104話 アウレリアの嫉妬
狭い視界から教室の中を見た。掃除用具は教室の奥の方にある。まだ入って来た二人は教室のドアの前にいるようで姿が確認できない。
ツカツカとヒールの音を響かせて窓際まで歩いてきたのはアウレリア様だ。え、これって……大当たりなんじゃ。
彼女に腕を引かれて来たのは男性。背が高くて顔までは見えない。でも大人だとわかるがっしりとした体形に見たことがある護衛用の剣。
「ラルフ、わたくしに言うことがあるんじゃなくて?」
やっぱり、一緒にいるのはラルフさんだ。アウレリア様はラルフさんの胸元に人差し指を突きつけて、怒ってるような口調だ。何かあって叱っている?
「お嬢、怒ってます?」
へらっと笑うのがわかるのんきな口調に、アウレリア様はラルフさんの胸倉を掴んだ。ビンタかな? と思ったのもつかの間、アウレリア様はラルフさんの体をぐっと自分の方に引き寄せた。よろめいたのか、抵抗もなくラルフさんの顔が前のめりになって見えた。
次の瞬間、アウレリア様はラルフさんの唇に自身の唇を重ねるのが見えた。
「――!?」
はっ!? なんで!? 思わず身体が固まる。私は何を見せられてるの!?
私の混乱など置いて、目の前の人物たちの行動は進む。タップ押してない! と思ったけど、これはゲームじゃない。だいぶ混乱して、頭の中だけ忙しない。
唇が離れて、アウレリア様が顔を真っ赤にしてラルフさんを睨みつける。
「怒ってるわよ! あの女はなんですの! 貴方は、私のモノでしょう!」
「あれは商館の子ですよ。護衛してただけ」
「ぜったいぜったい許しませんわ!」
目元に涙を浮かべて感情的に叫ぶアウレリア様を初めて見た。小さな手でぽこぽこラルフさんを殴っているアウレリア様に、ラルフさんは見慣れてるのか謝りながらアウレリア様の頭を撫でて諫めている。
「はいはい、ごめんて」
「うぅ~! 許しませんわ~!」
涙を流してなおも怒っているアウレリア様に、ラルフさんは困ったように眉尻を下げた。
ゆっくり彼女の身体に手を回して、ラルフさんはいつもの調子とは違い壊れ物を扱うみたいに優しく抱きしめたように見えた。
「オレはリリーのだろ?」
低く包み込むようなゆったりとした音色。甘さが滲んでいて、独りだけに向けられた声だとわかる。
これ以上見てもいいのだろうか。と頭の警告が大きくなって、心臓が大きくドッドと音を立てていて、手足はしびれたように動けない。
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