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ぼくらの森  作者: ivi
第四章 ―出会い―
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第118話 夜寒

 セロの腕に抱かれたスノーは、かろうじて意識を保っている状態だった。


 「すぐに手当するからな。遅くなってすまなかった」


 「大丈夫、だよ……ありがとう」


 介抱するセロの背後では、ダイが指笛を鳴らして馬たちを集めていた。そばで待機していたのか、数秒で駆けて来る足音が聞こえ始めた。


 ダイの馬に積んだサドルバッグには、包帯が入っている。だが、傷口を洗う水はどこかで汲んで来ないといけない。


 「ケガしてるの……?」


 小さな声に訊ねられてセロが顔を上げると、目の前に少年が立っていた。


 少年はスノーの服が血に濡れているのを見るや否や、さっと青ざめた。


 「ケガしてる……!」


 少年はセロの答えも持たずに、少女のもとへ駆けて行った。彼は何か必死に訴えては、少女に首を横に振られている。


 二人の子どものやり取りを眺めていると、ダイがやって来た。


 「押さえてはいたから、血は止まってると思うが……」


 ダイが慣れた手付きで手当てを始めると、セロはまた子どもたちへ意識を向けた。


 耳を澄ませると、少年の懇願する声が聞こえてくる。


 「メーノ、あの人ケガしてる!助けてあげようよ!」


 少女は表情を変えずに首を横にふる。


 「どうして?あの人、とても痛そうだったよ?……あっ、そうだ!ケガが治る草を探して来ようよ!ぼくがケガしたとき、いつも見つけて来てくれるでしょ?」


 少女はまた首を横にふる。


 「ええーっ!どうして、そんな意地悪するの?今日のメーノ、なんだか変だよ?」


 なかなか頷かない少女に対して、意地になったのか、少年はふいっとそっぽを向いた。


 「ふんっ!いいもん!ぼくはお手伝いするから」


 頬を膨らませた少年は、セロたちの前にやって来ると、おずおずと口を開いた。


 「えっと……何か、ぼくにできることない?」


 ダイは少年の変わりように驚いた顔をしたが、すぐに意地悪く笑った。


 「へえー、助けてくれるのか?そんじゃあ、ちょっと手伝ってもらおうか……あーっと、でも、泣き虫坊主にできることは――」


 「この辺りに川はないか?」


 セロは大人気なくからかうダイを遮った。


 「あっちに小さい川があるよ!」


 少年は、焚き火の向こうを指さす。

 

 「ここから近いか?」


 「うん」


 セロは少年に礼を述べた。


 「教えてくれて、ありがとう。とても助かるよ」


 「ぼく、案内する!」


 「君は、お友達と一緒にいる方がいいと思うが……?」


 セロが少年の背後に視線を移すと、そこにいたはずの少女は、いつの間にかいなくなっていた。


 「あの子は、どこに行ったんだ?」


 「えっ?」


 少年は不安そうな顔できょろきょろしていたが、やがて明るく笑った。


 「たぶん、ケガが治る草を探しに行ってくれたんだ。メーノ、怖いけど優しいから」


 少女は少年の提案を受け入れたのだろうか。それにしても、この子たちは一体どういう関係なのだろう。


 「そうか……すまないな」


 セロは地面に転がっていた自身の剣を拾い上げて、ダイの馬に近づいた。三頭の中で最も体格の大きいハクベニーは、持ち前の力を活かして荷物を運んでくれている。


 鞍の両側に下げたサドルバッグから、ブリキのバケツとランタンを取り出して、セロは夜の森へ向かう準備を整えた。


 「水を汲むついでに、馬たちに水を飲ませてくる」


 「おう、頼んだ」


 小川へ向かうセロを見送ることもせず、ダイは少年にたずねた。


 「なあ、おまえの名前は何て言うんだ?」


 「ぼくは、ジン。ジン・ナシュー」


 「へえ、いい名前だな!なあ、ジン。もし、俺たちが焚き火を貸してほしいって言ったら泣くか?」


 「えっ、泣かないよ?」


 「おお、そうか?じゃあ、ありがたく暖を取らせてもらうぜ。すっかり冷えてきやがった」

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