125話 実行犯
「と、いうわけで、ミシェルの占いを逆に使って敵を炙り出そうとしたわけだ」
「なぜ私に言っておいてくれなかったんだ。本当に心配したんだぞ!」
私には言えなかったであろう文句をフィリップ殿下はライオネル殿下にぶつけている。
「わかっていたら対応が甘くなるだろう。もし本当に占いの通りに俺が動けなくなったら兄上が指揮をとるんだ」
「滅多なことを言うな!」
悲壮なフィリップ殿下がかわいそうになってきたし、そろそろライオネル殿下に反撃をしてもいいころ合いだろうと思って、私は横から口を出した。
「本当はフリィップ殿下の必死な顔見て嬉しそうにしてましたよ」
「ミシェルっ!」
ライオネル殿下に咎められるも、視線をそらして知らん顔をする。
「……おまえというやつは……」
フィリップ殿下のあきれ顔初めて見た。弟の前だと表情豊かね。普段笑ってるイメージしかないのに。
「ミシェルに逃げ込む兄上が悪い」
ぷいっと顔を背けて子どものように反抗するライオネル殿下。フィリップ殿下は、ふっと笑う。
「ああ、あれは私が悪いかもな」
「……わかっているなら、いいです」
ライオネル殿下は笑われたのが癪には触ったと眉を顰めながらも、言葉では許してしまっている。フィリップ殿下はははっと笑った後に、表情を引き締める。
「さて、では今回の事件後についてミシェルにも共有しておこう。興味深い内容が出て来たんだ」
ライオネル殿下が倒れた後の話について話をしてくれるようだ。自然と背筋が伸びる。
「実行犯のジュリアナ・ハートフォードだけど、捕まってはいない」
「えっ!?」
すぐに捕まったかと思ったのに。どうやって逃げおおせたというの?
「目撃例はいくつもあるけど、どうやら逃げるのを手引きした者が居たようでね。最後の目撃ではハートフォード嬢が馬車に乗ったところ。その馬車は隣国への道をひた走ったようだと報告を受けているよ」
「ハートフォード家は一切の関与を否定してるがな」
「実際、ハートフォード家が関与しているような動きは見られないんだ。家柄というよりはジュリアナ・ハートフォード嬢の独断による暴走と見ているよ」
ジュリアナ様は自分だけで判断してライオネル殿下のところに来たの? でも、あの様子は誰かに唆されたようだった。手引きした者がいるなら、その人物がジュリアナ様に甘い言葉を吹き込んだ人物ね。
「残念ながらそれ以上の情報はないんだ。ただ、別件で気になることがあってね」
結局犯人はわからずじまいなわけね。私は頷いて続きを促した。
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