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クソガキ絵師VTuberと胃痛スタッフ

《最近入った新鳩なんですが、どうしててと様は◯NE PIECEネタを多く使うんですか?》

《ピロピロヒロリン♪︎それはね、てと様が漫画やアニメをワ◯ピ以外知らない、壊滅的な知識不足だからだよ》

《ラノベは知ってるのに…》

《何でだろうね、涼宮ハ◯ヒの憂鬱とか転◯ラとかは分かるのに、らき◯すたや五◯分が分からない》

《何でだろうね、M4カービン(銃)とか10(ひとまる)式戦車とかは分かるのに、銀◯や◯滅が分からない》

《何でだろうね、スカイラインGT-R(車)とかゆふいんの森(電車)とかは分かるのに、NARUT◯やニセ◯イが分からない》

《何でだろうね、特撮やネットミームは分かるのに、プリキュアやガンダムは分からない》

「で、何で遅れたんですか?」

『あの受付さんに本人確認の為に絵を描いてほしいって。ぐすんっ。あの人、自分が鳩って言ってたし、越権行為だよね?ぐすんっ。チラッ』


 この人はCOOKINGのちょっと偉いスタッフさん(男)。ぼくが遅れたことで特に何か影響が有った訳ではないらしいけど、ぼくが高校生で、遅刻したことに何とも思ってなさそうな態度に怒っているらしい。因みにぼくは一滴も涙は流れていない。ぼくの迫真過ぎるリアルな演技にリスナーは騙される(リスナー「ああ、はいはい。いつものね。クレカ残ってたかな…」)。受付さんはぼくを案内してすぐ持ち場に戻った。


「一応、嘘ではないよ。ウチ見てたもん。まあ、それがなくても5分遅刻だったけどね。あと、あんた嘘泣き止めて。あざとすぎて砂糖吐きそう」

「貴女は早く来てください」

「良いの?壁の落書き見に行かなくて?」

「壁の…落書き…?」

「お前だろ!遅れてきて何やってんだよ!」

「呆れた。そんなことしてたの?」

「そんなことをしてきたのですか?」


 おーおー好き勝手言いなさる...!!スタッフさんは早歩きで入口の方に向かった。こんな状況でも走らないのは流石社会人って感じだね。


『今のうちに帰ろうかな…』

「あんた、入口の横に描いてたじゃん(呆れ)」


 見える。ぼくには見える。今のセリフ、最後に「(呆れ)」が入ってた!!


「でも、あの絵はヤバかったなぁ。消されちゃうかもしれないのが残念…」

「お前がそんなに言う程かぁ」

『描いた感覚としては、いつもの絵の後に連打ゲーを疲れるまでしたくらいの感覚だから消されても文句はないけどね。損失は右手が疲れたのと受付さんの新品マジックのインクが無くなったくらいだからなぁ』

「ところで、てとは本当に男なのか?実際に見た上で疑問なんだが。俺燃えない?」

『今は仕事モードだから地声より高くしてるけど、日常生活だとあまり声自体出さないから、最近はこっちの声の方が使ってる気がするなぁ』

「あ?ああ、声か。声もそうだが、見た目の話だ。もともと小さいのもあるんだろうが…。140か50とかか?」

「話す機会が無い=ボッチ=仲間?」

『違いますから!KOMUGIとは違ってボッチじゃないから!ただずっと絵を描いてるだけだから!一緒にされるとか心外なんですけどぉ』

「生意気っ」

『獺祭も女服くらい持ってるでしょ?』

「少しなら持ってるが、メイド服とかチャイナ服とかセーラー服とか、特殊な造りの奴だけで、お前のみたいな普通の私服みたいなのは無いぞ」

『な、なんですとー!!』

「それ、最近の流行よね?貴方って本当に情報通なのね」

「私もそのバッグを買いたかったのですが、少し高くて…」

『お金はありますから!』


 ぼくはお金を集めるのは好きだ。あくまで集めるのが好きなだけ。使うのは全く躊躇わない。寧ろ一生贅沢して暮らしていけるように集めている。貯める(・・・)じゃなくて集める(・・・)って表現なのは残りを気にせず、使いたいだけ使ってるから。そんなことを話していたらスタッフさんがやって来て、「あれ、代金ってどのくらいになりますか?」って訊いてきた。流石のぼくでも、勝手に落書きしてお金を取るなんて詐欺みたいなことは出来ない。


「あとは、壁用の特殊なペンで綺麗に上からなぞる必要があるな」

「ウチは嫌だよ、あんなのなぞるの」

「お前は褒めたり、貶したり。どんな絵なんだ。時間のわりには描けてたってくらいなのか?」

「ウチがあれを一から描こうとしたら六日は掛かる。なぞるだけでも三,四日は掛かるかな」

「なんてもんをどんな速さで描いてんだ!」


 点の部分だけならなぞる方が時間が掛かる気がする。




 なんやかんやでバラバラに控え室に通されて、収録までの間大人しく待ってろってさ。


「暇だなぁ~」


 タブレットを開き、数千のツイートに返信をしていく。これが来る限り自分はみんなに求められてるんだって感じる。治安は悪いが民度は良い。コラボが終わった相手のコメント欄に最後に「他のてとリスが失礼しました。」と一文添えるのが最近流行っているらしい。自分のことを棚に上げる姿勢はぼくのリスナーなんだなぁと感じる。


「何でここに居るんだろうなぁ」


 VTuberを始める前はイラストレーター。イラストレーターを始める前は小学生。pixivに載せて、コメントが来た。絵は中学生も出るコンテストで佳作を取るくらいだ。今のぼくからしたら爪が甘いが、小学生にしては描けている方だと思う。漫画ならこれくらいの画力のものなんていくらでもある。pixivに初めて来たコメントがこれ、『シンプルに下手w』。これが悔しくてひたすらに絵を描きまくった。小学生低学年からの夢、「楽して暮らす」が絵を描くことで叶えられるのでは!?…と思ったのは小学校を卒業する頃だ。中学生になった頃にはpixivでのプレミアム化、Twitterでの仕事の募集を始めた。高校生でVデビュー。思えば怒涛の勢いでここまで来たなぁ。人気が出たのはいつだったかなぁ。どっかのボカロPがぼくにサムネを何回か依頼して、その内の一曲がヒットしてからかな?長期契約しないかって言われたけど、断ったんだよねぇ…。相手の財布が心配で。これまでの道をちょっとずつ振り返ってみると…、ぼく、全然VTuberしてなくね?絵を描いてるだけで、コラボ以外ではゲームとかもしないし。絵を描いてるだけだから表情とかもそんなに変わらないだろうし(と本人は思っている)。目はタブレットとコメントを行き来して、ずっとキョロキョロしてるだけだし(鳩目線は親を捜す迷子の様)。そんなモデルを傍らに置いて、配信画面は絵を描くだけ(雑談だけで見ても需要はある)。


みんな(リスナー達)にはちゃんと恩返ししたいなぁ…」




 ここ、COOKING社は一般にはVTuber企業として広く知られているだろう。だが裏では食品の物流を裏で支える、表に出ない暗躍企業だ。取引で来たのだが、社会人として遅刻してはいけないという気持ちが強く出すぎてしまったのか、少々早く着いてしまった。初めて入ったが、白を基調とした内装なのに汚れが無く、清潔感がある。企業としての目指すべき完成形なのだろうとすら思わせる。そんなことを頭の中で考えていると、中学生くらいの女の子がエントランスのど真ん中を堂々と歩き、受付に向かった。ただの一一般人になぜそんなに注目してるのかって?私はロリコンなどでは断じてない。彼女には何かオーラがあるのだ。私以外の人もチラチラ見ているようだ。なんなら、目の前、向かいに座っている女性なんてガン見している。この謎の少女の正体、考えられる選択肢は、迷子、職員のご子息、客。最後は無いとして、凄いオーラだ。有名な子役と言われても驚かない。少女が走り出したので、目で追っていると、向かいの女性と目が合った。私は苦笑を浮かべて、入口を見遣る。ところで、女性は私が入ったときから居るのだが何をしているのだろうか。そこで、私は呼ばれてしまった。少女の正体が気になり、名残惜しいながらも、少女を一瞥すると入口の横で腰に手を当て、仁王立ちする姿が映った。

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