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賢者の魔法陣~繋ぐ繋がる異なる縁~  作者: いわな
第三章 勇者誕生
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第六十八話【クレオ:勇者に】


「クレオ、あなた勇者になりなさい」


 そう言ったのは、僕の主人でスルディア王国の第二王女フィリナ姫。

 いつものように護衛をしながら花の咲き誇る城の中庭を、ゆったり散歩していた時のことです。


「なぜそのようなことを?」

「神王国の神殿から勇者を派遣するよう要請があったことは知っているでしょ? お父様は様子見をするために派遣しないおつもりなの」

「では、行く必要ないのでは?」

「どうせ様子を見るなら内側に入り込んで見てみなくては、情報なんて集められないでしょ? お父様は中立を望んでいらっしゃるけど、それなら尚更よ」

「それで、なぜ行くのが僕なのですか?」

「私の手勢で一番地味で一番弱そうで侮ってもらえそうなのがあなただからよ」

「ひどくありません?」

「うふふ。本当に勇者になって魔王を討ち取ったら望みはなんでも叶うわよ? 私を妻にすることも、念願のテルセゼウラ再興も」

「スルディアの姫君を妻にいただければ、確かに有力な後ろ盾にはなりますね。ですが、できればテルセゼウラの王族の生き残りを探し出したいです」

「じゃあ、やっぱり行くべきね。世界中探せばいるかもよ。そして私を妻にして新興テルセゼウラの王様の補佐をすればいいわ」

「国王陛下は姫君をベルートラスの次期国王に嫁がせたいとお考えでは?」

「あの方は未婚だけど恋人がたくさんいらっしゃるのでしょう?」

「ええ。僕が調べましたからね。あの時で六人いらっしゃいました」

「嫌だわ。勇者になって私を報奨に望んでくださらない?」

「勇者として成功することをお望みですか?」

「神王国が負けそうなら帝国に寝返ってもいいわ。そして、魔王の手下としてスルディアの姫君を攫って行くの。それも素敵ね」

「向いてません」

「そうね。あなたには派手すぎますものね」

「勇者もですよ」

「……そうね」

「姫君はどちらが勝つとお思いで?」

「オンタルダ帝国かしらね。カトリーネ様は知的で美しく素敵でしたわ」

「素敵なら勝つんですか?」

「好感が持てる相手は応援したくなるものでしょ? あなたのこともよ。あなたは素敵よ、クレオ」

「一番地味で一番弱そうな僕がですか?」

「そんなふうに見えて、実はそうじゃないところが素敵」

「僕は平凡なただの剣士ですよ」

「平凡なただの剣士が百年も前に滅んだ国の復活を本気で望んだりするはずないわ」

「ですかね」

「行ってくださる?」

「仕方ありません、行きましょう」

「お帰りをお待ちしておりますわ、勇者クレオ」

「行ってまいります。我が主、フィリナ姫」

「…………帰ってきてね」



 こうして、僕はフレンディス王国へ来ました。

 正式なスルディアからの派遣ではなく、『姫君と結婚するために勇者として名を上げに来た一介の剣士』として。一応姫君に『頑張ってね』と言う内容の手紙をいただき、勇者の後援役を押しつけられたウェルペンの領主に見せました。

 領主は頭を抱えていましたね。

 スルディア国王に問い合わせたところで国王は何も知らず、姫が勝手に送り出したと返事が来るでしょうから、さらに困ることになるでしょう。


 ですが。

 そうしてやって来た故郷の地より遠く離れたこんな場所で、まさか本当にテルセゼウラの王族と思わしき方に会えるとは……

 一族に伝わるお守りのお導きでしょうか。

 いいえ、我が主の導きですね。

 ベルートラス王国の術学者が滅びの都を調査したという情報を聞いた僕が、その学者先生に会いたがっていたのは知っていましたし。その学者一行がフレンディスに送られる情報も持っていらっしゃった。僕が調べて報告しましたから。

 姫君のおかげで学者先生が送り込まれる前に、こちらに先回りできました。もちろん、愛馬アメデシオンも頑張ってくれました。

 まさかやって来たのが小間使いの少女一人とは、さすがに予想外でしたが。

 とりあえず、恩を売って懐に入り情報を得ようとしたのですが。それがまさかの展開です。


 ありがとうございます、フィリナ姫。

 僕はあなたの願いを叶えなくてはいけませんね。でも、主が変わってしまうかもしれない時はご了承していただきたいです。



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