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第8話:闇に潜む真実

倉庫の中、ルイとソフィは片隅に腰を下ろし、小声で囁き合っていた。リュシアンは彼らのそばに座りつつ、周囲を警戒する。倉庫の中央では若者たちが地図を囲み、何かを熱心に議論していた。その表情には真剣さと切迫感が滲んでいる。


「ここは何なんだ?」


リュシアンがジュールに問いかけると、彼は目を細めて静かに答えた。


「安全な場所……と言いたいところだが、この街に本当の安全なんてない。ここは俺たちがひとまず身を寄せているだけさ」


「それで、君たちは何をしてるんだ? 何か計画でも?」


ジュールはわずかに口元を緩めたものの、その目には慎重な光が宿っている。


「リュシアン、俺たちが何者で、何を目指しているか……今は詳しく言えない。ただ、君がここにいるのは偶然じゃない。君の行動が俺たちを惹きつけたんだ」


「それじゃ答えになってないな」


リュシアンが突っ込むと、エティエンヌが横から笑いながら口を挟んだ。


「まあまあ、焦るなよ。夜になれば分かると言っただろう?」


その時、倉庫の扉が軋みを立てて開いた。現れたのは年配の男だった。


彼の鋭い目つきと堂々とした立ち居振る舞いに、リュシアンは一瞬で彼がこの集団のリーダーであると察した。


「ジュール、エティエンヌ。状況はどうだ?」


「順調です、ベルナール」


ジュールが答えると、男――ベルナールはリュシアンたちに目を向けた。


「新しい仲間か?」


「まあ、そんなところです」


エティエンヌが肩をすくめるように言った。


ベルナールは少し間を置いてから、リュシアンに声をかける。


「君の名前は?」


「リュシアン。それと、あの子たちはルイとソフィ。ここに来たのは俺の意志じゃないが、今は理由を聞かせてもらいたい」


ベルナールはゆっくりと頷き、厳しい表情を崩さずに言った。


「ここで話すには適さない。外が暗くなったら、全てを話そう。それまで、あの子たちと休むといい」


リュシアンは不信感を拭いきれなかったが、それ以上問い詰めることはせず、ルイとソフィに目を向けた。二人は疲れた様子だったが、倉庫に入って少しだけ落ち着いたように見える。


夜が訪れ、倉庫の中が静寂に包まれる。ベルナールに呼び出されたリュシアンは、眠るルイとソフィに毛布をかけてから立ち上がった。


ベルナールに連れられた先は、倉庫の奥に隠された部屋だった。中央には詳細な地図が広がっており、いくつもの印が記されている。


「これは……?」


「この街の隠された構造だ」


ベルナールが地図を指でなぞる。


「我々は地下に広がるトンネルを使い、物資を運び、人々を安全な場所へ避難させている」


リュシアンは目を細めた。


「それだけの話じゃなさそうだな」


ベルナールは静かに頷く。


「その通りだ。我々は、この街を牛耳る権力者たちの秘密を暴こうとしている。彼らは市民を搾取し、苦しめている。その裏で何が行われているのか……君も知ることになるだろう」


「君たちは反乱を計画してるのか?」


「反乱ではない。正義だ」


ベルナールの声には揺るぎない決意が宿っていた。


「リュシアン、今はより多くの同じ思いが、この情勢を大きく変えるときなんだ…」


リュシアンは眉をひそめた。


「正義…思い…」


ベルナールは答えず、ただ静かに彼を見つめた。


その時、突然、倉庫の外から叫び声が響いた。


「来たぞ! 奴らが!」


ベルナールの表情が険しくなる。


「全員、配置につけ! 侵入者だ!」


リュシアンは迷う暇もなく、ルイとソフィの元へ駆け戻る。扉の向こうから、足音が近づいてくる。


「また厄介ごとに巻き込まれたな……」


自嘲気味に呟きながら、彼は剣を握りしめた。


暗闇の中、避けられない戦いが迫っていた。


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