3話
神崎はタクシーに乗り、大内のマンションの前に来ていた。
安藤に話を聞いてもらったが、見当はずれのアドバイスをされ速攻で電話を切った。
結局ここに来てしまった。本当に僕のことわかってくれるのは
敬也さんだけだと実感させられる。
そんなことずっと前から知っている。
安藤に助けを求めた僕が悪かった。
大内の部屋の扉の前に立つ。今すぐ顔が見たいのに、
玄関チャイムを押す手が躊躇する。
神崎は、扉の前で深呼吸をして、意を決して
大内の部屋のチャイムを3回鳴らす。
それが、二人の合図だ。大内が扉を開ける。
「晶、どうした」と驚く大内に
「お酒を買って来ました。一緒に飲み明かしましょう」と言いつつ
リビングに入りソファに座る。
その横に大内も座り
「今日はデートじゃなかったのか」と聞いてくる。
その言葉に神崎はわざとらしく暗い表情をする。
「振られました。傷ついた心を癒やしてください」と甘えた声を出す。
「振られたのか?結局、俺の言った通りになったな」
「癪ですけどそうですね。別れるなんて思ってもみませんでした
本当に悲しい。慰めてよ」と悲しげな表情すると
「へぇ、彼女に振られてへこんでいるなんて、相当好きだったんだな」
と大内の表情と声は、明るい。まるで別れたことを喜んでいるみたいだ。
「はぁ~、敬也さん楽しんでいる。性格悪いな」
「楽しんではいない。傷心のお前が心配だ」
「でも表情も声も明るいよね」
「お酒を飲んでいたから機嫌がいいんだ。慰めてやる一緒に飲むぞ」
「飲みますよ。今日は酔いつぶれるまでとことん飲みましょう」