101話 可愛いと思ってる
前回同様、ライオネル殿下は馬車を呼んでくれていた。今回は私を見送ってから王城に戻るらしい。という建前で、実際は相談する場所を設けてくれたのだろう。王城に行くのも私の家で話すのも時間的には難しい。それであれば短い時間でも馬車で話をするのが早い。他に人が乱入することなく安全だしね。
目の前の席に座ってるライオネル殿下は、話を切り出さずに口元を抑えて、外を見ている。相談することいっぱいあるよね? 私が話を切り出した方が良い?
悩んでいると、ライオネル殿下は眉根を寄せて私を見た。姿勢を正してしまう。
「可愛いと思ってる」
どきっと心音が大きく鳴って、一瞬何を言われたのかわからなかった。
いや、待って、いきなりなに……? ライオネル殿下は私の反応に顔を背けふてくされながら付け加えた。
「さっきは言えなかったからな……」
どうやらさっきの会話で言えなかったことをずっと気にしていたらしい。みんなで可愛いって言いあっていたから、自分だけ言わなかったのが気になったのか。なんだ、びっくりした。でも、それなら私も答えておこう。
「……私もお兄様大好きなライオネル殿下は可愛いと思いますよ?」
「忘れろって言っただろっ」
握りこぶしを作って強く否定される。可愛いと言われたかったのではなかったのか。と出かかったけど、飲み込んでおいた。これ以上煽っても話は進まないし、ライオネル殿下の気分ももう晴れただろう。
ただ、言うならその場で言ってくれた方が私の心的にはダメージが少なかったな。と思う。話を終えるべく口を開く。
「では、ありがたいお言葉だけ受け取っておきますね」
「……ああ」
ライオネル殿下は肩の力を抜いて、腕を組む。本題に入るつもりだ。
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