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109話 メイクアップ

 休憩はあっという間に終わってしまった。私たちは残りの業務をするべく、そのままの恰好で生徒会室へと戻る。

 生徒会室にはフィリップ殿下とノクタリウス様がいた。見回しても休憩前は居たライオネル殿下はいない。

「今日はみんなで髪飾りをつける日か。お揃いにしたんだね、可愛いよ」

 最初に声をかけて来たのはフィリップ殿下だ。ちゃんと全体を見て、感想を言ってくれる。私とケイティは頭を下げた。

 一方、ノクタリウス様はアウレリア様の傍に歩いていく。

「アウレリア、綺麗ですね」

「ありがとう、ノクス」

 彼の眼前にはアウレリア様しか見えてないようだ。表情は緩んでいて、見惚れているのがわかる。

 ケイティは微笑まし気に見守っているが、いろいろと知ってしまった私にとっては非常にいたたまれない。

「ですが、帰る時にはちゃんといつもの恰好に戻しておいてくださいね? 侯爵令嬢としての威厳がありますから」

「わかってますわ」

 理由をつけているけど、他人には見せたくないという雰囲気がびしばし伝わってくる。他人というよりは、ラルフさんなんだろうけど。でも、ラルフさんがこのタイミングで来ないわけないんだよなぁ。

 予想通り、扉が開いてラルフさんがひょっこり顔を出す。

「お嬢、下町の見回りに行ってもいいっすっか?」

 中も見ずに要件を口にしながら部屋に入ってくる。全員の視線がラルフさんに集中する。ノクタリウス様がアウレリア様の前に進み出たのが視界の端に映った。

 ラルフさんは周りを見回して目を瞬いたあと、にこっと柔和な笑みを浮かべた。

「あれぇ~、みんな可愛いね。どしたの?」

「ラルフさん! みんなで髪飾りをつけあおうって約束してて、今回はお揃いにしてみたんです」

 ラルフさんへ返答したのは興奮したケイティだった。ラルフさんの目の前でくるっと回ってみせ、「どうですか!?」と迫っている。

「いいねぇ、ケイティちゃんの栗色の髪にパールが際立ってて可愛さが増してるね~! アウレリア様は青い髪に可愛いピンクパールが輝いてますね~。ギャップがいいんじゃないですか? ミシェル様は淡い髪だから赤が目立っていいですねぇ、これならいちころじゃないですか。みんな似合ってて、天使がいるのかと思っちゃった」

 ちゃっかりウィンクしてくる上に、全員細かく褒めてくところはさすがとしかいいようがない。

 アウレリア様の手前、曖昧に笑ってしまう。気まずいので、事情を理解しているライオネル殿下が居てほしい。二人のがまだ気まずさも緩和されると思うのよね。

 アウレリア様は肩を竦めてみせるだけで、感情は見せない。それどころかラルフさんを無視して、ノクタリウス様へと話かけた。

「ねえ、ライオネルはどこに行ったの?」

「私の仕事の手伝いで、今は職員室に書類を届けてもらってるところですよ」

 ライオネル殿下の名前に耳が大きくなる。そっか、書類を届けに行ってるからいないのね。戻ってくるかしら?

「残念ね。時間はかかりそうなの?」

「そうですね、しばらくは戻って来れないと思いますよ」

 なるほど。戻ってこない。私ひとりこの気まずい雰囲気の中でいなきゃいけないってことね。

 いえ、フィリップ殿下もケイティのことをちゃんと見たいだろうし、私はライオネル殿下のお手伝いに行ってもいいのではないかしら。

「では、私がライオネル殿下のお手伝いに行ってきますね」

 アウレリア様とノクタリウス様の会話に入り込んで、そう宣言した。アウレリア様は何故か満足げに笑って頷き、「お願いね」と了承してくれた。

 私は生徒会室を出て、職員室へと向かう。勝手に気まずくなってて申し訳ないけど、やっと空気が吸えた気がする。

面白い、楽しい、と感じて頂けたら、

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