100話 ミシェルの可愛さ
「アウレリアの話しかしてなくないか?」
ライオネル殿下がため息を吐いて、ノリを止めようとする。ライオネル殿下は飛び火って言葉知ってます? そんなことしたら、絶対自分に話がとびかかってきますよ。
「じゃあ、ミラさんの話でもいいですよ? ミラさんもめっちゃ可愛いじゃないですか。ね、レオさん?」
「なんで俺に振るんだ」
言わないこっちゃない。私にもしっかり飛び火してるので、しらーっとした目をライオネル殿下にむけておく。
「ミシェル――ミラさんはとっても可愛いですよ!」
「ちょっと、私の話はやめてちょうだい」
「いいじゃん。可愛いものは可愛いと言うべき」
「そうですよ! 魅力ある人のことはちゃんと褒めないと! ね、ライオネルーーレオさん!」
「……だからなんで俺に振る」
いい加減、可愛いと連呼するのやめてもらえないかしら。むずむずして手をすり合わせてしまう。
まあ、ライオネル殿下に可愛いとか言ってほしいわけじゃないし。可愛いと思ってないのは重々承知だから、本当にそろそろやめてもらえないかしら。
「ええ? レオさんはこんなに可愛いミラさんが可愛くないと?」
「言ってないだろっ!」
「え、レオさんミラさんの魅力をご存じではない……?」
頑なに可愛いと言わないライオネル殿下にケイティがドン引きしていた。なぜそんな可哀想な人を見る目で見てるんだろう。
仕方なく助け船を出す。
「レオさんには小憎らしい小娘ぐらいに思われてますよ」
「誰もそんなこと言ってないだろ!」
ライオネル殿下は少し落ち着いたらどうだろうか。ラルフさんにからかわれているの、わかってるでしょ?
だいたい話がずれ過ぎているのよね。もう元に戻せそうにないし、私の話をいつまでもしてるのはこっぱずかしいし、私も話をずらさせてもらおうかしら。
「私は、ケイティのことが可愛いと思うわ。笑うとお花が咲いたようで好きよ」
「ミシェル――ミラさん!」
ぱっと表情を明るくさせるケイティは本当に可愛らしい。隣に座ってるケイティは私にぎゅっとハグをする。いつも兄弟にしているのだろう、とても自然なハグだ。
「私たち両想いですね」
「そうね」
私も軽く回された腕に触れて、笑顔で返す。
「いいなー、オレはミラさんもケイティも可愛いと思うよ。オレは?」
拗ねてるように口を尖らせてから、自分を指さすラルフさん。
「可愛くはないですわね」
「あざと可愛いです!」
「いけ好かない野郎」
私とケイティの意見が合わない。しかもちゃっかりライオネル殿下が同じタイミングで意見した。
結局わちゃわちゃと騒いだだけで時間が過ぎ、パンを買って解散することになってしまった。多少ラルフさんやアウレリア様、ノクタリウス様のことはわかったけど、大きな収穫はなかった。
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