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第12話:疑惑の影

パリ、1792年 夏——


ロベスピエールの影響力が日に日に増していく中、リュシアンたちは慎重に次の一手を模索していた。彼が率いる急進派の動きは、もはや穏健派にとって無視できない脅威となりつつあった。


「我々は行動を起こすしかない。」

隠れ家の一室で、ベルナールが静かに言った。


彼の言葉に応じるように、ジャン=ポールが地図を広げる。


「ロベスピエールの動向を探るうちに、気になる情報を得た。彼の側近であるフーキエ=タンヴィルが、何らかの機密文書を管理しているらしい。内容は不明だが、もしそれが粛清に関するものなら、我々にとって大きな武器になる。」


リュシアンはその名を聞き、眉をひそめた。フーキエ=タンヴィル——この時代の司法関係者であり、後の恐怖政治の中核を担う存在。彼が持つ文書が何であれ、ロベスピエールの計画を知る手がかりになる可能性は高い。


「文書がある場所は?」


「サン・タントワーヌ通りにある彼の屋敷だ。」


「……潜入するしかないな。」リュシアンは決意したように言った。


ルイが不安げに口を開く。

「だが、もし捕まったら……?」


「それは承知の上だ。でも、何もしなければ俺たちの未来はない。」


ベルナールはしばし考え込んだ後、静かにうなずいた。


「決行は今夜だ。」


屋敷の周囲には、数名の番兵が巡回していた。


リュシアンとルイは裏口から慎重に忍び込み、暗闇の中を進む。


「書斎は二階だ。そこに文書があるはず。」


二人は息を殺しながら階段を上り、書斎へとたどり着いた。


そこには大きな書棚があり、机の上にはいくつかの封書が並んでいた。その中の一通を開くと、そこにはロベスピエールの署名とともに、いくつもの名前が記されていた。


「これは……?」


「……粛清リストだ。」


「まさか……!」


その瞬間、廊下から足音が聞こえた。


「誰だ!」


扉が勢いよく開かれる。


「くそっ、見つかった!」


リュシアンはとっさに手紙を懐に押し込み、窓へと駆け寄る。


「ルイ、飛べ!」


二人は窓から飛び降り、地面に転がるように着地した。背後からは兵士たちの怒号が響く。


「こっちだ!」


暗がりから声がした。見ると、ジャン=ポールが路地の陰から手招きしている。


「お前、どうして……?」


「お前が無茶をすると思ってな。」


リュシアンとルイはジャン=ポールの導きで狭い路地を抜け、なんとか隠れ家へと戻ることができた。


ベルナールは文書を読み、低くうなった。


「……これは決定的だ。」


「ロベスピエールは、すでに我々穏健派を粛清する準備を進めていたんだ。」


ルイが拳を握る。


「これを公にすれば……」


「そう簡単にはいかん。」ベルナールが言った。「ロベスピエールは革命の英雄だ。この証拠をどう使うか、慎重に考えねばならん。」


リュシアンは唇を噛んだ。


「でも、これを黙っていたら……やられるのは俺たちだ。」


ベルナールは彼をじっと見つめた後、静かに言った。


「だからこそ、これをどう使うかが重要なのだ。」


リュシアンは改めて理解した。この時代では、事実だけでなく、それをどう伝えるかがすべてを左右するのだと。


「慎重に進めるしかないな……。」


未来を変えるための戦いは、まだ始まったばかりだった。

 

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