慈悲無用
「青い雲に白い空。そして俺の隣には馬鹿沢山。」
「お前なぁ、それをいうなら青い空に白い雲だろ?って待て、今なんて言った!?」
俺、ブルムは首都から遠く離れた、小規模の村で暮らしている。
人口が少なく、少しでも何か損害があったら一瞬にして消えてしまいそうな村で、人々は常に働いている。
それでも俺達未成年組が働いていないのは、大人たちのおかげである。
「おい!今なって言いやがった!」
こうやって俺の一枚しかない服を掴み、引いたり押したりしているのは、俺の親友であるグイドである。
その近くにいる友達はグイドを制止しようと必死だ。
やがて、グイドを制止することに成功し、みんなは一息ついていた。
「っていうか、お前は自分の力で止められるのになんで止めないんだよ。お陰でグイドを止めるのに毎日苦労してるんだけど。」
「しょうがないだろ。俺のこのスキルは使ったら戻れなくなる。」
俺のスキル。それは『バーサーカー』というスキルである。過去に一度、俺はこの村が栄えていた時にこれを発動してしまい、今の村の状況にまで追い込んでしまった事がある。
それでも俺を罰したりしなかったのは、まだスキルの扱い方も知らなかったから。といってくれた村の人の善意のおかげである。本当に、神様の化身のような人たちである。
「っていうか、ジョイルはどうした?」
友達と話していて、ジョイルがいなくなったことに気づいた俺は、みんなに問うことにした。
「そういえば、アイツ花を取りに行ってくるって言ってたな。あれから随分と経つけど。」
全く、あいつはいつもそう言って他人に迷惑をかける。そろそろ直してもらわないとな。
そう思い、立ち上がった瞬間だった。
「ボゴコォォォォオン!」
村の中心に位置する建物から、爆発音が鳴り響き、女性の甲高い声が、この状況がいかにまずいことなのかを強調した。
俺達は急いでその場所へ向かい、叫び声を上げた女性に話しかけた。
「大丈夫ですか?」
「あ、あああぁ。夫。夫がぁぁぁぁぁ!」
対話は無理そうだ。そう皆にアイコンタクトをとる。クソッ。何が起きているんだ。
しかし、今度はジャキッ。という、刃物がどこかに刺さる音が聞こえた。その方向を見る。
そこには、腕や足首。最終的には心臓をえぐられた、皆の姿があった。しかし、皆を殺した犯人はその場にはおらず、そこにはただ、死体たちが俺を見ていただけだった。
犯人を探すべく辺りを見渡す。そしてそこで、俺はあることに気がつく。
「なんだよ。これ。」
そう。俺たちの村は、火に囲まれていた。脱出不可能。逃げる事は、できなかった。
「やあ、ブルム。やっと花が取れたんだ。見てくれないかい?」
「は?」
意味がわからなかった。だって、いつもジョイルが紙で束ねているいつもの花は、皆の首だったから。
呆然と立ち尽くし、目を見開く。
しかしジョイルはニッコリとした表情を変えずに俺に歩み寄ってくる。
「君は、どうしてほしい?このまま花として僕のコレクションになってくれるのかい?それとも、このまま村のみんなと一緒に天国に行くかい?」
「お前は、一体どうして、、、」
「人の質問に答えろや!」
腕を切りつけられ、おまけに強く蹴られたおかげで俺の体は遠くに吹き飛ばされ、動く体力すら失った。
「まあいいや。僕がこんな事をする理由だったッけ?それはネ。簡単だよ。僕の殺したい欲を満たすためだよ。」
更に蹴られ、蹴られ、蹴られ続ける。それと同時に、痛みが俺を襲う。痛い。痛い痛い痛い。骨は何本も折れ、俺は抗う気力すら失った。
奴はハハハ!と甲高く気持ち悪い声を手を広げて上げ、優越に浸っていた。
もう、いいんじゃないか?
俺の中にいる俺が、自身の苦痛から逃れるべく、そんな言葉を囁く。
しかし、俺は勿論使うきはない。だって、次こそ、もう、本当に制御できなくなってしまう。だから、、、
『大丈夫だ。お前は制御できるさ。』
できる?そうなのか?たしかにそうだ。俺は、もう守るべき対象なんて一人もいない。なら、いいんじゃないか?もう、暴れてしまおう。
そして、俺はバーサーカースキルを使うのだった。
僕、ジョイルは信じがたい物をみていた。そう、僕の餌であるブルムが、さっきまで負っていたダメージを回復させ、無傷でその場に立っていた。
後退りをする。いや、違う。これは、本能によるものなのか?
逃げるべく、後退りをするスピードを上げる。しかし、そいつは息を荒げながらそれに合わせてついてくる。
「どこに行く気だ?罪人。あんまり動くな。お前を殺したいという欲が強まってしまう。」
後退りをやめ、その場でとどまる。
今まで使ってこなかったのに、なんで今、、、、そう思ったが、僕がやってきたことを振り返って気づく。
引いてしまったのか。トリガーを。
「この、化け物が。」
「違うな。俺は、、、、」
瞬間、僕の視界は歪み、僕の体は頭と体に分離していた。
そしてそいつは、悪魔のような笑みを見せ、俺の頭に靴底を当て、グリグリと踏みにじる。
「俺は、バーサーカーだ。」
瞬間、大量の血しぶきと共に、僕の意識は闇に堕ちていくのだった。
俺は、スキルを解除できないまま、そこでしばらく立っていた。
しかし、本当に制御できたなんてな。驚きである。にしても、だ。俺は一体どうすればいいんだろう。
いや、簡単だ。アイツには、操る魔法が仕掛けられていた。その証拠に、首元に付けたある赤い宝石。これが遠隔操作魔法の一種である証拠である。そしてつまりそれは、黒幕がいる事を指しているのと一緒であり、、、、、
「は、ハハハッ!」
なら、俺は喜んでお前を見つけ出して殺すとしよう。
たとえそれが、茨の道であろうと。たとえその道を歩んだ過程で、誰かが犠牲になろうとも。
俺は必ず、お前を殺す。
好評であれば、連載版を出す予定です。
星5を付けていただけると、今後の執筆のモチベーションにも繋がるので、よろしくお願いします!