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モラハラ雄の右腕

 

 僕は、ただ1つだけ、先輩に隠していることがある。後ろ暗いことがある


 実は僕が先輩の下についたのは営業部部長の黒田女史からの密命だ。

 

 当時、僕は営業部で成績が伸びずに悩んでいた。そんな時に、黒田女史から呼び出された。


「岸君には原田課長の部下になってもらいます。彼の良からぬ噂を聞いたことがある?取引先からキックバックをもらっているという噂があるの。その噂の真意と、もし事実なら、動かぬ証拠を押さえてきて」


 黒田女史は先輩に並ぶこの会社の重要人物だ。先輩の企画した商品を最初に売ってくれた人だ。走り回って口コミで火がつくまで、薪をくべ続けたのだ。


「私が原田くんが好きでって影で言っている人がいるけど、完全な誤解。私イケメン苦手なのよ。彼のためにじゃない。彼が企画したオーブントースターに可能性があると思ったの。我が社が飛躍するチャンスだと思ってね」

 

 黒田女史は悪い人ではない。先進的で包容力もあり決断する時は決断する。言わば理想の上司だ。部下のミスは自分の責任、成功は部下の功績。それ故に営業部の結束も固い。

 愛社精神が具現化したような人で、全てを投げ打って仕事をしている。

 

 一方、先輩に愛社精神のかけらもない。「ウチは」とか「我が社」とは絶対に言わない。


「この会社は」

「クソ電機は」

「アンポンタンの寄せ集めは」

「テトリスのルールも理解できない馬鹿の上澄み」

「ネクタイを締めた伸びたうどん達」

「小学校停学処分者の憩いの場」

「行くあてもないクソの面倒を見る託児所」etc


「この会社は俺の家ではない。俺はここで雇用されて給料を貰っているだけだ。その分の仕事はしている。それ以上でも以下でもない。愛社精神?あぁ小五の時に後ろ席の奴に30円で売ったやつだな」 

 

 そんな愛社精神が30円ぐらいの「コノエ電機」は今、派閥争いの真っ只中だ。


 創業者である近衛氏が新社屋移転を機に引退を発表して会長職に就いた。

 新たに社長になったのは経営管理部出身の三谷副社長だったが、これに反発したのが副社長に昇格した営業部出身の千田常務だ。どうやら2人は入社以来のライバルだったらしい。

 

 三谷社長と千田副社長は今でも何かにつけ争っている。そして、社内に派閥が生まれた。

 当然、黒田女史率いる営業部は副社長派だ。企画課発部第一課は社長派とされている。


 この派閥争いのキーパーソンにされてしまったのが「パワハラ田」課長だ。どちらの派閥に属さない最重要人物をどちらの派閥に肩入れさせるか。

 そんなことは、当然無理なので、両派閥は相手陣営に入らせないように排除する方向で動いている。

 

 表立って派閥争いが表面化して以来、ますます先輩への風当たりが強くなっている。誰のおかげで、この会社が成長できたのか皆忘れてしまっているみたいだ。


 黒田女史がこんな派閥争いに加担するなんて、と思うが、彼女には彼女なりの正義があるのだろう。

 彼女は義理人情に熱い。お世話になった副社長をなんとか助けたいのだ。

 先輩とは真逆だが分からなくもない。

 

 僕が密命を受けたのはそんな理由だ


 それでも先輩は社内政治なんて、どこ吹く風で全く興味なし。

 

 そして、先輩は自覚していないが、強力な盾が存在するのも事実だ。「コノエ電機」創業者である近衛十吾会長のお気に入りなのだ。先輩が業績を上げる前から何かにつけ守っていたらしい。


「あれだけ、問題を起こしているのに首にならないのは先代のおかげだ」 

 

 これは少し当たっていると思う。

 

 根も歯もない噂だが、反社だった先輩を会長がスカウトしてきたとも言われている。

 

 会長は一線を退いた今もフラッと第二課やってきて、窓際に座ってお茶を飲みながら過ごす。そして先輩の手が空くのをひたすら待っている。


「全く暇なジジイだな」


 これが先輩の時間ができた時の合図だ。


「今はどんなもんを作ってるんだ」


「これ読んでみな」


 元々優れた技術者だった会長と論文を読みながら、商品に転用可能かどうか議論する。


「なるほどな。で、これを?」


「車椅子に使えるんじゃないか」 


「そうか、多少の段差なら衝撃を抑えられる」 


「ジジイももう時期必要になるだろ」

 

 会長は先輩と話すのがよっぽど好きみたいだ。「ジジイ」「棺桶」「冥土の土産」と言われる度に怒るが、どこか楽しそうだ。 


「岸がジジイの葬儀委員長するから、今のうち要望言っとけよ」


「そんな先輩、何言ってるんですか」


「岸くん、こいつだけは呼ばんでくれ。腹立って生き返ってしまう」 

 

 調べる前から分かっていたことだが、先輩がキックバックも貰っている事実はない


 ・・・と思う。

 


 僕は先輩の命を受けて取引先の工場に新商品の相談に行く。


「おい!お前んとこのパワハラ田、刺されて死んだか?」


「なんだ、あいつまだクビになってねぇのか。可哀想だから拾ってやるのに」


「うちの社員がな、あいつと目が合って妊娠したぞ。四十の男だけどな。責任とってウチに来い」 


 取引先の人達はみんな先輩のことが好きだ


 先輩は下請けの工場に対して力関係を利用した無理な注文をしなかった。適正価格かそれ以上の金額を約束して、そして実行した。高くても売れる、それだけの商品を生み出していた。

 そして、その利益は必ず関わった会社、工場にも行き渡るようにしていた。


 この会社には先輩以外誰1人として、そのような事をしている社員はいない。誰もが少しでも安くして、利益を得ようとしている。立場を利用して、下請けに無理難題を押し付けている。

 

「1000円のジーパンを作って誰が得をするんだ。クソみたいな賃金で作らせたクソを売って、少しばかりのクソを得て、何になる?一部のクソみたいなクソ連中がクソが積み上がった数字を見て満足しているだけだ。クソはいくら積み上がってもクソだ。この会社の社訓を言ってみろ」

 

 僕は慌てて会社支給の手帳を取り出す。


「革新的な商品の開発で、社会をより良くする、と書いてあります」


「社会をより良くする。それを理想として掲げているんだから、社員は給料を貰っている以上は、それを実行するよう努力するべきだ」

 

 意外にも原理主義だ

 

 そして、会長の理想を継承する唯一の人間だ。


「わしにはできんかったが、あいつが成し遂げてくれた。よりによってだけどな」 


 先輩のいない間に来た会長に新商品の技術的なことで相談に乗って貰っていた時だ。


「ただ、問題なのは、あいつしかおらんことだな。岸くん頼んだよ」 


「はい」 


 そう答えるしかない。でも、僕には到底無理だ。



 実は一度だけ、先輩が下請けの工場の社長から封筒を渡されるのを見たことがる。

 

 先輩の下について半年ほどした頃だ。まだ先輩のことを怖い上司だと思っていて、毎日ビクビクしながら働いていた。

 もしかしてキックバック?もちろん確証はない。

 

 黒田女史に報告するべきかどうか迷っていた。でも、僕の勘違いだったら?

 先輩という人をまだよく分かっていない。ただ何となくイメージしていた人とは違うなと感じていた。

 先輩に聞けば済む話だが、その勇気はない。

 

 正直、悩んでいた。仮にキックバックを貰っていたとしよう。先輩はこの会社を追い出される。その結果は火を見るより明らかだ。一気に業績は落ちるだろう。

 それに、これだけのことを成し遂げた人だ。少しぐらいのキックバックは当然の権利だとも思う。

 でも、社会通念上許されることなのか。 

 

 ある日、そんなことを考えながら出社すると、聞いたこともない舌打ちが聞こえたと思った瞬間、


「ファッーーーーーーーーク!」


 日本ではあまり聞くことのない言葉が響き渡る。


 え?なに?  

 出社してきた社員たちに動揺が走る。

 

 受付でジーンズ姿でピンク色の髪をした女性が受話器を叩きつけた。


「塔子ちゃん、あそこに立っているのが第2課の人」


 受付の人が僕を指す。


「あいつ?」 


「名前は知らなけど。原田課長の2代目アシスタント」


「え?僕?」

 

 ピンク色の人が振り返って僕を睨みつける。


「あっ!藤間だ」


「やだ、今更何よ」

 

 初代アシスタントの藤間さん?

 

 ・・・たぶん僕は今から殴られるのだろうか。すごい形相でこっちに向かってくる。

 

 藤間さんが僕の目の前に立つ。意外と小柄だが、迫力がすごい。


「モリオさんに用があるんやけど」


「あの・・・原田はいると思いますけど」


「部外者に用はないって切られた。あんた代わりに聞いていくれる?」


「何か御用ですか?」


「ちょっと付き合って」


 藤間さんがエントランスから出ていく。訳も分からず慌てて追いかける。


「ついにピンクかよ。さすが世界のITは違うな」


 元同僚たちが藤間さんに気づいて、からかってくる。

 藤間さんは中指を立てて出ていく。

 先輩に認められた人だけはある。流石だ。

 

 2人で会社の向かいにあるカフェに入る。


「これ渡しといて」


「なんですか?」


「条件。コノエ、モリオさん必要としてないんやろ。だから。こっちは役員待遇」


「必要に決まってるじゃないですか」


「さっき元同僚に聞いた。モリオさんの現状。相変わらず嫉妬の嵐なんやろ。どいつもこいつもアホ」


「それは課長にも原因があるのかなと」


「あんたもアホか。まぁいいわ。必ず渡しといて」


「・・・はい、一応。受け取ってもらえるよう善処します」


「・・・あんた、モリオさんの下についてどのくらいなん?」


「半年ほどになります」

 

 藤間さんが腕を組み、虚空を見つめて何かを思い出している。

 そしてニカッと笑う。


「まぁウチもあんたのこと言えないわ。最初の1年ぐらいは毎日殺人計画練ってたわ。完全犯罪ってむずいよな。いつも最後の詰めで綻びが出る。な?」


「な?って・・・考えたことないです」


「そうなん?」 

 

 笑うと意外と童顔なのが分かる。僕より少し年上ぐらいだろうか。牙を剥いた凶暴な獣からリスみたいな小動物に変わった。

 

 ちょっと惹かれている。


「あの、原田課長ってどんな人ですか?恥ずかしながら今だによく分からないです」


 藤間さんはコーヒーを一口飲んでから、昔を懐かしむみたいにコノエ時代のこと、先輩のことを話してくれた。


「ウチは工業デザイナーとして、コノエに入社したん。ちょうどモリオさんがkoeを立ち上げて第2課ができた頃」


「まだまだ人手不足やったから、すぐに第一課でデザイン担当させてもらって、やり甲斐はあった。でも、その時の和田ってオヤジが顔を合わせる度に、髪型とか持ち物のこと言ってくんの。我慢して黙って聞き流してたんよ。そしたら、ある時、なんだ生理かって」


「もう完全に我慢の限界で、和田に座ってた椅子投げたんよ。残念なことに当たんなかったんやけど、窓ガラスが割れて大騒ぎ。まぁこりゃクビやなって覚悟したんね」


「それをたまたま通りかかったモリオさんが見とってね。声出して笑ったん。人類が初めてモリオさんが笑うとこ見た瞬間よ。モリオさんも今までの人生で一番面白かったって」


「課長、笑うんですか」


「たまに笑う。皆既日食ぐらいの頻度やけど」


「お前、俺のところに来いって。あのパワハラ田やで。絶対無理やん。転職も考えたんやど、でも、やり甲斐はあるんかなって。koeのデザイン任せてもらえるかもって。まぁセクハラされたら殺したらええわって決めて、モリオさんのとこに」


「デザインはさせてもらった。でも、毎日チラ見でゴミ箱行き。人が寝ないで制作した作品を。どこが悪いのかって聞いても、どこがのレベルではないって」


「今やったら分かるんよね。あの頃はまだ流行っているデザインを知らず知らずのうちに踏襲してた。勝手に自主規制しているって感じやね。家電はこんなもんやろって。頭の中で汗かいてなかったんよ」


「悔しいけど、あの人のイメージ図の方が圧倒的に新しかった。ほんまになんなんよ。デザインのことなんか何も知らん奴がやで。完膚なきまで叩きのめされた気分よ。モリオさんのイメージ図を正式に書き起こしているうちに腹たってきてな」


「ウチは悔しいって。お前なんやねんって。人生勝ちすぎやろって。前世で何したん。ガンジーか野口秀雄かって」


「そしたら、モリオさん、悔しいって何だって?勝ちってなんだ?デザインは勝ち負けかって」


「勝ち組の人ってウチらみたいな人間の気持ち分からんのかなって。でも、よくよく考えたら、あの人は本当に勝ち負けみたいな、しょうもない価値観で人を見ていないし、生きていない。クソって罵っているけど、誰に対しても同じ。ホンマ分かりにくいけど、誰に対しても対等なんよ」


「ウチも人に負けたくないとか意識するから、抜け出せないんかなって。デザインが好きで好きで書きまくってた頃に戻ってみようって。そしたら、なんとなく自分なりのこつを掴めてきてな。ようやくモリオさんに認められた。そこから、幾つも採用されて、賞も受賞できて、今の会社に誘ってもらえるきっかけにもなった」


「最初は行く気なかったんよ。実は熱心に誘われてるのはモリオさんの方やったし。俺は興味ないって。でも、お前はもっと広い世界に出るべきやって後押ししてくれて。あの人こそ、もっと外に出るべき人やのにね。なんか、あの人、その辺がよく分からんのよね。今回も会社の命令で来てるけど、無理なんは分かってるんよ。とりあえず渡しといて。それがウチの役目やから。あんたが唯一のアシスタントなんやろ。頼むで」


「僕は、その・・・課長の元でやっていく自信はありません」


「ウチは知らんがな。それはあんたの問題や。まぁ先輩としてアドバイスするなら、あの人はホンマは何も怖くない。こっちの先入観や思い込みがほとんどや。まぁ無理もないけどな」


「できるかなぁ。あの容姿で、あの業績ですよ。もう業界では本当は存在なんてしないみたいになってますし」


「これはウチの勝手な解釈かもしれんけど、公の場とか人目につくとこには出てこんやろ。興味ないってのもあるんやろうけど、あえてそうしてるんかもなって。それでもって、ほんまに自分の過去のこと話さんやろ。ウチは4年一緒やったけど、何も知らんもん。過去に何があったら、あんな人間になるんやって」


「あの・・課長がキックバックもらってる噂があるんですけど」


「それはない。お金とかには興味ない。これは言い切れる。考えてみ。身なりあれやで。見た目で莫大なお釣りもらってるけど、普通の人間やったらやばいで。一度な、いくら貰っとるんやって聞いたけど、安月給過ぎてビックリしたわ。コノエはほんまに打ち出の小槌持っとるようなもんよ。ウチ、爺ちゃんのとこ行って、どういうつもりやって言いに行ったもん。爺ちゃんも無頓着やから知らんかったって。で、すぐに給料上げるみたいな話になったんやけど、モリオさん、そんなことはどうでもいいって。やりたいことがあるから、その分に回してくれって言ったみたいなんよね。やりたいことって何やったんか知らんけど、まぁたぶん研究室のことで何やかんや言ってたから、その関係やと思うけどな」


「だから、キックバックを・・・」


「まぁ、あんたももう少し一緒にいたら分かるわ。モリオさんがどんな人間か」


「うーん」


「胃袋は強いんやろ」


「そこだけは」


「それなら大丈夫や。ウチも飯だけは食えるから。なんやろな、あの習性」


「人がお腹いっぱいになってる時だけ、機嫌いいんですよね」


「そう言えば、引っかかってることがあんねん。ウチが辞める日にな、最後やからって昼メシ奢ってもらったん。いつもの定食屋やけど」

 

 

「だいぶ前だが、前世がどうとか言ってただろ。人は輪廻すると思うか」


「そんこと言うた?」


「配属されてすぐの頃にな。突然、わめきだして」


「やめて!忘れるか!あえて、とぼけてんのに気つかえや!モラハラ雄!!」


「椅子が飛んでくると思って楽しみにしてんたんだけどな。あれはお前の唯一の長所だ。次の会社でも絶対披露しろよ」


「ほんまにやめて。で、輪廻の話が何?」


「人は生まれ変わると思うか?」


「仏教では、それはあかんことやろ。この世界は苦しみまみれのクソやから、そもそもこの世界で生まれ変わりを繰り返す輪廻から抜け出すのが目的やなかったっけ。モリオさんはどう思うん?」


「ろくでもないクソってのは同意する。でもな、大切な人たちが、いなくなっても生まれ変わってくれるのであったら、俺にっとては、救いのある話ではある」


「えー!?意外やわ。パワハラ田でもそんなこと考えるんや。つうか、大切な人おるん?それも意外なんやけど」


「当たり前だろ。俺にとってはお前も大切な人間だしな」


「・・・・・」


「他にも友達みたいなのもいるしな。まぁ大切だな」


「ーーーーーーーーーーーーーーうぅ・・・なんやねん・・・今さら、そんなこと言って・・・ひどい。ウチ、明日からアメリカ行くんやで」


「うわっ原田課長、女の子泣かせてる」

「容赦ねぇな」


「うるさい!!クソは黙っとけ」

 

 とりあえず、なんか投げたる!あっ椅子があった


「やめとけ」


「ゔぇーーーーーーーーーーーーーーーーーーうぅ行きたくない!モリオさんと仕事がしたい」


「決めたんだろ。向こうで思いっきり椅子投げてこい」




「ウチ、不意打ちくろうて泣きそうになったわ。まぁ泣かんかったけど」


「生まれ変わり。そんなこと課長が言いますか?」


「言うたんよね。なんか信じられんけど、でも、なんか切実なもんは感じた」


「ちょと信じられないです」


「そうやろ。でも、あの人は意外の塊。と言うよりかはウチらがどんだけ偏見で人を見てるかっていう証明やな」


「はぁ」


「つうか、会社行かんでええんか?だいぶ遅刻やで」


「え?やば」


「渡してな」 


「はい」


 偏見か・・・僕が先輩のことを知ろうとしていないだけかもしれない


「遅れて申し訳ございません」


「藤間か」


 あれ?怒られない。


「はい。これ渡しといてくれって」


 中身も見ずにゴミ箱に捨てる。


「中身ぐらい確認しても」


「どうせ俺に対する告訴状だろ」


「慰謝料よこせって言ってました」


 しまった。条件反射で言ってしまった。お母さん、ごめんなさい。先立つ不幸を・・・


「訴えたいのは俺の方だ」


「元気にしてたか」


「はい」


「そうか」

 

 この日を境に僕は先輩との距離が縮まった気がする。

 

 キックバックのことはしばらく黙っておこうと決めた


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