13話 契約成立
「そうだ。だから、その婚約者を無下にはしないだろ。派閥といっても周りが騒いでいるだけのことだ」
周りでも、私にとっては大変なんだけど。でも、アウレリア様と接点が持てるなら、今よりはマシ? でも、弟として見られてるならライオネル殿下がアウレリア様とお話すればいいのでは?
「仲が良いのであれば、ご自身でお話なさらないのですか?」
「誰もがお前ほどわかりやすくはっきりと物を言ってくれれば簡単なんだがな」
癪に障る物言いだ。さっきから失礼すぎて、協力するべきか躊躇するくらいよ。
抗議を込めてジト目で見つめれば、咳ばらいをして別の言い訳をする。
「……人の恋の悩みを聞くというのは難易度が高い。だからこそ、占い師のお前に声をかけたんだ。占い師な上に婚約者がいれば、恋の相談もしやすいだろう」
私に適性だと、彼は言う。そうね、傍から見れば占いでバンバン恋の橋渡しをしてるものね。私自身は前世も今世も恋愛したことはないけど、前世の小説や漫画カルチャーを参考にすれば百万力。実際それでどうにかなってきたし、今回だって接点さえ持てればそれで行けるはず!
「……内容は解りました」
内容は把握したし、条件は悪くない。けど、不安要素が一つだけ消えない。私は追記欄にさらに「ハートフォード家に対しての一切はライオネル殿下が責を負うものとする」と付け加えた。そして私の欄にサインをする。
「こちらの条件が飲めるのであれば、協力いたします」
私が書類を渡せば、ライオネル殿下は受け取って私が追記した箇所を確認する。眉根を寄せ、困惑しているようだ。
「……ハートフォード家がお前に何かしたのか?」
そこは把握してないのね。ジュリアナ・ハートフォードに学院で初めて会った時、トラウマがフラッシュバックして私は倒れてしまった。だから、彼女がもし突っかかってきたら私は対処できそうにないよね。ただ倒れたことを話せば私のトラウマまで話さなきゃいけなくなる。知らないのなら、わざわざ教えなくてもいい。であれば、派閥でのいざこざという話をしておきましょう。
「貴方の派閥だと喧嘩売ってきましたから、婚約者になればさらに騒がしいでしょうね」
「そうか……善処しよう」
ライオネル殿下は私の言葉に頷いた。そしてペンを持ち、私の名前の左にサインを記載する。
「これからよろしく頼む、婚約者殿」
「こちらこそ」
こうして、私は多少難のある契約を結んだものの生徒会へ入ることに成功した。




