プロローグ
新連載です。
お久しぶりの方も初めましての方も、お立ち寄り頂きありがとうございます(*^^*)
できるだけ土日祝は朝夕2回投稿したいなと思っています。
どうぞ新しいヒロインちゃん達をよろしくお願いします。
今世は、私にとって三度目の生だ。
そう、なにを隠そう、私は転生者なのである。
しかも転生を二度も経験している。
一度目の人生では、私は日本人の平凡なOLだった。
いわゆるオタク気質の。
小・中・高校時代は、ふたりの兄に倣って剣道の鍛錬に明け暮れた毎日だった。
しかし、怪我の後遺症もあり、剣道をやめて県外の大学に合格してひとり暮らしをするようになったことで、私の生活は一変した。
それまで抑えてきた欲望が一気に解放されたのだ。
「好きなものに囲まれて、好きなことを楽しんで、推しに惜しみなく時間もお金もつぎ込みたい!」と。
結果、私はオタクになった。
好きだったのは、異世界モノのライトノベル、それに乙女ゲーム。
狭い部屋に住んでいたので、置き場に難しい紙書籍やゲーム機を買うのではなく、電子書籍やネット小説を読み漁ったり、スマホアプリのゲームをしていた。
ゲームはたくさんインスト―ルしてやり込んでいたし、推しキャラのイベントがあればバイト代をつぎ込んで課金していた。
成績が落ちたり留年したら強制送還だって、両親と約束していたから、大学の勉強もまあそれなりに頑張ってはいたけれど。
食費を節約するために、自炊も頑張っていた。
定番料理がもやし料理だったのは、親には秘密だったけどね。
そんなこんなで、大学を卒業し就職してからも趣味に明け暮れていた私は、失念していたのだ。
年を重ねれば重ねるほど、疲労は溜まりやすいのだということを。
日々のストレス解消だ!と、夜な夜な読書とゲームに明け暮れての睡眠不足。
必要最低限の、なんなら昼食を抜くこともあった、質素な食生活。
私の身体は、悲鳴をあげていたらしい。
仕事から帰ってきて、あ、立ちくらみだ、やばーって思ってたら、そのまま意識がなくなって……。
死因はたぶん過労死。
享年三十歳。
家族はもちろんだが、ホワイトとまでは言わないけれどブラック企業とまではいかない職場にも、悪いことをしたと思っている。
過労死だけど、仕事の過労じゃない。
推し活の過労です、ごめんなさい。
自業自得と言ってしまえばそれまでだけれど、それでもなかなか楽しい人生だったから、すごく後悔した。
だから、転生した時に誓ったんだ。
「(どうせスマホもラノベもないんだし)推し活は封印! 健康第一!」と。
そうして二度目の人生が始まった。
二度目の世界は、魔法やら魔物やらが存在し、そこかしこで国同士の戦争が起きていた、なかなかにハードなゴリゴリの異世界。
まさかラノベ展開⁉ 聖女かしら、悪役令嬢かしら⁉とワクワクしながら赤ちゃん時代を過ごしたわけだが……。
多くの騎士や魔術師を輩出する下級貴族に生まれ、女である私も魔法騎士として育てられた。
……新しい人生への希望は見事に打ち砕かれ、親父から剣道の特訓を受けていた前世となんら変わらない生活であったわけだが。
それなら俺tueeee!展開かと言われたらそうでもなく。
まぁそんなうまい話ないよねってことで早々に諦めて、真面目に訓練したし規則正しい生活も送っていたから、それなりに強くはなったし女性騎士にしては珍しく隊長職まで出世もしたけど。
しかし、魔物討伐に出た際、同僚を庇ってあえなく殉職。
享年三十歳。
……なんなの、三十歳って厄年だったっけ?
健康的な生活をしていたものの、仕事に明け暮れ、仲間と馬鹿やって楽しいこともあったけれど、結婚どころか恋愛すらできなかったこの人生。
本当にこれで良かったのか私。
ガクリと意識を失った時に思わずそんなことを思ってしまった。
そして二度目の転生。
今度こそは!と瞼を開いた時に目に映ったのは、新生児のぼやけた視界でも分かる、豪華な天蓋付きのベッド。
下級貴族の家のそれとは比べ物にならない。
間違いない、大当たりだ。
私の目がキラリと輝いた。
「まぁ、とても綺麗な青い瞳をしているわ」
「ああ、ウェッジウッド公爵家に相応しい、美しい青色だ」
恐らく私の両親のものだろう、すぐ側で、艶やかな女性の声と、セクシーな低音ボイスが響いた。
公爵家? やだ、貴族階級の最上位じゃない!
驚きつつ、私は決心する。
「あぅあぅあぅあー!(今世は非の打ち所がない、誰もが憧れる特上の貴族令嬢を目指すわよー‼)」
「あらあら、とても元気ね」
「よいことだ。きっと君に似て、強く美しく、賢い女性に成長するよ」
「いやだわ、あなたったら……」
生後一日。
新生児の横でイチャつく両親を尻目に、私は今度こそ人生を謳歌するわよ!と決心したのだった。
2話目を夕方に投稿する予定です!