表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ぼくらの森  作者: ivi
第二章 ―目覚め―
73/122

第73話 兄弟騎士

 ヴェルーカとじゃれ合うニックを眺めていると、いつもの声が聞こえた。


 「おおっ?ニック!」


 ふり返ると、厩舎の方からケリーが歩いて来るところだった。どうやら、ケリーとニックは知り合いのようだ。


 「あ、ケリーさん!すみません、お邪魔しています」


 ケリーはセロとニックを物珍しそうに見つめている。


 「へえ!もう新しい友達ができたんだな。まさか、セロがニックと仲良くなるとは思ってなかったぜ」


 ケリーはニックを紹介した。


 「ほら、前に話しただろ?オレにサンドイッチを持って来てくれたり、作業を手伝ってくれる後輩がいるって。その後輩っていうのが、ニックなんだ」


 「そうだったのか」


 「そうそう。オレの代わりに騎乗してくれるおかげで、本当に助かってるんだ。けどさ、ニック。あんまり無理するなよ?最近は特に忙しそうにしてるし、何かあったら、すぐ言ってくれよな!」


 「ありがとうございます、ケリーさん」


 ニックの肩に腕を回して、ケリーは誇らしげに胸を張る。


 「こう見えて、ニックは白馬の王子様なんだぜ?グレイに負けないくらい、いい馬に乗ってるんだ!」


 「えっ、ちょっと……ケリーさん!」


 ニックは恥ずかしそうに頬を赤らめた。


 「ボクは王子なんかじゃないですよ!それと、ボクの馬は白毛じゃなくて芦毛です!」


 「はははっ!じゃあ、ニックは芦毛の王子様だな!」


 「ええっ!どうして、そうなるんですか!それに、芦毛だとちょっと聞こえが悪くなるじゃないですか」


 先輩騎士のおふざけに、ニックは困った顔をしている。


 セロは当たり障りのない言葉で助け舟を出した。


 「ケリーがいつも世話になっているみたいだな。彼を支えてくれて、ありがとう」


 セロが礼を述べると、ニックは首と両手をブンブンと激しくふった。彼の大げさな動作が、セロの目に幼く映る。


 「えっ、いえ、そんな!助けていただいているのは、ボクの方なんです!ボクが困っているときに声をかけてもらったり、解決策を提案してくださったり。ケリーさんがいなければ、乗り越えられなかったことは沢山ありますよ!」


 ケリーは満面の笑みで、後輩の肩を揺さぶった。


 「おまえってやつは、本当に素直でいい子だな!」


 二人は同じ班に所属しているのではないかと思うほど、心から打ち解けている。


 そんな彼らを見守っていると、ヴェルーカがセロの背中を鼻で小突いた。


 ヴェルーカは何か言いたそうに、じいっとセロを見つめている。


 「ああ、早く帰りたいんだな。すぐに手入れを終わらせるから、もう少し待ってくれ」


 セロがタオルを手に取ると、ヴェルーカは制服の裾を噛んで、グイッと強く引っ張った。力任せな馬の悪戯に体勢を崩されながらも、セロは馬の口から裾を離させる。


 放っておけば、制服を破られそうだ。


 「ヴェルーカ、お遊びはあとにしてくれ」


 ヴェルーカはちらりとセロを見て、すぐにまたちょっかいを出し始める。セロは馬の口を軽くいなしながら、タオルで牛柄の顔を拭いた。


 「しつこいな……どうしたんだ?」


 セロの問いに答えるかのように、ヴェルーカは耳をピンッと前に向けて大人しくなった。視線を追ったセロは、馬の言いたいことがわかった気がした。


 少し離れた場所で、ケリーとニックが肩を並べて立っている。馬に乗る騎士たちを眺める彼らは、まるで兄弟みたいだ。


 二人の穏やかな後ろ姿に、セロはふっと優しい笑みを漏らす。


 「もしかして……嬉しいのか?」


 セロが問うと、ヴェルーカはブルルッと鼻を鳴らした。


 これまでは「偶然」の一言で片付けていたが、きっとそうじゃない。ヴェルーカには、セロの言葉も心もすべてお見通しなのだ。


 「そうか。実は、僕も嬉しいんだ」


 遠征で一人ぼっちになってしまったケリーが、ニックという新しい仲間を見つけられたことに、セロは心の底から安堵していた。


 高く晴れ渡った青空の下。


 午後の暖かい日差しのなかで、セロとヴェルーカは二人の騎士を見守っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ