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ぼくらの森  作者: ivi
第二章 ―目覚め―
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第59話 親友の名案

 「セロさーん!おもしろい紙が貼ってありますよーっ!」


 午前の訓練終わり。竜舎の通路を歩いていると、タークが壁に貼られた紙に気がついた。


 今朝から学生が騒がしかったのだが、その原因はこの貼り紙にあったようだ。


 セロは構わず歩き続けながらタークに問うた。彼が歩くたびに、腰に抱えた鞍が揺れて、鐙がチラチラと光を反射している。


 「ターク、そういうことはやるべきことが終わってからにしないと。また、作業が終わらないって泣くことになるぞ」


 「あとはチャアの寝床掃除と、道具のお手入れだけなので大丈夫ですよ!それより、セロさん!ぼく、これに参加してみたいんですけど、いいですか?」


 暑苦しい鎧を着たまま、タークは紙を指差している。


 まったく……あとで『作業が終わらないんですーっ!』って嘆くことになっても知らないからな。


 タークは張り紙の前から離れようとしない。セロは仕方なく戻ることにした。


 「……騎士団のお手伝い募集?」


 「騎士さんたちが人手不足で困ってるみたいですね。ドラゴン乗りのぼくたちと親睦を深めるためにも、作業を手伝ってくれる人を集めているそうですよ。なんだか楽しそうじゃないですか?」


 「タークはチャチャのことで精一杯だろう。手伝いもいいが、自分のことが疎かになったら本末転倒だ。騎士の手伝いは、もう少し余裕ができてからにしよう」


 「ええ!それじゃあぼくは、いつまで経ってもお手伝いに行けないじゃないですか!」


 「ああ、そうだ。今のままでは、タークを騎士団に送ることはできない。それに……」


 タークに歩み寄ると、セロは両手を前に出すよう言った。タークは不思議そうな顔をしながら、言われた通りに前ならえをする。


 セロはさっと鞍を持ち上げて、タークの腕上で手を離す。タークは落ちてきた鞍の重さでバランスを崩して、慌てた声を出した。


 「ドラゴンの鞍は、馬の鞍よりずっと軽いんだ。たとえ鎧を着ていたとしても、一人で持てないなら、手伝いに行っても足手まといになるだけだ。……違うか?」


 タークは頬をふくらませた。その様子を見る限り、今のままではいけないと自分でもわかっているようだ。


 踵を返すセロに続いて、タークも歩き出す。重たい鎧を着て鞍を抱えるタークの息は、数歩進んだだけでも乱れ始めていた。


 鞍や頭絡などの道具を片付ける倉庫は、竜舎の出入り口のすぐ隣にある。ようやく物置までたどり着くと、タークは埃臭い部屋に入って踏み台を運び始めた。


 先に鎧を脱いで来た方がよかったかな。


 セロがそんなことを思いながら、部屋の入り口で待っていたときだ。


 「あの……セロ・オルティスさんで、お間違いないでしょうか?」


 突然、囁き声で名前を呼ばれたセロは、驚いてふり返った。


 声を潜めている様子からして、相手は不用意に他言できない目的があってここに来た……そんな感じがする。


 セロの背後には、見慣れない少年が姿勢を正して立っていた。


 「はい、そうです」


 「突然、お声がけして申し訳ございません。単刀直入に申し上げます。……学長がお呼びです」


 少年の一言で、セロはすべてを理解した。


 答える前に、タークに目を向ける。彼は踏み台に乗って、壁に打ち付けられた木の支柱に鞍を掛けているところだ。


 タークが会話に気づいた様子はない。


 「わかりました。すぐに向かいます」


 礼儀正しくお辞儀をして、少年は静かに立ち去る。セロが見送っていると、鞍を片付け終えたタークがやって来た。


 「鎧を外したら、チャアの寝床掃除をしますね。セロさんは、もう作業おわったんですか?」


 「ああ、僕の作業は終わっているよ。あとは夕方の飼付けだけだ。……ターク、すまないが、用事ができてしまったんだ。しばらく一人になるが、大丈夫そうか?」


 突然の話に、タークは驚いたようだ。


 「えっ、そうなんですか!ぼくは大丈夫ですが……何か頼まれたんですか?」


 「まあ、そんなところだ。もし、夕方になっても僕が戻って来なかったら、先に部屋に戻って休んでいてくれ」


 「わかりました。でも、セロさんが急用で抜けるなんて、なんだか珍しいですね」


 「タークもそのうちわかる……色々とあるんだ」


 セロはそう言い残すと、きょとんと小首を傾げるタークに背を向けた。

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