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賢者の魔法陣~繋ぐ繋がる異なる縁~  作者: いわな
第一章 運命の人
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第十話


 気がついたら真っ暗だった。


 いつの間にかランプの火が消えている。

 思わず飛び起きて、ひたいに手を当て熱を測ったり怠くなってないか探ってみた。大丈夫だ、風邪はひいてない。

 ベットの上だったし、眠ってながらも無意識に布団に潜り込んでいたみたいだ。よかった。

 家について早々、迷惑かけるところだった。

 

 ホッとしたら、中途半端に目が冴えてしまった。

 どうしようか。


 夜目が効いてきたので部屋の中はそれなりに見える。ベッドを出て、窓に近づき外を見た。

 暗いな。

 真っ暗というほどじゃないけど。田舎の村と変わらない。

 ここは王都の外れだからかな。でも都会ならもっと明るいと思っていた。まあ、日本の都会とは比べるべきじゃないかもだけど。


 隣の離れも灯りが消えている。たぶん、屋敷の方もみんな寝静まっているんだろう。田舎と同じで夜が早いんだろうな。

 いや、田舎でも宵っ張りの若者はいた。

 だから夜中でも油断はできなかった。


 でもここなら……


 カメラを持ってる人なんかいないだろう。そういう技術がないと言い切れないけど、ここでは空を飛ぶのはまず鳥しかいない。大昔の神族は飛んだらしいけど、今の自称子孫は誰一人飛べないそうだ。


 ここなら、飛んでも大丈夫かな?


 俺は、空を飛ぶのが好きだった。

 でも元の世界では飛行機が飛んでるし、なんやかんやレーダーとかもあると聞くし。人気がないと思っても望遠カメラを持って天体観測してる人とか、肝試しに山奥うろうろする奴らもいる。それに、なぜかほとんどの人がカメラ機能のある物を携帯してるから気楽に空を飛ぶことができなかった。

 

 そっと窓を開け放って外の様子を伺う。

 感覚を研ぎ澄まして、視力を上げて周りを探っても誰もいない。

 行けるかな?

 ドキドキしながら窓の桟に足をかける。自分の気配をできる限り抑えて消して、とんっと飛ぶ。即座に加速。目のいい人がうっかり見ても気のせいと思ってもらえるよう、大急ぎでぐんぐんぐんぐん高みまで上がる。


「ははっ 気持ちいい……」


 異世界でも、夜の空に星があるのは旅の間に知っていた。ゆっくり見ている暇はなかったけどね。でも今日は満喫できる。

 足の下の方には小さな星のように明かりがまとまってある。あれで王都か。空の方が大都会のように灯が満天だ。


「月はないのかな。まだ見てないけど、あるといいな」


 なんてことのない独り言を、日本語で呟きながら空に浮かぶ。


 ばーちゃんが見たら怒られるな。

 人に見つかる危険もそうだけど、空の上は寒いんだ。

 また風邪をひくといけないし、今日のところはこれで十分か。


 ……帰るか


 と、思った時。

 とん、と背中が何かにぶつかった。


 ぶつかった?

 何もないはずの、空で?

 心臓がドキンは跳ねあがる。

 俺、何とぶつかった?


 それはまだ、俺の背中に当たっている。

 これは、何?


 ゆっくりと振り向けば、そこにあったのは誰かの背中。

 向こうも振り返って驚いている。


「わっ、わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ‼」


 誰っ!? なんで!? まずい、きっとこれはまずい‼


 距離を取ろうとしたら腕を掴まれた。大きな手、強い力。そして、言う。


「誰だ、おまえは」


 それはこっちのセリフだよーー‼


 さらに暴れて逃げようとしたら、抱え込まれた。ぎゃーー!

 落ち着け落ち着け落ち着け、テレポート!


 瞬間移動で、その腕から抜け出してやっとのこと距離が取れた。

 

「なに?」


 愕然としている、そいつは男だった。

 青味のある長い黒髪に、青い瞳。整った顔立ちで背は高く、体格もがっしりしていて──


「……かっこいい」


 思わず吐息と共に声が出た。日本語だったため、相手は訝しむように顔をしかめる。そしてその目は警戒の色が濃く、俺を睨み据えている。


 うわぁ、うわぁ、なんかかっこいい人だ

 ヒーローものの特撮とかアニメとかの、影のある悪役みたい。それで、後で主人公の仲間になるやつ。黒髪で、全身黒い服とかそれっぽい!


 俺がポーッと見惚れていたら、男はぐんっと動いて手を伸ばす。

 捕まる寸前、テレポート。

 後ろを取ったら即座に振り向いて、ギリっと歯噛みして睨まれる。


 その瞬間、ヒヤリと寒気を感じた。


 空ゆえの寒さじゃない。

 よく見れば、男の周りに青光りする黒いモヤみたいなのが浮かんで見えた。

 少し前に聞いた話を、思い出す。


『禍々しい力を放つ黒い……』


「魔王石……魔王?」


 じーさん先生に聞いて覚えた言葉が、そのまま出てしまった。

 男は「ほう……」と呟き、凶悪な顔で──笑う。


 その瞬間、男から溢れ出た黒いモヤがロープのように全身にまとわりついて来た。俺のこと捕まえようとしているのがわかって、とっさにまた跳ぶ。


「ちっ!」


 舌打ちした男は、黒い闇のようなものを手に集めた。それは剣の形となる。


 ふえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!


 殺される‼

 そう思った俺は、能力全開で下に向かってテレポートした。遠くに跳びたいけど遠見で確認してる余裕はないから、とにかく見える範囲の安全な空間に連続でジグザグに跳び、なんとかあいつの目に止まらないようにして地上に降りた。

 降りた先はじーさん先生の家。開きっぱなしの窓に飛び込み即座に締める。

 窓際から飛び退いてベッドに潜り込み、頭から布団をかぶった。


 追ってきませんように追ってきませんように追ってきませんようにぃぃぃ!


 そのまま、まんじりともせず気がついたら朝になっていた。


 どうしよう……魔王様に会っちゃったよ。


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