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賢者の魔法陣~繋ぐ繋がる異なる縁~  作者: いわな
第八章 君の世界
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第百六十七話



「紫神石について知りたかったこと、わかった?」


 検証が終わったのでそう聞いてみたら、地べたにへたり込んでいた人たちは一斉にビクッとして青ざめた。ウィラくんもだ。

 もう紫神石は機能しないし、常世の泉は帰ったよ。

 よっぽど怖かったんだな、と思っていたらリドルカさんが声を上げた。


「ウィラネルド、なぜタケユキに礼を言わん」


 なんでリドルカさん怒ってるの?

 首を傾げていたら、ウィラくんはハッとして立ち上がり俺のところへ来た。同じくスタングさんもだ。


「すまない、その、色々と驚いて。ありがとうタケユキ殿。尋ねたいことは山ほどあるが、ひとまず城に帰って休んでくれ」

「あの、師匠とテレシーさんはどうされたんですか?」

「大丈夫だよ、ちょっと疲れたみたい。早く帰って休ませてあげたいよ」

「そうだな。皆! 帰りの支度を急げ!」


 ウィラくんの号令に、やっとみんな動き出した。

 まだ動きが怖々してて、その視線は俺を見てた。ルーシラさんもバロウの王子もだ。


 ……そっか。俺が怖いのか。


 そう思ってたら、リドルカさんが頭を撫でてくれた。


「助けても、守っても、恐れられることはある」

「うん」


 ばーちゃんもそんなこと言ってたっけ。

 リドルカさんもテレシーもシュザージも、俺のこと怖がってないのがわかるから十分だ。ウィラくんとスタングさんもだね。


「帰ったら、何があったか僕にも教えていただけますか?」


 クレオさんもだ。

 クレオさんは見てなかったからかもだけど、見てても怖がったりしなさそうに思う。心の中のお姫様もね。


 そうして、俺たちは帰路についた。


 馬車の中でも、移動の時も、俺はテレシーを抱きかかえてたよ。

 やっとテレシーの膝抱っこが叶ったね。

 テレシーは今、心の中でシュザージを一生懸命慰めている。俺はそんなシュザージをテレシーごと抱きしめて、そんな俺はリドルカさんに抱きしめられて時々癒しの魔術をかけてもらった。

 そんなそんな俺たちを見たせいか、ウィラくんはすっかりいつもの調子に戻って呆れ顔になってたし、ルーシラさんも肩の力が抜けたみたいだった。バロウの王子は逆に歯を食いしばってるみたいだったけど、なんで? まあいいや。


 真っ白な神降地の山と大地を見ながら、俺たちはラスタル神王国の神都に戻って来た。




 ウィラくんのお城に戻って、以前と違う客室で一息ついた。

 あの部屋にいるのは嫌だったからね。

 常世の泉が道を覚えてまた来るかもと思ったらゾッとする。

 この部屋は前よりは幾分ランクは下がるけど十分に広い。主室と寝室が別になってないけど、大きな衝立で仕切りがしてあるしベッドも広い。お風呂などの水回りもちゃんとあるからから申し分ない。


 テレシーを抱っこしながらベッドに腰掛る。左隣にリドルカさんが座る。

 やっとホッと息をついた途端、どうでもいいことが思い浮かんで口に出た。


「そういえばあの泉の手、テレビで見たコアリクイの威嚇を思い出したよ」

「なんですか? それは」


 シュザージはまだ閉じこもっているけど、テレシーの意識は戻ってた。


「えっと、テレビというのは通信の術道具のもっともっとすごいの。遠くの人とか情報とかがずっと流されてる箱。コアリクイは変な顔した動物」

「動物の威嚇……と同じに見えたのですか? あれが?」


 テレシーが目をまん丸にしてる。

 シャーってしてる姿がなんとなく被ったけど、常世の泉は可愛くないね。

 そんなことを思っていたら、テレシーの声のトーンが下がった。


「……タケユキの世界の術道具が、気になるな」

「もしかして、シュザージ?」

「ああ。声を発するペンダントがないからな。……テレシーが怒っている。まったく」


 テレシーの声でそう言うと、シュザージはテレシーの手で魔法陣を描いた。

 俺の右隣に現れたシュザージは『はぁ』と大きく息をついた。そしてテレシーごと俺を抱きしめる。テレシーはちょっとすり抜けてる。


『アレが出てくることは予測して身構えていたのに、いざ目にすると……恐ろしくて身動きひとつできなかった』


 もう一度『はぁぁ』と息をつくシュザージ。

 シュザージは転生するたびに常世の泉に落ちてたんだもんね。記憶と自我を消されないように必死に維持して生まれ変わったんだ。


「シュザージ、横になる? 疲れてるなら寝た方がいいよ」

『今横になると、タケユキに癒しを求めてあれやこれやとしたくなる』

「俺に癒せるならな──」

「なんでもするとか言っちゃダメですよ、タケユキさん」


 ダメなの?


「シュザージは元気が出た途端それですか。はぁ……このゴタゴタが片付いたら、まずは帝国に行きませんか? 早くリドルカさんのお兄さん達とお会いしたいです」

『それはいい。さすれば私も存分にタケユキと──』

「シュザージは最後です。リドルカさん、私、そして最後がシュザージです」

『なんだと!?』


 テレシーとシュザージは何の話をしているんだろう。

 聞いてみたいけど聞いちゃいけないオーラみたいなのを、テレシーからバシバシ感じて心を読むどころか聞くのも躊躇われてしまう。


「タケユキは、疲れていないか?」

「うん。リドルカさんがずっと癒してくれてたし。あ! 俺の力でもシュザージを癒せるの? ペンダントの魔法陣使ったらできる?」

「……タケユキさん。そういう話ではないのです」


 違うのか。

 でも、シュザージも元気を取り戻してくれているみたいでよかった。


 そうして、しばらくの間そんなたわいのない話をして時間を過ごした。

 シュザージは俺の世界の通信技術を聞きたがったので、知ってる範囲で教えてみた。でも俺はパソコンもスマホも持ってないんだよな。弟たちが使っているのを見たことあるくらいだ。

 話がある時は家の電話を使ったし、ばーちゃんや母さんなら念話を飛ばして意思の疎通もできた。長距離だと俺はイマイチだったけど母さんは上手だったのでなんとなくの話はできたよ。


 そんなことをつらつらと話をしているうちに日が暮れた。

 今日の夕食はウィラくんに誘われているので、ウィラくん()の食堂に向かう。この部屋にもテーブルがあるけど四人掛けなので大人数では食べられない。

 でも、食堂には思ったよりたくさん人がいてびっくりした。

 スタングさんとクレオさんはいるだろうなと思ったけど、なぜかルーシラさんとモーリス王子もいた。その二人がいるせいで従者とか護衛とかもいて食堂が狭く感じるんだ。


「父上も来たがっていたが、じいに止められてな。若者ばかりの会食に年寄りがしゃしゃり出るなとな」


 ウィラくんが笑ってそんなことを言っている。

 ラスタル神王さんがいても多分誰も気にしないと思うけど、護衛やなんだでまた人が増えると嫌だから遠慮してくれてよかった。

 

 ここの食堂もとても広くて豪華だった。

 ラスタル神王国の王子様のお城だもんね。

 その中でも特別な賓客をもてなすための食堂なんだって。テキパキ働いている給仕さんたちの心をざっと読んで知ったよ。

 俺たちは四人、長テーブルの一面に並んで座った。リドルカさん、俺、テレシー、シュザージで。シュザージの隣にはクレオさんが着席。正面はルーシラさん、ウィラくん、スタングさん、モーリス王子だね。

 ウィラくんやルーシラさんやモーリス王子は心の中が昼間にやった検証のことでいっぱいでモヤモヤしてたから読むのをやめた。聞きたいことがあっての会食だから、そのうち話すだろう。

 でも、せっかくの食事中に暗い話はしたくないな、と思ったら。ルーシラさんが小さく首を振ったのに気がついた。頭を切り替えたのかな。にっこり笑って視線がリドルカさんに向かった。


「ねえ、リドルカ殿下にお尋ねしたいのだけど、皇帝兄弟はトマシウス陛下とリドルカ殿下だけなのかしら?」

「アデレイ……」

「あら、聞くくらいいいじゃない。これからは帝国とは仲良くやっていくのでしょう?」


 アデレイことルーシラさんはにっこり。ウィラくんはじっとり。

 何の探りを入れてるのかな、と思ったら。婚活か。

 これは明るい話題になるのかな?


「弟は八人いるが……」

「八人!?」


 ルーシラさんの目が光ったよ。

 一瞬でリドルカさんの姿から弟さんたちの姿と年齢を妄想しはじめた。心の浅いところで流れるように次々と。


「今は皆、魔落ちしている」

「……え?」


 ルーシラさんの妄想は掻き消えた。ちょっとだけこないだの化物がよぎったけどすごい勢いで振り払ったよ。今はまた心は真っ白だ。

 シュザージがくすくすと笑う。


『いずれ魔法陣で治療する予定だ。最高の魔属性資質を持った魔王の弟たちだ。そのうちの誰かがスタングの相棒になる予定だ』

「へっ!?」


 今度はスタングさんが変な声をあげた。


『治療や教育で少し時間はかかるだろうが、最高位の神属生資質を持つスタングの相棒になれる魔術士は他にない』

「相棒? 相棒とは何の相棒だ?」

「魔法陣を使うためのですよ、モーリス王子。ひとつの術資質に特化している者は魔法陣を扱うのに向いていませんが、それぞれが協力し神力魔力を込めることで魔法陣を発動させることができるのです」


 テレシーが捕捉した。

 スタングさんは頬を染めて喜んでるよ。目が潤んでる。本当に本当に嬉しそうだ。そんなスタングさんを見るリドルカさんも嬉しそうだ。


 ルーシラさんの婚活話を皮切りに、食事中の話は魔法陣と恋話に集中した。

 おかげで食事の間は楽しい話が聞けてよかったよ。

 ウィラくんやモーリス王子は魔法陣の話を聞きたがったけど、ルーシラさんはとても上手に話題を恋話にスライドさせてテレシーと俺の馴れ初めまで聞き出してた。その辺りは話しても差し支えないだろうと、心の中でシュザージが話題を勧めたので、テレシーってば盛りに盛った馴れ初め話をしちゃったよ。

 俺、そんなにカッコよくテレシーを助けてないよ? むしろやっつけちゃったとはとても言えないけど。どうしよう。なんかテレシーの中で俺、賢くて強くて優しい英雄になっちゃってた。びっくりだ。

 恥ずかしいから何度か訂正したけど、聞いてた人たちはみんな微笑ましく俺を見るから居た堪れなかった。うう~


 そうして、食事は終わり。

 給仕の人にお茶を淹れてもらった後。侍従や護衛の騎士たちはみんな、人払いされた。

 シュザージが遮音と覗き見防止の魔法陣を部屋に張り巡らせる。


 ここからは、楽しくない話になりそうだね。



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