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第百一話


「あれが街道かな」


 空高くから下を見れば、メイリンク商国から国境街のロシニエン、さらにそこからウェルペンの街への道が伸び、そこから北へ向かって糸のように長く伸びる道が見えた。

 しばらくは道沿いに立つ家があり農地がある。さらに進めば丘や林があって、見えるか見えないかの道が枝分かれしてその先の村に繋がっているようだ。

 

「待ち合わせの町はもっと先?」

「いや、街道沿いにある町だ。あれか」


 空を行きながらリドルカさんが指差す。その先にホーケンと同じくらいの町がある。

 馬車だと半日がかりだけど空からだとすぐだね。



 俺たちは町から少し離れた森の中に降りた。そこから町に向かって街道を歩く。街道は、行き来している人がそれなりにいる。近隣の村から収穫物を背負い籠や荷車で運ぶ村人、たくさんの荷物を積んだ商隊の馬車。長旅をしている風な旅装束の人。色々だ。

 町や道に詳しそうな商隊や旅の人の心をこっそり読んでみたら、この町の次の街から別の領地になるそうで、ここは領境の宿場町らしい。

 ここがウェルペン領の端っこってことになるのか。

 街道を歩きながらリドルカさんとこそっと話す。


「思ったより早く着いてしまいましたね」

「そうだな」


 日が暮れる前に待ち合わせの予定だけど、今やっとお昼くらいだ。

 昨日と同じくテレシーたちは馬車で、クレオさんは自分の馬でやってくる。

 今回もクレオさんと合流して良さそうな宿を取り、後で来るテレシーたちを同じ宿に連れてきてもらう段取りだ。

 まだまだ時間があるけど、何して待っていよう。


「とりあえず、昼食にしますか?」


 そう問えば、リドルカさんはフッと笑ってくれたので町で食事処を探してみようと思う。ついでにいい感じの宿屋も探しておこうなんて思っていたら、道の向こうで大きな声や悲鳴が聞こえた。


「暴れ馬だー‼」


 暴れ馬。時代劇かなんかで見たような光景だ。

 街道を行き交っていた人たちが逃げ惑う中、一匹の馬が興奮してこっちに向かって走って来る。


「おい、誰か乗ってるぞ!」

「女の子だ!」


 確かに、馬にはテレシーくらいの年頃の女の子が真っ青な顔でしがみついてる。手綱を離してしまったみたいだ。

 馬を止めた方がいいんだろうけど、どうやって止めよう。宙に浮かしたら目立ちすぎるし、転ばせたら馬も乗ってる子も危ないよね。


「止めたいのか?」


 リドルカさんに聞かれた。

 止めてあげた方がいいんだろうけど、目立たないやり方がわからない。


「普通に止めるにはどうしたらいいですか?」

「……ふむ」


 リドルカさんは辺りを見回した。

 森から少し外れただけのこの辺には結構木が繁っている。リドルカさんは、その中の街道に枝を張り出すように伸ばした木に登った。もちろん普通に。

 俺はその木のそばまで来て、走ってくる馬を見た。

 爆走する馬。その馬が木のそばを駆け抜けた時、リドルカさんは飛び降りて馬の背に乗った。首にしがみつく女の子の後ろに乗ったリドルカさんは、手綱をとって強く引く。馬はヒヒンと嘶いた。そして走っていた足を緩めて少しづつ速度を落とす。


「すごい……」


 俺がそう言った時、周りから歓声が上がった。俺も思わず拍手する。

 かっこいい! かっこいいよ、リドルカさん!

 リドルカさんは、そのまま手綱を操ってこっちに戻って来て馬から降りた。ついでに女の子を馬から下ろす。女の子はフラフラとしゃがみ込んでしまったけど、リドルカさんはその手に無言で手綱を握らせ何にも言わずに俺の所に歩いて来た。

 

「どうだ?」

「無茶苦茶かっこよかったです!」


 飛びついて言いたかったけど、周りの目が凄すぎるので強く強くそう言うだけにした。本当にかっこいい。

 リドルカさんはちょっと照れたように口元に手をやった。そんな仕草もかっこいい。


「……行くか」

「はいっ」

「ちょっ、ちょっと待って!」


 呼び止められて振り返れば、女の子は荒い息で座り込んだまま俺たちに手を伸ばしていた。


「た、助かり……ゼエ、あり……ゼエ、ハア……」


 そう言った途端、ぱたっと倒れた。

 それを見た周囲は二分した。面倒ごとから逃げるように立ち去る人と、親切そうな顔で女の子に近づく人。……心の中は良い人じゃなさそうだ。

 意識のない年頃の女の子。髪は干した藁みたいな色だけど着ているものは上等だし見た目は美少女だ。馬も真っ白でかなり上等な部類らしい。

 どっちも売ったらお金になるってさ。


「この子、安全なところに連れて行っていいですか?」


 リドルカさんにそう言えば、困った顔になっちゃった。

 けど、こんなところに置いていって悪者に攫われたら助けた意味がないし。パレアーナさんも気を失ったテレシーを保安所に連れてったって言ってたから、あの町のそんな場所へ連れてって預けてこようと思う。

 小さくため息をついた後、リドルカさんは再び馬の手綱を手に取ったので俺は女の子を背負った。

 ついでに、女の子と馬を取り上げようと近づいて来た男たちをすっ転ばせた。



やってみたかったネタ


盗賊だー

泥棒だー

暴れ馬だー


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