3-1 次男デオル
セインは腕を組んでゆらの話を聞いていたが、ノックの音で顔を上げた。部屋の主がまだ寝ていると思ったのか、返事をするまでもなくその扉が開く。
「おや、気が付いていたのか……」
起き上がっているセインに気が付いた青年は、けれど、すぐに小さく笑った。ベッドの上で正座をしているセインの姿が、ちょっと滑稽に映ったようだ。
「もう身体は平気なのか? 君は二日間眠ったままだったんだよ」
彼は、ロルシー家の次男で名をデオル。正夫人の長男であり、この鉱山都市を任されて二年になる。物腰の柔らかな話し方で、髪の色は明るい黄金色だが、体術や攻撃系の術よりも守護結界や癒し、穢れ払いを得意としており、幼い頃は長女のフロンとともに、帝都へよく赴いていたらしい。
フロンと同様ストレートの髪で、肩に届かない程度のところで切りそろえられていた。長男と違って、どちらかというと母親似で、上品な立ち居振る舞いである。
「ん? 二日……? え、ってことはあれから二日経ってたのか、うわぁ」
ゆらが怒るはずだ。そんなふうにぶっ倒れるとは、セインは自分の不甲斐ない身体を少し甘く見ていたようだ。思った以上に無茶ができないスペックらしい。
だいたいの無茶が通ってしまった前世とは大違いである。
『……ご自重くださいませ』
ぽつりと独り言のように呟いたゆらに、思わず「すみません」と頭を下げる。いきなり謝ったセインに、デオルは不思議そうに首を傾げたので、ごまかすように言葉を続けた。
「こんな形での訪問となってしまい、すみません兄上」
「いやいや、礼を言うのはこちらの方だよ。なにしろ、鉱山都市近郊の街道はうちの管轄でね。それこそ穢れ者でも出したら大問題だったんだ」
街道の保全のために、定期的にハンターに依頼を出して、街道の整備、魔物の駆除を行っているらしい。
その対価として、都市に入る時には通行税がかかるのだ。
「今回は、商人が連れてきた奴隷の暴走だったわけだけど、それにしたって大量のオーク襲撃が原因だったわけだしね」
デオルはそう言って肩を竦めたが、どこまでいっても商人の死は自業自得なわけで、誰も責任を問われることはなかったそうだ。
「そうだ、この指輪」
あの商会がどうなろうが、もう知ったことではないが、この指輪のことは聞いておかなければならない。
「ああ、それか。それを盗もうとした男は、契約反故の疑いで拘束されたが、奴隷の方はとりあえずハンターギルドに併設されている療養所へ運ばれたようだよ」
所有権を放棄され、一旦はセイン預かりになったものの、なんの確認も検査もなく、ロルシー家の屋敷に入れるわけにはいかなかったらしい。
――まあ、当然の判断だね。さてどうしたものか。
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