6話
目覚まし時計がなる。大内は気だるげに目を覚まし、アラームを止める。
「晶?」
横には神崎の姿はない。ベッドから起き上がり、リビングへ行くが神崎はいない。
ため息を引き連れ、シャワーを浴び、身支度を済ませ、ソファーに座る。
一息つくと頭痛がひどくなるのを感じた。ひどい二日酔いだ。
なかなか上手く働かない頭でおぼろげな記憶を辿る。
『敬也さん』
悲鳴にも似た声で助けを求める晶。甘い声で啼く晶の姿。
そうだ、俺は……
「あいつを抱いたんだ」
昨日のことは夢のようで、現実感がわかなかった。
女のことで泣いて、愚痴をいう晶が嫌だった。
自分なら愛してやれると思った。
だから抱いた。
でもそれは俺のエゴでしか無い。
自分の欲望を押し付けただけだ。
大内は神崎に電話をかけようとしたが手を止めた。
「なんて言えばいいんだ」
酒の勢いがあったとはいえ、ノーマルの神崎を抱いてしまった。
何を言えばいい。
何を言っても許すわけない。
「……晶」
もう後戻りは出来ない。
それなら俺はお前の心も体も徹底的に奪うしか無いだろう。
アイツのことはよくしってる。どんな言葉を欲して、どんな愛を与えれば
お前が俺を求めるか。でも怖い。自分がどれだけ晶に劣情を抱いているか。
苦しめたくない。傷つけたくない。
触れてはいけない。愛してはいけない。
それなのにまた触れたくなる
「晶」
大内は愛する男の名を呼んだ。