表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/41

第4話:流れの中の決意

リュシアンは、見知らぬ街の喧騒に身を置きながらも、頭の中はカトリーヌのことでいっぱいだった。あの突如として消えた彼女が、この不思議な時代にいるかもしれない――それだけが、彼を動かしていた。


道を進むと、群衆がざわめいている広場に出た。何かの演説が行われているようだ。粗末な衣服を身にまとった男が台に立ち、拳を振り上げて叫んでいた。


「王は贅を尽くし、貴族どもは我々を見下し続けている! だが、どれほど搾取されようと、我々は黙っているしかないのか? いや、違う! 我々にも誇りがあるのだ!」


彼の言葉に、一部の者が力強く頷き、拳を握る。しかし、大多数の民衆は沈黙を守っていた。誰もがこの国の現状に不満を持っているが、声を上げることはまだ危険だった。


「これが……本当に革命の始まりなのか?」


リュシアンは、歴史の教科書で見た「革命の熱狂」とは異なる、まだ静かで不安定な空気を感じていた。その瞬間、背後から声をかけられる。


「君、あまり見ない顔だな。この辺りの者じゃないのか?」


振り返ると、同じくらいの年齢の青年が立っていた。茶色の髪に鋭い目つき。しかし、その表情にはどこか優しさが漂っている。


「君は……?」とリュシアンが尋ねると、青年は少し笑みを浮かべた。


「ジュールだ。見たところ、迷子か何かか?」


リュシアンはとっさにうなずいたが、次の瞬間、彼の着ている服がこの時代に馴染まないものだと気づいた。ジュールの視線も、それに気づいたかのように服装をじっと見ていた。


「君、どこから来たんだ? その服装……見たことがないな」


リュシアンは答えに詰まった。彼が何か答えようとする前に、ジュールがぽつりと言う。


「まあいい。とりあえず、ここにいると目立つ。こっちに来い」


ジュールに案内されたのは、広場から少し離れた薄暗い裏路地だった。


「ここなら少しは落ち着けるだろう。君、名前は?」


「リュシアンだ」と彼は答えた。


ジュールは少し首をかしげて、もう一度リュシアンを観察するように見た。


「……君、何者だ? 正直に言えよ。ただの迷子にしては変だ。」


リュシアンは一瞬、どう答えるべきか迷った。この時代の人々に自分の状況を説明しても、信じてもらえないだろう。


「俺は……ただ、ある人を探しているんだ」


「ある人?」


「大事な人だ。突然、いなくなった。もしかしたら、ここにいるかもしれないって思って……」


ジュールはその言葉に眉をひそめたが、すぐに肩をすくめて言った。


「ふーん。まあ、わけありなんだろうな。でも、一つ忠告しておく。この街は今、普通の人間が迷い込んでいい場所じゃない。気をつけろよ」


「どういう意味だ?」


ジュールは少し笑って答えた。


「これ以上話すつもりはないよ。けど、君がここで生き延びたいなら、少なくとも誰を信用するべきかは慎重に考えることだな」


リュシアンはジュールに背を向けられながら、心の中で決意を新たにした。


「カトリーヌ……君を必ず見つける。そのためなら、どんな危険でも乗り越えてみせる」


そして、彼の冒険はさらに深まっていく――。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ