12話 アウレリア様とお話できないじゃないですか!
「放棄してるって……?」
「公にはしていないがな。将来的に公表されれば派閥などなくなるだろ」
まったく気にしないような口調。いや、将来的にはそうかもしれないけど……! 私はぐわっと沸き起こった感情のまま口を開く。
「私は”今”の話をしているのであって、未来的に派閥がなくなったからなんだというのですか。いいですか、私が貴方と婚約するということは、私の家は中立派から第二王子派にならざるを得ないのですよ? ただでさえ第一王子派に目の敵にされてるのに、これ以上悪化したくはありませんっ」
「目の敵にされてるのなら変わらないだろ」
はっと鼻を鳴らされて馬鹿にされているのがわかる。
何もわかってない! アウレリア様の行動ひとつで世界が滅亡するのに、第一王子派閥との関係が悪化したら、それこそ彼女と関係が持てなくなる。私は立ち上がって、婚約契約書を王子の前に叩きつけた。
「変わります! アウレリア様とお話できないじゃないですか!」
「…………ははは」
ライオネル殿下は私の勢いに身を引いて驚いていたかと思えば、片手で口を押えて笑い出した。今、笑うところあった? ねえ、ちゃんと話しなさいよっ。
「何故笑ってるんですか?」
「はは……いや、そんなことを心配しているのか。と思ってな」
はあ? そんなことじゃないんだけど!
「フィリップ殿下とアウレリア様の噂も確かめるんですよね!? そのためには必要な――」
「安心しろ。俺の婚約者という体ならむしろ世話を焼いてくれるはずだ」
笑いを辞めて、私の腕を軽く叩いて落ち着くように促される。言われた言葉が理解できなくてぽかんとしてたら、「笑って悪かった」とさらに付け加えられて、怒鳴るわけにもいかなくなった。不完全燃焼の怒りがくすぶって気持ち悪い。
「……なんでそんな自信満々なんですか」
せめてその話が本当だという理由を聞かせてほしい。私は、座ってからフィリップ殿下に説明しろと目を細める。
「兄は面倒見がいいし、兄上の婚約者時代のアウレリアも面倒見が良かった。だから、アウレリアに俺は昔面倒を見られていたということだ」
「弟扱いされてたわけですか?」
王位継承権を放棄するくらいなのだから、フィリップ殿下と仲が良いというのは納得できる。これだけ情報を集められて行動力がある人だ、信頼していなければ兄であろうと王位を譲ることもしないだろうことはわかる。
それであれば、フィリップ殿下と婚約者であったアウレリア様と接点があってもおかしくはない。
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