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賢者の魔法陣~繋ぐ繋がる異なる縁~  作者: いわな
第三章 勇者誕生
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第六十話


 なにゆえ、こんなことになったのでしょうか。


 フレンディス国に来て、勇者と合流して、適当に協力して帝国に潜り込み、タケユキさんを助け出したらさっさとベルートラスに帰るつもりでしたのに。

 なぜ、着いて早々決闘なんですか?

 私が理性的に止めてるのにシュザージは聞いてくれません。


 ──いかに魔法陣が素晴らしいか知らしめる良い機会ではないか。


 などと言ってます。


 ──なに、あのような小童ども、力で屈服させれば我らに従順に従うようになるさ。そうなれば帝国戦でも役に立つだろう。


 そうですか。

 では、お願いします。


 ──うむ。しかし、お前も少しは働け。


 は?


 ──あの小僧はなかなかの手練れではないかと思う。神官服の神術士も資質が高そうだ。こちらの神術に干渉してくるやもしれんので、私は術に専念したいのだ。


 はあ。


 ──まあ、杞憂にすぎないだろうが、様子見がてらお前の訓練もしてやろう。回避くらい、できるであろう?


 へっ!?


「あの……」


 頭の中で問答してたら、突然声をかけられびっくりしました。

 振り返ればスルディアの勇者さんがいました。


「僕はスルディア国を代表してやってきました、クレオと言います。えっと、アロさんとスタングさんが共闘するようなので、僕がこちらについてもいいですか?」


 やっぱりスルディアの人でした。


「シュ……コホンっ、テレシーだ。だが、奴ら何やら揉めておるぞ」


 領主の城の広い中庭。

 その真ん中に出てきたはいいですが、悪ガキ勇者と神官勇者が言い争っています。


「だから、俺は俺の仲間と戦うからお前は引っ込んでろ!」

「勝手に巻き込んでおいてよく言いますね。私も彼女の術を近くで見たいので参加しますよ」

「五対一になったら卑怯じゃねーか!」


 四対一は良かったんですか?


「向こうはクレオが協力するようですよ。二対二にするのが一番公平でしょう」

「……チッ」


 話がまとまったようです。

 まあ、そうなれば私を含めて二対三になるのですが。私は戦力としては数えられたものではないですがね。


 ──どうかな、目端が効くのだから応用できよう。ベテラン小間使いを目指しているのだろ? 


 小間使いは戦いませんがっ!?


 と、思っていたら、両腕と喉以外の意識が私に戻りました。

 部分的に操る場所を変えられるなんて、いつの間に!?


 私があわあわしているうちに対決準備が整ってしまったようです。ウェルペンの領主は自領の騎士を審判に選び中央に近いところに立たせました。

 審判が立ったところで、悪ガキ勇者が突っ込んできました。


「たああああっ!」


 その声に身構えました。が、すぐに隣に立っていたスルディアのクレオさんが飛び出しました。長剣を手に悪ガキ勇者の剣に真っ向から向かいます。


「魔属性魔法陣、神属性魔法陣、術制御補助」


 同時に動いた両手の指先が、同じ魔法陣を描きました。魔法陣は何を発するでもなく手袋についた石の上に浮かびます。

 シュザージは神官勇者の方を見ています。神官勇者が神石の杖を構えて目を閉じて、突然祈り始めました。


「天より舞い降りし神よ、我の手にその力を宿し光を!」

「神属性魔法陣、水を成せ。魔属生魔法陣、風を成せ。吹き上げろ!」


 周囲に湧き上がった水が更に巻き上がり、緩く渦を描き登っていきます。神官勇者が目潰しに放った光がそれに塞がれキラキラしてます。

 虹が出ました。


「はっ!?」


 神官勇者が目をむいて驚いています。

 いつの間にか増えていた見物人が「おおっ」と歓声をあげます。


「魔属性魔法陣、石を成せ。神属性魔法陣、大気に干渉。石を弾け」


 これは盗賊にやった時より規模が小さいです。足元を跳ね回り、剣で戦っていた悪ガキとクレオさんの動きを邪魔しています。


「遊んでるのかキサマ‼」

「殺すわけにはいかんだろ?」


 くくっ、と私が笑います。私もちょっと笑ってます。

 足元の石を避けながらクレオさんはこちらに戻りますが、悪ガキも負けずに器用に弾かれた石を避けて向かってきました。


「神よ! 魔に毒されし、大地を鎮められよ!」


 神官勇者がまた祈れば、魔術でできた石の半分がドシャリと崩れました。それを見た、悪ガキはニッと笑って地を蹴り距離を詰めます。一気に迫ってくるのが見え、同時にクレオさんがかばいに出てくれましたが悪ガキは片膝を曲げたので私は動いて自分の位置を変えます。

 案の定、クレオさんを避け元私がいた場所に切り込みます。クレオさんをクルクルっと回る形での攻撃と回避です。クレオさんは「おわっ」と声を上げます、その隙を見た悪ガキが下げた剣を斜めに切り上げました。瞬時に標的をクレオさんに変えたのです。けれどクレオさんはそれを見事に剣で防ぎ、私の腕を引いて一緒に下がらせました。


「腕を掴むな、馬鹿者‼」

「すっ、すみません!」


 魔法陣が描けませんからね。 


「腕が弱点か!」


 弱点を見つけて嬉々として飛びかかってくる悪ガキ。ですがクレオさんもまた剣を構えて前に出ます。剣がぶつかり、二度、三度、高い音が響きます。


「魔属性魔法陣、火を成せ──」

「神よ、魔を封じる力を!」


 神官勇者の杖が輝きます。が、シュザージの魔法陣はいつものように火を灯します。たぶん、シュザージの魔術を押さえ込もうとしたのに失敗したのでしょう。神官勇者が口をはくはくさせてます。


「なるほど、力量はわかった。思ったより……まあ良い」


 小さく息をつくと、シュザージは左手の魔石の上に右手を重ね人差し指で魔法陣を描きます。神石の上に乗っている魔法陣が光ります。


「魔属性魔法陣、火炎形成。魔属性魔法陣、音を成せ。舞え! 火の小鳥!」


 重ねた両手の上に数羽の真っ赤な小鳥が湧き出し「キュイン、キュイン」と鳴きながら飛びまわります。タケユキさんと食べた飴細工の鳥に似ているのは気のせいでしょうか。かわいくて懐かしいです。


「そんなっ、なぜ封じられない!? なぜ魔術を連続で使って魔に落ちない!?」

「うわぁぁっ、いてっ、熱っ、いてっっ」


 火の小鳥が「キュインキュイン」と悪ガキを突きます。鳴き声をつける必要ありましたか?


「魔法陣の賢者様は、本当に……遊んでらっしゃる……」


 そう言ったホルド様にみんなの視線が集まります。

 そうですね。遊んでますね。今のはわざと魔力だけで魔法陣を描いたようです。神属性の魔法陣で抑えつつ。魔力嫌いの彼らをからかい、挑発していますね。

 まあ、殺すわけにもいかないですもんね。トラウマ植え付けるわけにもいかないですし。せっかくだからと小鳥の形で火を飛ばし、わざわざ楽しい演出をしているのに、周りはやはり青ざめています。


「まだ続けるか? 私はいっこうに構わんよ。子供らに魔法陣を教える時はよく見せてやった技よ」


 あはは、じゃないです。

 神官勇者は膝をつきましたが、火の小鳥に突かれながらも悪ガキ勇者はこっちを睨んでいますよ。


「まっ、魔物になんか、負けてたまるかぁぁ‼」


 あら、まだ元気。

 悪ガキは一匹づつ火の小鳥を剣で斬り伏せようとしますが、飛び回る小鳥を上手く斬れずに苛立ち始めました。

 その時、しゅっと音を立てて一本の矢が小鳥に刺さり落ちました。悪ガキはその小鳥を剣でさらに突き刺し、小鳥は消滅します。


「ほう」


 シュザージが関心の声を上げて、矢を射た者を見ます。


「やっぱりアロだけじゃダメなのよ」

「次は俺らの出番だ!」

「天より舞い降りし神よ、我が友にその力を宿さん」

「エリーナ、エハン、ラッシュ」


 お仲間の神術士が祈りの言葉を唱えれば、杖の神石から出た光がそれぞれの武器に向かい吸い込まれます。


「よっしゃ! 勝負だ‼ なんとか術士!」


 今までの戦いは何だったんですか?

 シュザージは面白がって小鳥を追加します。やめてください。思い出の小鳥がかわいそうです。そう思った途端、小鳥は魚の形になりました。空飛ぶ火の魚ってなんですか?


「面白いだろ?」


 面白いは面白いです。

 小鳥が魚になって悪ガキ仲間はギョッとしましたが、すぐに立て直し魚を狩りはじめました。

 弓使いのエリーナが剣の届かない場所の魚を狙い撃ち、または弱らせる。剣士のエハンは悪ガキアロの背を守りながら魚を牽制。背後が守られたことでアロの攻撃力が上がりました。敵に気を取られることなく目に映る魚を一刀で斬り伏せていきます。神術士ラッシュは武器に宿す神術を維持するのために汗を流しながら踏ん張っています。


「ふむ。魔属性魔法陣、過剰神力流出抑制。術制御補助」


 シュザージは、ラッシュに向かって魔法陣を飛ばしました。


「なっ!?」

「ラッシュに何をした!?」

「神術を使うのが楽になるようにしてやったのだ。ほら、さっさと魚を狩れ」


 みんながポカンとしています。

 あ、火の魚も悪ガキたちを突いてますが小鳥よりは痛くないようですね。


「ほ、本当だ、神石の力を動かすのが楽になった」

「そうなの!?」

「くそうっ、まずはこの魔物を全部狩るぞ!」


 趣旨が変わっている気がしますが、悪ガキたちは頑張りました。シュザージは彼らがくたびれ切るまで次々魚を出して行き、アロが最後の一匹を倒した後、みんなしてその場に倒れてしまいました。


「しょっ、勝者! 魔法陣の賢者テレシー!」


 クレオさんも頑張ったので名前を呼んであげてください。あと、魔法陣の賢者はシュザージです。できれば小間使いテレシーと呼んで欲しいですが、無理ならせめて勇者の方がマシですよ。

 なんだか歓声が上がっています。

 領主様が泣いています。

 どうやら「やっと国王陛下にまともな報告ができる」と叫んでいるようです。


 とりあえず、勝つことができましたが……

 本当に、なんの勝負だったのでしょうね。



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