9話 情報まとめ
自分の寝室の鏡台の前で、私は改めて五角関係をまとめたノートを広げた。今日、ライオネル殿下にバレていたノートだ。透視の魔法を使ってまでコピーするなんてプライバシーの侵害だ。
五角関係を繰り広げる人間をピックアップした関係図のページを開く。
侯爵令嬢アウレリア、第一王子フィリップ、宰相の孫ノクタリウス、平民ケイティ、騎士ラルフ。の五人についてだ。ゲームの内容を思い出して綴った恋愛の矢印が書いてある。
騎士→平民→王子→←侯爵令嬢←宰相の孫。
騎士は平民と仲が良く、平民は優しくしてくれた王子が好き、王子は元婚約者の侯爵令嬢を思い、侯爵令嬢は王子が死んで自殺するほど愛が重い、宰相の孫も本人の書記に残っている大半が侯爵令嬢に対する愛についてだった。
次のページをめくる。取り戻した記憶に関するメモだ。
世界の破滅の流れはこうだ。第一王子フィリップ殿下が戦死、騎士ラルフも一緒に戦っていた平民ケイティを庇って戦死、ヴァレリアン帝国に嫁ぐことになっていたアウレリア侯爵令嬢は、愛する人が戦死したことを嘆き悲しみ自殺した。宰相の孫ノクタリウスはアウレリアの死亡を嘆き悲しみ、帝国に宣戦布告。帝国は宣戦布告と約束を破られたことを理由に攻めて来て、国が壊滅。封印されていた魔王が復活して世界は混沌に呑まれる。
「破滅した世界では聖域に逃げ込んだ人間が生き残って、後々勇者が世界を救うのよね」
メモを読みながら、内容をまとめる。
魔王を復活させないためには、カイリス王国を守らないといけない。今ある情報の中では、ヴァレリアン帝国に攻め込ませる理由を作らないのが一番だ。カイリス王国とヴァレリアン帝国の関係は、侯爵令嬢アウレリア様との婚約で成り立ってる。攻め込まれる一番の理由はその婚約による不祥事に他ならない。
「それを阻止できればいい」
一番の要は侯爵令嬢であるアウレリア様だ。彼女は愛する人を失い自殺している。アウレリア様が思い人と結ばれれば死ぬことはないのだろうけど、でもそうなると隣国ヴァレリアン帝国との婚約破棄になるだろうから、攻め入る口実になってしまうのかしら。
アウレリア様が失恋して、その心が癒えればそれが一番解決しそうだけど……。
「失恋を応援するのもね……失恋してるってわかれば慰めることもできるけど」
アウレリア様が好きな人がはっきりとしない。ゲームで読んだノクタリウスの書記だと、ノクタリウス様とアウレリア様が両想いなのよね。だけど、オープニングではアウレリア様は愛する人が死んで自殺したという設定がある。彼女が自殺する前に流れてた映像はフリィップ殿下の死。物語性を考えたらフィリップ殿下が好きだった可能性だってある。もしフィリップ殿下が好きだとしても、二人は婚約を破棄している。
何度も何度も考えてみたけど、この情報だけじゃやっぱり足りない。
しかも、私は私の情報もないのだ。今世の私はゲームには出ていなかったから。私は辺境伯の娘で名をミシェル・シルヴァレーンという。ゲームにその名前は出てこなかった。
でも大きな特徴があるのよね。私には産まれた時から額に痣があって、これは前世の火傷の痕と一緒。しかも、この痕のせいで今世の私にはトラウマがある。幼少期、赤い髪の侯爵令嬢ジュリアナ・ハートフォードにこの傷をなじられたショックで、私はそれ以前の記憶がないのだ。
だから、解決しなきゃいけないことはゲームの内容だけではないで、ゲーム内容の方の情報は速やかに収集したい。
「やっぱり、ライオネル殿下と契約するのがベストかしらね……」
新たな情報は喉から手が出るほどほしい。
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