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第27話 交錯する真実

ヴェルサイユ宮殿・王妃私室——


夕刻。蝋燭の明かりが揺れる部屋の中、マリー・アントワネットは机に手を置き、三銃士の帰還を待っていた。 その瞳には、揺るがぬ意志と、かすかな疲労が滲んでいた。


やがて、扉が控えめにノックされた。


「…入って」


開いた扉から、シャレット、ピシグリュー、ド・モードの三人が順に姿を現す。三人とも、衣服に僅かな土埃や汗の跡を残していた。


「戻りました、マリー様」


シャレットが先に進み出る。


「王妃陛下の筆跡練習帳が、文書管理室より外部へ流出しておりました。書簡の模写元となったと見られます。さらに、帳面には管理係の文官の印が……内部協力者がいたと見て間違いありません」


マリーは帳面を受け取り、そっと指でなぞる。


「……まさか、私の練習用のものが、こんな形で……」


「書簡の偽造には、極めて巧妙な模写が使われております。陛下の筆跡を真似るには、こうした“手本”が必要だったのでしょう」


続いて、ピシグリューが一歩前に出た。


「厨房に出入りする女官の一人が、侯爵家を通じて内務局の書記官から命令を受けていたと証言しました。王妃の印章を模した模写文書の写しも、倉庫で確認済みです」


「……侯爵家、ですか」


「はい。王妃様の名を悪用し、民衆に偽の命令を流布していた可能性があります。密告網は下層まで広がっています」


最後に、ド・モードが静かに口を開いた。


「私の調査では、礼拝堂の保管庫にて、王妃が“神をも畏れぬ魔術儀式に関与している”と書かれた偽の宗教書簡を発見しました。筆跡、紙質ともに、枢機卿補佐官ド・ラニエのものと一致します」


「……信仰をも利用するとは」


「ド・ラニエは、宗教的影響力をもって王妃様の信頼を貶めようとしています。これは単なる誹謗ではなく、王妃陛下を魔女として断罪する布石ともなり得ます」


三人の報告に、マリーは深く目を閉じた。


「この宮殿に、いったいどれだけの“仮面”が潜んでいるのでしょう……」


シャレットが一歩前に出て、膝をついた。


「陛下。この陰謀の根は深い。だが、我らは必ずその本質を暴いてご覧に入れます」


マリーは彼の手を取り、そっと微笑む。


「……ありがとう、私の“剣”たち。あなたたちがいてくれることが、何より心強い」


そのとき、部屋の隅に控えていたサンジェルマン伯爵が、低く穏やかに言った。


「光は、常に真実を照らすとは限りません。だが、真実を知る者がそれを選び取るとき——歴史は、動く」


三銃士とマリーは、伯爵の言葉にわずかに視線を向けた。


マリーは深く頷いた。


「選びます。私は、真実を」


「それが、この時代に生きる“私”に課せられた意味なのかもしれない…」


静寂の中で、彼女の言葉が響いた。


……そして、次なる一手が、静かに打たれようとしていた。

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