表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/47

第41話「王妃暗殺未遂」

ヴェルサイユ宮殿――夜。

月光が差し込む静寂の中、王妃の居室には重苦しい空気が漂っていた。


机の上には、一通の匿名の手紙。

『次の標的は、貴女の“真実”』


マリーは震える指でそれをなぞり、深く息を吐いた。

(……真実、とは何を指しているの……?)


背後で控える三銃士がそれぞれに視線を交わす。

「警戒を怠るな。影は必ず“夜”に紛れる」

シャレットが低く言った。


ピシグリューは腕を組み、豪快な口調で応じる。

「来るなら来いって話だ。王妃様には一本の髪も触れさせねぇ」


ド・モードは窓辺に立ち、月明かりを睨みながら呟いた。

「火を囮にする可能性が高い。……奴らは混乱を利用するはずだ」


その言葉の直後だった。

――遠くで鐘が鳴り響き、続いて中庭から悲鳴と炎の光が立ち昇った。


「火事だ!」

侍女が駆け込む。


三銃士は即座に動いた。

「シャレット、王妃様を守れ。俺とド・モードで外を塞ぐ!」

ピシグリューの声に、マリーは思わず立ち上がった。


「いいえ……私も逃げません」

その瞳には、夢で見た“炎の中の聖旗”の残像がよぎっていた。

(……私は、あの時も炎の中に立っていた。ならば――)


次の瞬間、窓の外から黒い影が飛び込んできた。

ガラスが砕け、燭台が倒れ、炎が床に散る。

黒衣の刺客が短剣を構え、一直線にマリーへ迫る。


「王妃殿下ッ!」

シャレットが剣を抜き、間一髪で刺客の刃を受け止めた。

火花が散り、鉄の匂いが室内に満ちる。


「下がれ、殿下!」

シャレットの声を合図に、ピシグリューが背後から飛び込み、巨体をぶつけて刺客を壁際に押し付ける。

「テメェら、王妃を獲物に選ぶとはいい度胸だ!」


ド・モードは素早く回り込み、扉を塞いだ。

「逃げ場はない。……ここで終わらせる」


室内は一瞬で戦場と化した。

剣と短剣が交錯し、燭台の炎が揺れる。

刺客は異様な執念で暴れ、口元を布で覆ったまま、声を発さない。


しかし――

追い詰められた一人が、低く絞り出すように言った。

「……侯爵ではない……我らに命を下すのは、“仮面の主”……」


そのまま懐に仕込んだ毒刃を自らの喉に突き立て、崩れ落ちる。


沈黙。

焦げた匂いと、荒い呼吸だけが残った。


マリーは胸に手を当て、震える声で呟いた。

「……仮面の主……」


シャレットは剣を収め、静かに彼女に向き直る。

「陛下。敵はまだ、この宮廷に潜んでいます」


ド・モードが拾い上げた短剣には、見慣れぬ紋章が刻まれていた。

「……この印。侯爵派のものではない」


ピシグリューが吐き捨てるように言った。

「つまり……まだ裏がいるってことか」


その時、背後の影が揺れ、サンジェルマン伯爵が姿を現した。

「“仮面の主”……ようやく本当の舞台が開き始めましたな」


マリーは彼を見上げ、強く唇を噛む。

「ならば、その仮面を暴かなければ。……私は逃げません」


伯爵の目がわずかに細められる。

「その覚悟こそ、闇を照らす光となるでしょう」


夜風が吹き抜け、燃え残った炎を揺らした。

ヴェルサイユの夜は、もはや静けさを取り戻すことはなかった――。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ