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賢者の魔法陣~繋ぐ繋がる異なる縁~  作者: いわな
第二章 魔王の国
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第三十話

 正直、ここ数日は幸せだった。

 三食食べられてあったかい寝床で眠れてリドルカさんと一緒で、他の人にはほとんど干渉されない生活なんて嬉しくて仕方なかった。

 じーさん先生たちに申し訳なさすぎて口には絶対できないけど。


「俺の正体は、異世界から来た異世界でも異質だった人間です」

「……なんと?」

「この世界に召喚されたんです。滅びの都に残された魔法陣が、百年かけて呼び寄せた別の世界の人間です」


 みなさん、頭に疑問符が浮かんでる。

 じーさん先生の時は白骨バカ王子の手帳もあったし、もともと魔法陣についても研究していたから、異世界からの召喚をすぐに理解してくれた。


 そういえば、じーさん先生もはじめは俺が神族の末裔かもって思ってて利用しようしてたんだっけ。でも、俺がこの力を利用されたくないことも隠したいこともわかってくれて、弟子として生活の保証をするから出来ることだけ協力してほしいと言ってくれた。

 そして、その通り約束を守ってくれた。

 元からの弟子であるトルグさんにもミリネラさんにも、テレシーにも俺の正体は話さないでいてくれた。じーさん先生自身、敵がいたり問題だらけの身内がいたりしたのに、それらをどうにかするために俺を使おうとしなかった。

 心が読めると知ったら、敵やダメ息子の心を読んでくれと言いそうなものなのに。

 じーさん先生が願ったのは、世界を脅かす魔王を倒す一助となってほしい。それだけだ。


 チラッとリドルカさんを見る。

 それから正面の皆さんに視線を戻す。


 ここの皇帝一家は初めから俺の力を利用するために誘拐したわけだしな。

 リドルカさんがかっこいいからって、絆されるわけにはいかない。


「信じるか信じないかはお任せします。俺を保護してくれていた人が言ってたんです。この世界に魔王が現れて人々を脅威に晒すと。その魔王を出現させた国はオンタルダ帝国だと──」

「違うわ‼」


 声に出して叫んだのはパレアーナさんだった。でも、皇帝の兄弟たちは皆、同じ怒りを滲ませた。


「神王国の陰謀よ‼ 皇帝が代替わりをした時期を狙ってありもしない妄言を吹聴したのよ! あいつらは魔属性に連なるものを貶めているの! 自分たちが世界をいいようにするために‼」


 意見は全て同じ。

 なるほど……


「そうなんですか」


 俺がそう答えると、一番に我を取り戻したのは皇帝だった。


「其方は、敵とみなした我らの言葉を信じるのか?」

「信じますよ、みなさん心からそう言ってますし。今まで神属関係者にやられたこと、悩まされたことが物凄い勢いで流れ込んできたので」

「……は?」

「俺は心が読めるんです」


 あまり煩かったのでテレパシーは切った。

 さすが皇族だけあって、なんか色々ありすぎて整理がつかないほどだ。親善のための旅の道中でも何かあったみたいだ。カトリーネさんの念が新鮮で一番わかりやすかった。

 リドルカさんの心はやっぱり読めなかったけど。


「やはり……読心の術が使えたのね。いえ、心言の術もかしら。あの時、あなたは口に出さずにあの娘を助けて欲しいと私に訴えたのは、聞き間違いではなかったのね」


 そう言って、ため息をついたカトリーネさん。

 ……そうだっけ?

 あの時、最後の方はちょっと記憶があやふやだけど、カトリーネさんがテレシーを助けてくれたのは覚えている。


「心言の術は上位神術のひとつよ。神石も持たずに当たり前のようにやってのけるのですもの。空も飛べる最上位神術士なら、本物の神族に違いないと思ったのだけど……」

「俺が使っている力は俺自身のものですが神様なんかじゃありません。元の世界で超能力と呼ばれるものです。うちの血筋はこの力を持って生まれることがあるんです。でも、それを誰にも利用されたくなくて、元の世界でもずっと隠れ住んでいました」

「ベルートラスの術学者はあなたを利用しようと囲って隠していたのじゃないの?」

「オーリー先生は一般的に知られている帝国の話をしてくれただけですよ。先生は魔術に偏見はないし、俺のことも利用しないと約束してそれを守ってくれていました」


 カトリーネさんはまだ怪しんでる。けど次の言葉は出てこない。

 代わりに口を開いたのはオーレリアさんだ。


「これだけの力があるのになぜ隠そうとするのです? 国や多くの弱き者たちを救うために、使おうとは思わないのですか?」

「思いませんよ。俺は嫌です。先祖にそれをしようとして辛い死に方をした人が何人もいたそうです。ばーちゃん……祖母も母も、少しの大事な人と穏やかに静かに暮らすことを選びました。俺も、そんな暮らしを望んでいるんです」

「ならばこそ、戦え」


 背後から声が聞こえた。


「大切なものがあるなら、守るための戦いもある」


 俺はゆっくり振り向いて、答える。


「それならあなたと戦うことになりますよ、リドルカさん」


 リドルカさんがゾクリと身を震わせたのがわかった。

 父さんが言ってたっけ。お前は怒ると目が怖いって。魔王様まで怖がるほどなの?


「今、俺が大事に思っているのはこの世界で初めて俺に優しくしてくれた人たちです。それを守ろうと心に決めた矢先にこんなことになってしまって。困っていたら、まさか誘拐犯が揃って無防備に俺に会ってくれたんだ。一網打尽にする機会をくれたのは、あなたたちの方でしょ?」


 まさか皇帝自ら会ってくれるなんて思わなかった。

 オーレリアさんに話を聞くだけなら、ここまでしなかったかもしれない。俺にできることなら多少は協力するから、それで手を打ってもらえないかと思ってた。


 けれど権力のトップに会えるなら話は別だ。


「これは脅しです。俺からも先生たちからも手を引いて、自分たちで問題を片付けてください。やったことないけど、たぶんこの城をぶっ壊して逃げるくらい、俺にはできますよ」


 ブワッ、と黒いモヤを纏わせたリドルカさんが掴みかかってきた。

 あの夜は、魔術のことも神術のこともよく知らなくて、怖くなって逃げたけど──今はその伸ばされた手にあえて捕まった。

 腕を掴まれ、リドルカさんの拳が頬に当たる。痛くはない。

 神属騎士に殴られた時と違って、完全障壁を展開してる。引っ張っても首を締めても、モヤモヤを巻き付けてきても無駄ですよ。


「……うそ」

「魔に落ちない?」

 

 そう言ったのはカトリーネさんとオーレリアさん。

 魔に落ちるって具体的にはどうなるのかな。知らないけど、全然平気だからやっぱりこの世界の魔法的な術は俺には効かないってことで正解か。


「神力も魔力も、俺には効かないようです。時間があったので俺を囲ってた魔石と神石でちょこちょこ試してみてたんです。どれだけあなたに触れられたって魔に落ちることはないですよ、リドルカさん」


 リドルカさんの手が止まる。

 その目は驚きで見開かれていた。

 びっくり顔もかっこいいのに。本当につくづく縁がない。


 魔王で、皇帝の弟で……ものすごく嫌われた。


「わかった……其方からは、手を引こう」


 皇帝がそう言ったので、みんなを床に下ろしてあげた。


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