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第百五十九話


 化物の上に転移した途端、見えたのは化物に取り込まれてしまったウィラくんとスタングさんの姿だった。


「ウィラくん!」

「スタングさん!」

「くっ!」

『攻撃するな馬鹿者!』


 咄嗟に化物を攻撃しようとしたリドルカさんをシュザージが止める。


 俺たちは空中に浮いていて、俺は左手にリドルカさん、右手にテレシーの手を握っている。シュザージだけは幻影体なのでテレシーの横に浮いている状態だ。


『リドルカ、魔力であの化物の動きを封じられるか?』

「あの大きさなら、できる」

『ならばこれ以上、奴が人を取り込まないように封じろ』


 リドルカさんはうなずく。俺は邪魔にならないよう、テレシーの手を握ったままリドルカさんから少し離れた。

 すぐにリドルカさんは自力で浮いて、両手を前に出し手の中に青い魔力を集めるとボール投げのように思い切り化物にぶつけた。

 青い光が勢いよく落ちて行き、化物にぶつかって広がった。それは半球のドームのようになって化物を閉じ込める。


 地上にいた人たちの視線が一斉に上を向いた。


『降りるぞ。化物の横にだ』


 俺もリドルカさんもうなずいて地面に着地。


『お前はあれに触れても大丈夫なのだな?』

「ああ」

『だったら、一人づつひっぺがしてこっちへ放れ。魔傷治療の魔法陣を描く。幻影体では大きな魔法陣は描けん、テレシーの手で描くぞ』

「はい!」

「でもシュザージ、あの中心には紫神石があるよ。あれはリドルカさんを攻撃できる」

『わかっている。タケユキはテレシーの護衛をしつつ、紫神石が出てきたら其方の力で封じてくれ。できれば壊さず確保。無理なら粉々にしてもよい』

「わかった!」


 リドルカさんはすぐに化物に向かっていく。

 シュザージはテレシーの後ろに立って、テレシーの手で魔法陣を描いていく。その指先から白と黒の光の線が現れ、化物の隣に魔法陣が少しづつ描き上がっていく。

 俺は化物を含めて俺たちの周りに結界を貼った。俺の結界は人の目には見えない。

 リドルカさんは化物ひっぺがしに集中して欲しいし、テレシーとシュザージは魔法陣を描いている時は無防備になる。

 俺は化物から紫神石が出てくるのを睨むように待ちつつ、辺りにも警戒した。たぶん黒の神使が潜んでいるだろう。隙を見せたら攻撃してくるかもしれない。


『魔属性魔法陣、魔力収集。神属性魔法陣、収集魔力拡散。魔属性魔法陣、地中魔力誘導……くそう、地中魔力流が深すぎる。神力中和か……神石……。タケユキ、誰かに呼びかけて空の神石を持って来させろ』

「わかった! 誰か! 空の神石を持ってきてください!」


 周りを見て大きな声を上げた。

 近くにはまだ幾人も人がいるのに、怯えてたり隠れてたりで誰も動かない。もどかしい!


「神王国の白い石は全て空の神石よ! ただし、質はあまり良くないわ!」


 背後から声がして、振り向いたらルーシラさんがいた。震えながら声を張り上げて教えてくれた。


『なるほど。ならばそれで良い』


 シュザージも振り向いて、ルーシラさんにニッと笑う。

 ルーシラさんがドキリとしたのがわかったけど、今はやきもち焼いてる場合じゃないね。ププン!

 ちょっとだけ意識がよそを向いている間に、テレシーの手は魔法陣を描き上げていた。化物の二回りほどある大きな魔法陣。それにくっつくように三つの小さめの魔法陣。


『──神属性魔法陣、魔力封印。複合魔法陣、魔傷治療を成せ!』


 魔法陣が完成し、黒と白の光を放つ。少しだけきれいな薄紫に縁取られた魔法陣ができた。


『リドルカ!』


 名を呼ばれ、うなずいたリドルカさんはいつの間にか作った魔力の青いナイフを持っていた。反対の手で化物にくっついている人を掴み引っ張り出し、引っ張るだけで剥がれない部分はナイフで切り取るようにして剥がしていく。大変そうだ。

 きちんと人の形のまま切り出された魔落ちした真っ黒な人間を、リドルカさんは無造作に魔法陣に放り込んだ。

 べちっと音を立てて魔法陣に転がったその人から、黒い何かが滲み出て魔法陣の線を伝って三つの小さな魔法陣の一つに向かった。そして、その魔法陣の下にある石畳の石に吸い込まれた。石畳にうっすらと黒っぽい紫色が付く。


「次だ」


 切り出した人を、リドルカさんが次々放り込んでいく。


「あ、スタングさん!」


 化物の中からスタングさんが出てきた。ウィラくんを庇うように抱きしめたまま気を失っている。二人は引っ張り出すだけで化物から剥がれた。しかも、どこも魔落ちしていない。

 一応、と思ったのか、リドルカさんは二人を抱えて魔法陣の上まで運びそっと寝かせた。


「……助かった、リドルカ殿」


 すごい! ウィラくんは意識がある!


「そこにいろ」


 それだけ言って、リドルカさんは化物の解体作業に戻った。

 ウィラくんは大人しく、スタングさんを抱きしめて横になったよ。

 無事でよかった、と思った瞬間。何かが俺の結界に当たって弾けた。

 

 神術の攻撃だ。


 腹が立つ。


 俺は感覚を広げ、神術を打った者を特定し超能力で持ち上げた。


「うっ、うわっ!?」


 男の驚く声が聞こえたけど無視して、力を込めて地面にぶつけた。死んではいないよ。話を聞かなきゃ。

 仲間のありように動揺したそいつらは心のガードが緩んで特定できた。ので、全部持ち上げて落としたよ。突然浮き上がって落ちて頭やどっかから血を流しピクピクしているそいつらを見て悲鳴が上がる。

 関係ない人はやってないと思うけど、間違えていたらごめんね。


「ル、アデレイさん。そっちに倒れているのは犯人です。捕まえておいてください」

「へ? ええっ!?」


 あとは任せた。

 俺は小さくなってきた化物を睨んだ。

 そろそろ中心だ。紫神石が出てくる。


 また一人、ひっぺがしたリドルカさんが手を止めた。


「後は……死んでいる」


 六人ほどの人が重なって丸まって、ほとんど溶けていて泥の塊みたいになっていた。


「この下に、あるな」


 でろっとした黒い塊を、それでも丁寧に人の形に切り裂いていくリドルカさん。それを退けた時、見えた。


 紫神石!


 一瞬、紫に光ったそれを、俺は小さな結界で固めた。

 ビシッと少しヒビがいっちゃった。

 けど、もうあの石は何もできないただの石だ。


 リドルカさんもテレシーもシュザージも俺も、小さく息をついた。

 シュザージがテレシーに何か囁いた。

 テレシーはうなずいて、大きく息を吸い声を上げた。


「化物退治は終了しました! 医師を呼んでください! 魔法陣の中にいる人は皆、生きています!」


 わあっ!

 と、周囲から歓声が上がった。

 まだ警戒して俺たちの周りには縮小した結界を張っておくけど、とりあえず化物はやっつけた。


『アレに触られて魔落ちの症状がある者はあの魔法陣の中に入れ。魔傷を癒すことができる』


 シュザージの声に、何人かが泣きながらこっちにやって来た。

 人に肩を貸してもらったり、抱えられたりして運ばれてくる人もいる。その中に昨日見た術道具管理の神官さんもいた。

 

『入りきらんな……』

「もうひとつ描きますか?」


 大きくため息をついたシュザージが、テレシーの手を借りてもうひとつ同じ魔法陣を描いた。

 



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