129話 獅子の髪飾り2
葛藤している間にライオネル殿下が会計を済ませてしまった。いや、ほしかったけど……なんとも思わないわけ?
ちらりとライオネル殿下を見ると、表情が緩んでいた。思わず前を向く。気づいてる気がするっ。
「どうも……ありがとうございます……」
お礼を言えば、髪飾りを受け取ったライオネル殿下がこっちを向いた気配がした。
「……つけてもいいか?」
「あ、お願いします」
やけに真剣な声色だったから、顔を向けないことで怒ってるのかもしれない。でも、まだちょっと顔は見れないので、髪飾りをつけてもらう時間がありがたかった。首を横に向けて後頭部を彼の方に向けた。
優しい手つきで髪に触れられて、心臓がうるさい。きゅっと髪飾りを止める音がした。髪飾りが止めやすいように髪は編んでいるので簡単につけられたのだろう。彼の手の体温が離れていく。
「ミラ、つけおわった」
「ありがとうございます」
さすがにそろそろ顔を見せないといけないと、笑みを作って彼を見た。
「似合ってる」
ライオネル殿下の顔が頬が緩み、優しい眼差しを向けられて頭が固まる。
顔が熱くて反論ができないまま、ライオネル殿下は再び私の手を取って歩き出した。一か所にとどまってると人の波が止まってしまうからだ。私の反応に何も返してこないのでほっとした。けど、「お幸せになー」なんて後方から声が聞こえて、早足になってしまう。
「勝手に決めて怒ってるのか?」
早歩きになって私の方が前になる。だから、顔が見えなかったらしい。勘違いなんだけど、羞恥心から来る意地というか。このまま勘違いさせるのも忍びないので、否定しておいた。
「……違います。欲しかったから、いいんです」
「……良かった」
後ろから安堵した声が聞こえて、握った手をぎゅっと掴まれた。まだ頬の熱さが落ち着くことはない。そのまま、ライオネル殿下の手を引っ張って、次の目的地まで無言のまま歩いてしまう。
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