241-245
241頭がぼーっとする
氷も汗を掻く暑さのなかで
熱いコーヒーを飲む
コーヒーに対する信頼は厚い
喉が焼けるようで
頭がぼーっとする
暑さと熱さが沸騰している
炎天下の氷点下で
くらくらする
ぐつぐつする
氷点下の炎天下で
過ぎていく
終戦の記念日
忘れ去られた
開戦の記念日
記憶は白くコーヒーの
熱さにまじりこむ
242 熱風チューン
熱風チューン
雀であって
お笑いコンビではない
誰か忘れているが
気にしていない
雀の話なので
笑うところは
あまりにない
雀のとまり木に
宇宙の切れ端が
掛けてあって
雀が飛び立つと
見えなくなって
透明な小鳥が
とまり木に止まると
機関銃の鳴るスナップ写真
に変わる
透明な小鳥が飛び立つと
部屋の篭の中のウグイスが
居なくなっている
ウグイスなんて
最初から居ないと
雀がおしゃべりする
とまり木に止まって
熱風が横切っていく
焦げ付いている
翼の灼けた匂い
243凹み
ボールペンのインクが切れて
凹みだけが
紙に書かれる
それはなかった言葉
インクの洪水が
洗い流していく
荒廃した紙上で
空間距離を測る
トレビの泉
と
トイレの泉
くらいの距離感
244ゴミはゴミ箱に
夏の暑い空気に揺れる
人の波
灰化した人の靴跡
化石化した人の影踏み
忘れ物は忘れ物箱の中に
ゴミはゴミ箱に
245ゴヤの作品名はゴーヤ
天の裸体をさらして
星座は煌めいて
天の川の三途の川下り
異色の明眸が空に広がる
そんなゴヤの作品名はゴーヤ
ゴーヤの作品名はイボイボ
イボイボの作品名は無題
無題の作品名はアバンギャル
アバンギャルの作品名は
卑猥なため削除されました