こうして完璧令嬢ができあがりました4
昨日は夜にもう1話投稿しておりますので、まだお読みでない方はひとつ戻って下さい。
今日からは、しばらく朝だけの投稿となります。
フローラとのいちゃいちゃタイムを終え、夕食の時間となった。
基本的にウェッジウッド家の夕食は、家族全員がそろってから食べる。
王宮に勤めているお父様も多忙なはずだが、よほどのことがない限り十九時には帰って来て、一緒に食べている。
「今日も我が家の天使たちは愛らしいなぁ」
「あら、あなたったら。たしかにセラフィナもフローラも愛らしいのは間違いないけれど、わたくしのことを忘れては嫌よ?」
「ああっ、ごめんよアルマ。もちろん君もまるで女神のように美しいよ。今日も愛している」
「セオドア……!」
今日も今日とて、ウチの両親は色ボ……こほん、とても仲睦まじい。
新婚さんですか? いらっしゃーいですか?と言いたくなるようなイチャつきっぷりである。
もぐもぐと夕食を頬張りながら少し冷めた目つきでその光景を眺めていると、そんな両親に向かってフローラが口を開いた。
「もう、お父様、お母様! せっかく料理人たちが作ってくれた夕食が冷めてしまいますよ?」
呆れたようなフローラに、両親もごめんなさいねと笑った。
そこじゃない、そこじゃないよフローラ。
いやでもそんなフローラもかわいいわ!
ひとり内心で突っ込んでいた私に、そういえば!とフローラが話題をふってきた。
「お姉様、週末は学園のご友人の誕生パーティーでしたよね? 新しいドレス姿、楽しみにしていますねっ!」
新しいドレス……ああ、そういえばパーティーのためにって新調したんだっけ。
「ええ、わたくしもフローラに見てもらえるのを楽しみにしているわ。もちろんパーティーも楽しみだけれどね」
ドレスのことなどすっかり忘れていたことを綺麗に隠して、笑顔を作る。
決して自分を着飾るのが嫌いなわけではないが、私はどちらかというと着飾ったかわいいご令嬢たちを愛でる方が好きだ。
まあでも、フローラが私のドレス姿を楽しみにしていてくれているのは嬉しいことだわ。
「そうだわ、せっかくだし、アクセサリーと髪型はフローラからのアドバイスをもらおうかしら」
「ええっ!? 良いんですか?」
「ええ、もちろんよ。わたくしなんかよりも、フローラの方がずっとセンスが良いもの。後でわたくしの侍女と相談したいのだけれど、時間をもらっても良いかしら?」
「はい! 夕食が終わったらお姉様のお部屋に伺いますね!」
元気な返事がもらえると、心から喜んでもらえているんだなと嬉しくなる。
妹って本当に良いわぁ〜。
あ、でも年の離れた弟ってのもかわいいわよね。
おねえしゃまとけっこんしゅる!とか言ったりして。
反抗期にはツンツンすることもあるかもだけど、私の婚約者に対抗意識持ったりしてさぁ。
お姉様を泣かせたら僕がただじゃ済ませないからな!って泣きながら言ったり……ふふ、最高じゃない!?
両親はラブラブだしまだ三十代だもの、可能性あるわよね!?
そんなことを妄想しながらウフフと微笑んでいると、両親からは、本当に仲が良いわね〜と温かい眼差しを向けられた。
内心でどれだけ欲にまみれたことを考えていても、美しい笑みを浮かべられるセラフィナのポテンシャル、すごいわ。
その後も和やかに夕食は進む。
ご飯は美味しいし、フローラはかわいいし、両親はちょっとアレだけど優しくて頼りになる。
容姿にも能力にも家族にも恵まれた今世、絶対にこのまま幸せに長生きしたい!
ちなみに、そのために私が大切にしている言葉がひとつある。
前前世の諺として有名だった、〝情けは人の為ならず〟という言葉だ。
いや、前世も前前世も、基本的には困っている人は助けるし、(特にかわいい女の子なら)自分にできることはしてあげたいと思っていた。
でもオタクだった時は、自分の趣味が最優先すぎて見て見ぬふりをしたこともあったし、騎士隊長だった時は、目が回るような忙しさで部下をあまり気にかけてあげられなかったのではと今更ながらに思っている。
まさかそれが良くなかったのでは!?と思ったりもするのだ。
今世はそこまで忙しすぎることもないし、自分を律して周りの人にきちんと気を配ろうと思っている。
人望を集めることもできているし、その考えは間違っていないはずだ。
なにかあった時に助けになってくれる人がいる、それはものすごく心強いものだから。
……いや、もちろん自分のためだけにしているわけではないけどね。
「お姉様? 食事も終わりましたし、部屋に戻りましょう?」
「あ、ああ、ごめんなさい、ぼうっとしてしまって。そうね、あなたにアクセサリーを選んでもらわないとね」
「はい! 任せて下さい、お姉様がとびっきり綺麗になるように、頑張って選びますね! あ、いつも綺麗ですけどね?」
フローラが私のためにと張り切る姿は、とてもかわいい。
「良かったね、セラフィナ」
「フローラのプロデュースしたセラフィナのドレス姿、わたくしたちも楽しみにしているわ」
そんな私たちを、両親が温かい眼差しで見守ってくれることが、すごくありがたい。
「お嬢様方、それでは参りましょう」
素で話すこともできる、信頼できる護衛のアルの存在も、とても大きい。
「ええ、それではフローラ、お願いね」
私はこの生活を、これからも大切にしていきたい。