装に伸びた背筋の人物が、私を指さして声を荒げた。容姿については聞いていたから、すぐにそれが隣国の皇子であることがわかる。偉そうに座りなおして、目でジュリアナ嬢に出るように指示をする。

 ジュリアナ嬢が私の横の席に立つ。口元を扇子で隠しながら私を一瞥する。

「被告人は、学園内で占いと称して怪しい活動をしていましたわ。被害にあわれた方は、この方を崇拝しておりましたの」

 崇拝ね。何度か来るお客様はたしかにいたけど、そこまで繁盛してた覚えはないのだけど。運営時間も後半は生徒会で短くなっていたし。

「それはもう、怖かったですわ。この方について肯定としか思えない発言を繰り返し、怪しいと訴えても聞く耳を持ちませんでしたもの」

 誇張しながら話すジュリアナ嬢。ジュリアナ嬢の関係者が占いに来た記憶もないので、別の誰かから聞いた話に尾ひれはひれをつけているのだろう。いちゃもんつけるのは、前々から上手だったものね。

「それに、アウレリア嬢と初めは仲違いしていたのに、途中から仲良くなり始めましたの。私が話しかけても、アウレリア嬢に牽制されるばかり」

 それは貴方が私に突っかかって来たからでしょうがっ。静かに聞こうと思っても、イラついてくる。

「そこまでアウレリア嬢を心頭させていたのですわ!」

 会場がわっと沸く。再び裁判官の木槌がなった。

「静粛に。して、被告人の占いとはなんだったのかな?」

 白々しくジュリアナ嬢を促す。

「恋愛を銘打ってましたわ。アウレリア嬢が被告人に吹き込まれ、駆け落ちしたのは明白ではありませんこと?」

 ざわざわとする傍聴席に、私はため息を吐いた。

「アウレリア様は、占いの館に一度も足を運び入れていません」

 事実をはっきりと口にした。暗に占いは受けていない。そういう主張だ。

「占いなんてどこでもできるでしょう! 現に平民も誑かし、フリィップ・カイリス殿下とくっつけたじゃない!」

 キィっとした声で捲し立てられる。

 木槌が鳴った。ジュリアナ嬢の横にノクタリウス令息が居て、彼女の腕を取った。びくっと身体を跳ねさせてジュリアナ嬢は大人しく引き下がる。

面白い、楽しい、と感じて頂けたら、

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