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賢者の魔法陣~繋ぐ繋がる異なる縁~  作者: いわな
第八章 君の世界
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第百八十七話


 ラスタル神王国の謁見の間。


 前にここへ来た時は、俺たちは挨拶をする側で全員が出揃っているところへ最後に入場したんだっけ。


 今回は迎え入れる側だから、初めから中に入ってる。

 もちろんルーシラさんが手を加えて華やかになった衣装のままで。

 ウィラくんもスタングさんも褒めてくれたけど、モーリス王子は涙目でガン見されてびっくりした。

 どうも、こないだの化物退治と常世の泉退治を見て以来、俺のことを「神」と確信してしまったらしい。

 まあ、自分の心の中でこっそり信仰するだけに止まってるみたいだからほっとくけど。ルーシラさんは遠い目をしながら気付かないふりをしてあげていて、ウィラくんは気付きもしてないしね。


 そんな感じで、神王三国の次代と異国の賓客である俺たちが謁見の間に集まって、これから会うナルディエの次代候補について話をする。


「昼前に王城について、ナルディエの官舎に案内したが、案内役の官司が怒っていたぞ。あまりに態度が悪くて粗野だと」


 ウィラくんまでそんなことを言う。俺も気になったからナルディエ官舎の様子を少し見てた。遠見と透視とテレパシーで。


 官舎の中には十数人のおっちゃんとあんちゃんがいた。

 雰囲気がそんななんだ。

 それに、確かに態度は悪かった。

 物色するようにあちこち見回してるだけでなく、調度品や壁のレリーフを触りまくって叱られて怒鳴り散らしたり。侍女さんたちをニヤニヤした目で見て セクハラまがいのこと言ったり。貴族である官司や騎士たちに、自分たちも次代神王の側近だからお前たちと同じ扱いをしろとか言ったり。


 俺は見たことを三人と共有した。


『町のおじさんなら、普通にいますよね。そんな感じの人』


 心の中にテレシーの声。ため息まじりだ。


 そうだね。いるよね。

 俺の故郷の村にもいたよ。

 豪快で世話好きすぎて俺は苦手で近付きたくなかった。友達作れとか彼女作れとか勉強しろとか無茶ばかり言われて怒ったことがある。ばーちゃんに止められたけど。

 そんな人でも村では顔役だったし。慕ってる人は多かった。

 それを思えば、柄が悪くて口が悪くて態度が横柄でも悪い人ではないのかも。

 お城にお勤めできるタイプじゃないけどね。


 俺がそんなことを考えていたら、テレシーは微妙な顔でうなずいてシュザージとリドルカさんはムッとしてた。

 悪いところの方が多いから悪い人でいいのかな? 俺も怒ったし。でも、いざと言うときは頼りになるとじーちゃんが言ってた。

 

 問題はバロウの刺客がいるかどうかだけど……あの中にはいなさそうだ。


『そうなのか?』


 と、心伝いに聞いてきたのはシュザージだ。


『うん。庶子王子の周りにいる人はまったく神術対策してないよ。心の底から庶民だった』


 ルーシラさんのように何重にも心を隠すようなことができるのは、上位術士でもごくごく一部だ。黒の神使にそんな上位神術士がいないとも限らないけど、あの中にはいないと思う。

 というか、王妃様や偉い貴族の人たちはフレンディスの別邸でお留守番だって。なんで?

 ついてきているのはほとんどがざっくばらんで裏表なく庶民ばかりだ。王子のそばには下位の貴族もいるけれど、周りに神術士がいる時にクレオさんと同じような偽情報を思い浮かべるみたいなことしかしてない。

 うーん。腕に自信があって、庶子王子を守れる人だけで来たみたいなこと言い合ってるけど、神王一族としての謁見にそれってどうなの?


 そうやって見ていたら、昨日会議に来ていたナルディエの官司が彼らに呼びかけた。謁見の間に向かうにあたり注意事項を色々と言ってるけどあまり聞いてないみたい。

 俺たちの時より謁見会場が荒れないかな?

 今日はラスタルだけでなく、神王四国の臣下の皆さんも勢揃いしてるんだけどね。

 ラスタル神王はお休みだけど。


「うむ……。想定通り、粗野な者たちが喧嘩越しに手を出してくる機会はありそうだ。タケユキがやるか?」

「えっ!? 俺が脅していいの!?」


 俺たちが突然そんなことを口にしたから、ウィラくんたちがギョッとした。


「ちょっ、ちょっと待て其方ら! 何の話だ!?」


 あれ? ウィラくん聞いてないの?

 モーリス王子もびっくりしている。

 ルーシラさん、言ってないの? と思ってたら、ルーシラさんは肩をすくめた。


「ナルディエの者たちがわきまえなければ戒める、とい伝えましたわ」

「脅して戒めるんでいいんだよね?」

「もちろんだ」

「まっ、待て待て賢者殿! タケユキ殿に何をさせる気だ!?」


 ウィラくんだけでなく、ルーシラさんもモーリス王子も何をする気かと訝しんでるね。

 心配しなくてもちゃんとやるよ。


「タケユキは脅しには一定の評価がある」

「帝国では皇帝一族揃って、脅した。俺も含めて」


 シュザージも褒めてくれたし、リドルカさんは経験で知ってる。


「タケユキさんの最初の提案では『神王国のお偉いさんを脅して従わせる』だったんですよ」


 ね、ってテレシーが笑う。

 今度はなぜか、みんなして青ざめたよ。

 

「そうだけど、それはやらなくてよかったよ。ウィラくんたちとも仲良くなれたし、この先の帝国にもテルセゼウラにも利点があったんでしょ?」


 と喜んでたら、先触れの官司がやって来た。

 ナルディエの官舎から、庶子王子を真ん中にぞろぞろと人が出てきた。

 うん、ちゃんと真ん中に囲って守ってる。


 俺たちも慌てて席に着いたよ。


 神王一族の席は壇の上。

 真ん中の席は、今日はウィラくんが座ることになっている。

 左隣はバロウ神王国次代神王モーリス王子。右隣はウィルペティ神王国次代神王アデレイ姫。の秘密の代行者、ルーシラさん。

 そして、俺とテレシーは次代神王席の斜め前辺りに設けられた台座の席に座り、俺の隣にリドルカさん。テレシーの隣にシュザージが立つことになった。

 二人も座れば? と思ったけど、リドルカさんは護衛のため、シュザージは発言を求められることが多いだろうということで立ってる方が都合がいいそうだ。

 でもいざという時、脅す係は俺だから。

 いつでも動けるように軽く身構えた。


 みんなが定位置に着いた時、戸口の官司さんが来訪者を告げた。



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