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ぼくらの森  作者: ivi
第二章 ―目覚め―
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第45話 謎の人物

 セロは廊下の角を曲がると、最後の階段を急いで登る。


 まったく……ルディアと関わると、いつもろくなことがない。オルティスと呼ばないでくれと何度頼んでも、一向に聞き入れる気配がないのだ。


 ルディアがタークのそばにいるときは、気が気じゃない。


 タークにだけは、オルティスの名を知られたくない。


 そう願うセロの気持ちを知っているからか、ルディアは彼が焦る様子を見て、面白がっているようにも見える。


 本当に勘弁してくれないものか。タークに名前を知られていないのは、半ば奇跡のようなものなのに……。


 そんな考え事をしているうちに、セロはいつの間にか階段を登り終えていた。階段の先には、まだ廊下が続いているようだが、セロが目指している大広間は階段を登ってすぐの右隣に位置している。


 騎士の学舎に来るのは初めてだが、構造はドラゴン乗りの学舎とほとんど同じだ。騎士の大広間へたどり着くことができたセロは、ようやく息をつくことができた。


 廊下を少し進むと、すぐに大きな二枚扉へ突き当たる。そこには疲れた様子で扉にもたれる二人の少年がいたが、彼らはセロに気がつくと素早く姿勢を正した。


 「お名前と所属を……」


 一人の少年が、懐からメモを取り出した。


 「三年のドラゴン乗り所属、セロです」


 「ありがとうございます。では、面会したい方のお名前と所属をお願いします」


 「ケリー・トナーズ……三年の騎士です」


 少年はペンを走らせて何かを書き終えると、今度は折り目の付いたリストを取り出した。ケリーの名前を探しているのだろう。間違いがなければ、彼はここにいるはずだ。


 「ええと……はい、トナーズさんですね。ご本人に面会可能かどうか確認して来ますので、ここでお待ち下さい」


 よかった……間違いなかったようだ。


 少年が行ってしまうと、残されたもう一人が扉の前に歩み寄った。『不潔な服装での入室を固く禁じる』という注意書きが貼られた扉を背に、少年は慣れた様子で直立不動の姿勢を取っている。


 そうか、こうして交互に面会者を案内しているのか。この二人だけで面会者の対応をしている訳ではないと思うが、初日の今日は大忙しだっただろう。


 少年が着ている制服の丈は短く、上着にベルトを巻いていない。制服に刺繍されたドラゴンの紋章はドラゴン乗り、騎士ともに共通で、少年の紋章には翼が一つ。


 四年生以上の学生は紋章の変化はなくなるが、それ以下の学年は最初から縫われたドラゴンの首と、一年ごとに刺繍される翼の数を数える。


 つまり、この少年は二年生の騎士ということになる。


 大抵の場合、急な人手が必要になったときは、下級生が割り振られる。ある程度の経験を積み、単独行動が可能になる二年生がよく駆り出されるのだ。セロも三年生になる前は、数々の雑用をこなしていた後輩の一人だった。


 無言の時間をごまかすために、普段なら気にしないことをぼんやりと考えていた。しかし、どれほどつまらない思考を頭の中で転がしていても、いつかは限界が来る。


 知らない騎士とともに待機する時間が、苦痛に変わろうとしていたとき。さっきの少年が静かに戻って来た。


 「お待たせしました」


 少年は扉を閉めて、一呼吸おいてから話し始める。


 「トナーズさんも面会を望んでいるとのことなので、お通しします。トナーズさんは部屋の一番奥側、窓際の列にいらっしゃいますが……ご案内しましょうか?」


 「いえ、僕一人で大丈夫です。ありがとう」


 セロが答えると、少年はドアノブに手をかけた。


 部屋へ入ろうとした瞬間。


 部屋を出ようとしていた人たちに、セロは危うくぶつかりそうになった。


 「すみません……!」


 慌てて飛び退いたセロの様子に、二人の少年も状況を理解したらしい。彼らが廊下の端に寄って道を開けると、白いローブを身にまとった人物が、複数人の学生に囲まれて部屋から出て来た。


 半透明の白い布を頭に被っているせいで、顔はよく見えないが、薄い布に透ける黄色い瞳がセロを見つめていた。


 「……気を付けろ」


 取り巻きの学生の一人が短く注意すると、白いローブの人は小さく笑って階段を降りて行った。


 あんなに厳重な見張りがつくなんて……あの人は一体、何者なんだろう。


 セロが誰もいなくなった階段に釘付けになっていると、背後から少年が声をかけてきた。


 「あの……確認せずに扉を開けてしまって、ごめんなさい。大丈夫ですか?」


 「あ、ああ……平気だ。こちらこそ、すまなかった」


 少年たちも、あの人物の正体が気になるのだろう。彼らはセロと話しながらも、チラチラと階段へ視線を向けていた。


 友達を待たせてはいけない。セロは扉の向こうに目を配ると、大広間へ足を踏み入れた。

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