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第22話:偽りの刻印

西翼の回廊——

月明かりが差し込む石造りの廊下に、重たく冷たい空気が張り詰めていた。


シャレット、ピシグリュー、ド・モードの三銃士は、音もなく前方へと歩を進める。わずかな気配と空気の揺らぎを読み取り、侵入者の存在を確信していた。


「……この先だ」

シャレットが囁き、剣の鍔に軽く手を添える。


三人が角を曲がった瞬間、黒衣をまとった影が一人、素早く窓の外へと身を投じようとしていた。


「待て!」

ピシグリューが声を上げるが、影は反応すらせず、ロープを伝って素早く地上へと滑り落ちる。

ド・モードが即座に投擲用の短剣を構えるが、シャレットが制止する。


「……追うより、これを」

シャレットは、逃げ去る影が落としていった一通の封筒を拾い上げた。


封筒には、王妃の印章が押されていた。


「これは……」

ド・モードが眉をひそめる。


「どう見ても、王妃殿下のものだ。しかし、印章の押し方も筆跡も、わずかにだが違う。巧妙だが——偽物だな」


ピシグリューは紙を広げ、一読して顔をしかめた。


「“王妃の名において、近く反革命派と通じる交渉を行う”……だと?」


シャレットが静かに頷く。


「王妃を陥れるための、偽造書簡だろう。これが本物として出回れば……王家は完全に孤立する」


その言葉に、三人は沈黙した。


数分後——

彼らは王妃の私室へと戻り、事の一部始終を報告した。


マリー・アントワネットは書簡を受け取り、微かに震える指でそれをなぞった。


「……私の名が、こうして利用される日が来るとは」


彼女の声は静かだったが、その奥には怒りと悔しさが滲んでいた。


「宮廷の中の誰かが、この陰謀に加担しているのでしょうね」

ド・モードが低く言う。


「間違いない。これは内部の者でなければ仕掛けられない罠だ」

ピシグリューも言葉を重ねる。


シャレットは一歩前へ出て、王妃を見つめた。


「殿下、お許しいただけるなら、我ら三人でこの出所を探り、陰謀の根を断ちに参ります」


マリーは三人を順に見つめ、深く頷いた。


「お願い……この宮廷の中には、私を見下ろす“目”と“牙”が潜んでいる。それが誰なのかを、知りたいのです」


その瞳は、もう迷ってはいなかった。


——偽りの刻印。

それは、王妃を貶め、王政を崩すために投げられた一手。


だがそれは同時に、三銃士とマリーの反撃の始まりでもあった。


闇に潜む影を追い、真実の刃が、静かに抜かれようとしていた。


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