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ぼくらの森  作者: ivi
第四章 ―出会い―
116/122

第116話 少年と少女

 馬たちはどこからともなく現れた人影に驚いて、ジタバタと足を踏み鳴らす。


 しかし、ダイは動じる素振りを一切見せず、剣の柄から手を離すと影に話しかけた。


 「おまえ、まだ子どもだろ?こんなところで何してんだ?」


 セロは目を見開いた。


 逆光になっていて見えにくいが、その人影は随分と小さかった。


 一人なのか?


 親はどうしたのか?


 セロの頭に浮かんだ疑問は、次の瞬間、パッと弾け飛んだ。


 無言で佇む少年の手には、小さなナイフが握りしめられていた。恐怖のせいか、武者震いか……身を震わせる少年が正気を失っているのは、火を見るより明らかだ。


 「おいおい、落ち着けよ。俺たちは敵じゃないぜ?だいたい、そんな危ないもの持っちゃいけませんって、お母ちゃんに教わらなかったのか?ほら、ケガする前にポイしな――」


 「うわあああーっ!」


 ダイの説得も虚しく、少年は叫びながら跳びかかってきた。


 ダイが手綱を離したのを合図に、三頭の馬は夜の森へ姿を消した。馬たちの足音が聞こえなくなるより早く、少年の手から弾かれたナイフが地面を転がった。


 ダイが子ども相手に手こずることはないと、わかってはいたが。こんなにも簡単に押さえ込まれているのを見ると、なんだか少年が気の毒に思えてしまう。


 「ダイ、待て。相手はまだ子どもだ」


 セロはダイを止めてみたが、意味はなかった。


 「わかってる!」


 ダイに抱えられた少年は手足をふり回して暴れ、大声で助けを求めている。まずい……これではまた、ブラッドウルフが寄って来そうだ。


 「メーノッ!助けて!メ――うぐっ!」


 とうとう口も塞がれてしまった少年は、涙に濡れた目を白黒させている。力持ちのダイからすれば、ひ弱な子ども一人を抑え込むなんて朝飯前だろう。


 「うるせえなあ。ちっとは大人しくできないのか?わかったから、落ち着けって。静かにしてくれたら離してやるから、な?俺たちは、敵じゃないんだって」


 「うぐ!うぐぐぐぐーっ!」


 少年が落ち着くには、まだまだ時間がかかりそうだ。


 さて、どうしたものか……。


 一刻も早くスノーの手当てをしたいところだが、こんな状況では、そうもいかない。


 セロは仕方なく転がったナイフを回収しようとしたが、そこにあったはずのナイフは、どこにも見当たらなかった。


 『ナイフはどこだ……?』


 嫌な予感がした、そのとき。


 セロの背中にドンッと強い衝撃が走った。体が地面に投げ出される前に、かろうじて受け身は取ったが、背後をふり返ったときには、スノーの重みが消えていた。


 「しまったっ!」


 無抵抗のスノーは、何者かによって闇へ引きずり込まれていく。しかし、スノーを攫った者は逃げられないと判断したのか、いくらも進まないうちに立ち止まった。


 木々の隙間から漏れる焚き火の明かりが、少女の姿を晒し出す。


 こげ茶色のフードマントを身にまとった少女が、追って来たセロを鋭く睨みつけている。


 セロが近づくと、少女はスノーの首筋にナイフを突きつけた。

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