113話 ライオネル毒殺事件
ライオネル殿下が倒れた。その一報が城内を駆け巡っていた。
「すぐに状況を整理してくれっ」
フィリップ殿下が躍起になりながら、毒殺事件として指揮を執っている。これが公表されたなら、国のダメージは計りしない。下手をするとゲームのシナリオ通りに隣国が攻め込んできてしまう。
けど、実際外には情報が出ないように統一されている。
「茶を運んだ黒髪のメイドはまだ見つからないのか!?」
フィリップ殿下はいら立ちを隠せていない。
「見つからないでしょうねぇ……」
柱の陰からこっそり見つつ呟く。と、いうのもその黒髪のメイドは何を隠そう私なのだ。色替え魔法が使える魔法師に髪と目の色を変えてもらった。最近トレードマークの痣は、アウレリア様からもらった化粧で隠し、メイドとしてこっそり出入りしていたのだ。
ちなみに私自身は病弱設定を活かして、しばらく休学している。
「ライオネル殿下、寝ていなくてもよろしいのでしょうか?」
「兄上の慄く様を見せてくれるんだろう?」
倒れたと言われている第二王子が、メイドの服を着た私の後ろからフィリップ殿下の必死な様子を眺めている。
「私、フィリップ殿下がちょっと可哀想に思えてきたのですが……」
この計画はすでに王様、王妃様に許可を得て行っている。よくある未来予知は一度同じ場面を再現することで、その後起こらなくなったりもする。それに一度、毒殺されかけた事実が出れば、警備が厳しくなるわけで、そうそう二回目の毒殺をすることはできない。
よって、ライオネル殿下の毒殺を偽装したのである。毒ではなく睡眠薬を入れたお茶を私が運んで、事情を知っている主治医が毒だと判断する。
主要人物のフィリップ殿下にのみ偽装だとは教えていないので、ものすごい剣幕になっているのである。泣いたことをバラした仕返しにしてはやりすぎた感が否めない。
「いいさ、もしものために兄上にも予行練習になるだろ」
「もしもを私は失くしたいのですが?」
不吉なことを言わないでほしい。フラグという文化があるので、おちおちそういうことを言ってもらっては困るのだ。ジト目で抗議するとライオネル殿下は頬を掻いて謝る。
「悪かった。だが、城内を仕切っている兄上の実力と信頼が上がれば、防犯面は強固になる」
ライオネル殿下の言葉に前を向き直った。
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