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ぼくらの森  作者: ivi
第一章 ―はじまり―
31/122

第31話 約束の日

 耳を塞ぎたくなるほどの大歓声と、腹にこだまする太鼓の音。


 セロは人混みから少し離れたところで、だんだんと近づいて来る青い旗を眺めていた。


 ついさっきまで、タークがそばにいたはずなのだが、いつの間にかはぐれてしまったらしい。


 ここは戦場ではないから、心配いらないだろう。タークはきっと、一人でパレードを楽しんでいるはずだ。


 今のセロにとっては、タークを探すよりも、別のもう一人を見つける方が重要だった。


 「まったく……。こんな人混みの中で、どうやって君を見つけろと言うんだ、ケリー?」


 早くも人の波に酔ってしまったのか、目眩がする。セロは目頭を押さえて、ぎゅっと目をつむった。


 昔から、人が集まる場所は好きではない。ましてや、こんなお祭り騒ぎの場所に来るなんて……。


 普段のセロなら、人混みには近寄らなかっただろう。だが、苦手を言い訳にして、友達との約束を破るなんて絶対にできなかった。


 ケリーと交わした『出陣のパレードのときに笑顔で見送る』約束。


 セロは今日まで、約束を片時も忘れずにいた。


 いや、忘れられるはずがなかった。


 なぜなら、セロはあの日から一度もケリーに会っていないからだ。


 遠征に向けた強化訓練が始まると、ケリーはすっかり遊びに来なくなった。


 騎士の訓練場まで行かなくとも、その多忙ぶりは遠征軍に選ばれたドラゴン乗りたちを見ていれば十分にわかった。


 夜明け前から日が沈むまで。彼らは毎日、あちこちを奔走していた。通常の訓練に加えて、学舎外での実地訓練。何度も念入りに開かれる作戦会議。


 学舎に張り詰める緊張の糸は、日に日に強くなっていった。


 ろくに食事も取らず、一日が終わる頃には泥のように眠る。宿舎の外で寝入ってしまった者たちを、セロは何人も見てきた。


 そんな疲弊した学生たちを見ているうちに、セロはいつしか、ケリーを訪ねることに気が進まなくなっていった。


 もしかすると、馬に乗って森を疾走する訓練は、ケリーにとってはご褒美だったかも知れないが。


 森を駆けるグレイスターを想像すると同時に、かつての自分を馬に乗せて、学舎の外へ連れ出してくれたクウェイの姿が蘇る。


 『内緒だよ。』と声を潜めて言う、クウェイのわくわくした顔。


 無意識のうちに、セロは昨日のことを思い出していた。


 まさか……出陣前に彼と会うなんて。夢にも思っていなかった。

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