表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
29/47

第29話「迫る断罪の影」

ヴェルサイユ宮殿、王妃私室……


日が傾き、静けさが深まる中、マリー・アントワネットは三銃士を前に座していた。

彼女の表情は穏やかでありながら、その瞳の奥にはかすかな緊張が走っている。


「……内通者は、やはり存在しました」


シャレットが低く報告する。


「文書管理係の中に、外部と繋がる者が一人。厨房を通じた女官の密告者。そして、枢機卿補佐官ド・ラニエ……」


「一部はすでに動き出しているはずです」 ド・モードが補足する。


「急がねばなりません」 ピシグリューも力を込めた声で続けた。


マリーはゆっくりと頷いた。


「内通者を逆に利用しましょう。敵の動きを封じるのではなく……泳がせて、こちらに引き込むのです」


三人は驚きを隠せなかった。


「陛下、危険です」


「分かっています。でも、こちらが受け身でいるだけでは、いずれ追い詰められる」


マリーの声は毅然としていた。


その時、サンジェルマン伯爵が静かに歩み出る。


「王妃様の仰る通りです。敵はすでに次の一手を用意しています」


「次の一手……?」


マリーが問い返すと、伯爵は懐から一枚の手紙を取り出した。


「陰謀派は、王妃陛下を“公開裁判”にかける準備を進めています。

告発状、偽造された証拠書類、証人……すべて手配済みのようです」


三銃士が同時に顔を強張らせた。


「裁判が開かれれば、王妃の無実を訴えるのは不可能に近い」 ド・モードが低く呟く。


「では、どうすれば……?」 ピシグリューが問う。


「……敵の“切り札”を先に叩く」


シャレットが静かに答えた。


マリーは彼らを見渡し、改めて言った。


「この宮廷には、未だ見えぬ真の敵が潜んでいます。それを暴くことが、私たちの勝利への道」


そして、サンジェルマン伯爵がわずかに笑みを浮かべた。


「ご安心を。別働隊も、すでに動いておりますので」


マリーは目を細めた。


「別働隊……?」


伯爵はそれ以上は語らなかった。ただ、夜の窓辺に目を向け、低く呟く。


「……彼も、そろそろ動き出す頃でしょう」


その頃……

パリ市街地の外れ。

一人の若者が、夜の霧の中を静かに歩いていた。


黒髪を風になびかせ、鋭い光を宿した瞳。


……リュシアン。


彼の手には、密かに託された一冊の手帳が握られていた。


「もう時間がない……動くしかない」


彼は独りごちると、夜の闇にその身を溶かしていった。


王妃と三銃士の戦い、そしてリュシアンの孤独な戦いが、静かに交錯し始める……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ