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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

サイレントキラー

作者: まい

 現実の現代じゃあ起こりませんが、本当にどこかがどうにかなってたら、あり得たかも。

 サイレントキラー。


 それは現代では、生活習慣病を始めとした自覚症状の無い病気で、気が付いたときには命すら(あや)ぶまれる状態になっている様な危険な病気の(たぐい)である。




〜〜〜〜〜〜




 であるが、異世界では違った。


 この異世界の亜熱帯気候の地域では、子供でも安全に歩けるはずの草原や森で、目立った外傷も争った形跡も無いのにヒトや魔物を問わず遺体が見つかることである。


 毒を持った虫や植物にやられたようなのももちろん居るが、そんな明確な症状で命を奪われたように見えない、遺体をだ。





 この現象は大昔からあった。


 安全が確保されているはずの地域で、騎士団による見回りと魔物等の害あるモノ達が討伐されて安全が確認された直後であっても、そうして遺体が見つかったりする。


 いや、むしろそんなタイミングでこそ多発していた。


 そして騎士団の見回りが終わってしばらく立つと、なぜかヒトより魔物の遺体がその森に多く転がっていたりする。


 それで得られた魔物素材を行商人へ売りつけることが、安全な森等の近くに住むモノ達の大切な収入源となっていた。


 なぜそうやって遺体か見つかるのかの原因の究明は、その大昔からずっと行われているが、全く解明出来ていない。


 (ゆえ)静かな殺し屋(サイレントキラー)と呼ばれている。


 大昔から格言として『安全な場所だからこそ気を付けろ。 サイレントキラーが狙っているぞ』こう伝わっているのが、何よりの証拠だ。








 ある日。


 安全な森が近くにある村のとある家族が、ご近所へ行き先を告げて、その安全な森の中に来ていた。


 目的は森の果物探し。


 ついでに薪になる枝や薬草、食べられる野生の野菜、そして魔物の遺体等も見つけられたらいいなと、レジャー気分で森へ入ったのだ。


 もちろん油断はせずに森で迷って遭難(そうなん)した時に備えて、数日分の食料等を持った状態でだが。





 森の探索で家族は大儲(おおもう)けが確定した。


 (まれ)に他の村人が見つけ、行商人が笑顔で大金をくれる魔物の遺体を見つけたからだ。


 重さは成人なら男女問わず、1人で持ち帰れる程度の魔物。


 それが恐ろしくキレイな形で落ちていたのだ。


 こんなのラッキーに違いない。 自分たちの幸運に酔いしれ、今日一日はなんだって上手く行くだろうと、浮かれる程に。


 大喜びした家族だが、ふと頭上を見上げる。




 そこには、(なし)に形が近いが濃い緑色をした果物が()っていた。


 もちろん日本の様な丸々としたリンゴみたいな形状ではなく、洋梨と呼ばれる梨の方だ。


 ソイツを仮に梨モドキとしよう。


 その梨モドキ、村では不味いと評判の果物だった。


 中心に大きなタネが一つだけあって、そのせいでスパッと一度で切れないので割りにくい。


 頑張って割っても、妙に青臭くて口にしようとするだけでゲンナリする。


 そんな苦労をして食べても、味が全くしなくてモッタリする。


 なので小さな一欠片(ひとかけら)までしか、食べようとしても気力がもたない。



 この梨モドキを見て、一家の長はイタズラ心が芽生えた。


 ――――あの梨モドキを、みんなで食べよう。 そして食べられた量の少なかった2名が、魔物の遺体を家へ持ち帰る罰ゲームとしよう。



 もし子供達の内の誰かが罰ゲームを受けることになっても、重さ的に子供が2人いれば苦労はしないだろう。


 子供だってヨチヨチ歩きの幼い子供は居ないのだし。


 むしろツラいのは梨モドキを食べる行為そのものであり、それは全員が味わう事で、不満も出にくい。


 その辺を考慮するだけ、本当にイタズラとしては些細(ささい)なものであった。





 ――――はずだった。




 翌日になっても戻ってこなかったのをご近所が心配し、村の者達に協力してもらい森へ捜索に出たが、現代の時間にして2時間もしない内に発見した。


 例の罰ゲームとして運ぶことになった魔物の遺体と共に、魔物と一緒の状態になって、ヒトが踏み固めたあぜ道の途中で。


 もちろんなぜ家族が亡くなったのか、死因を探したが明確な傷や(あと)が見つからなかった。


 見たところ魔物の方にも、最近ついたと思われる傷や返り血らしきモノが無いので、家族が魔物に(おそ)われたのではないと断定できる。



 となれば結論だが。


 またサイレントキラーが出た。


 そうとしか思えない。



 このいきなり訪れた不幸に、捜索に出た村人達は被害者となった家族へ、憐憫(れんびん)の情を抱いた。





 サイレントキラーの正体を見つけられる機会は、まだまだ先の未来になるだろう。

以下ネタバレ注意!!
















〜〜〜〜〜〜



梨モドキ


 現実ではアボカドと呼ばれています。


 このアボカドにはペルシンと呼ばれる猛毒があり、人間はなぜか耐性を持っています。


 人間以外の動物……特に鳥は1“グラム”でも摂ってしまうと即座にアウトっぽい猛毒です。

 某ペディア大先生によれば、種類ごとの致死量もまだ分からない程に最近になって見つかった毒。


 その毒の耐性をなぜか持っているのが我々人間。


 でも異世界ではその耐性が無かったら?

 つーか現実の自分たちだって、なぜペルシンへの耐性を持ったのか不明な訳だし、得られていなかった可能性も大いにあります。


 ほんと、人間もアボカドも、訳が分からん。




安全な森の理由


 そのアボカドを食べて死んでしまう魔物が多数。

 結果危険な魔物が極端に少ない森に。


 動物は本能で食べないよう回避。


 つまり魔物はアボカドで駆除されて、動物が繁殖できる安全な森であるとなります。

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― 新着の感想 ―
[良い点] やはり着眼点の違いでしょうか、思いもよらない題材で楽しく読ませていただきました。 人は平気でも動物はダメというものは多々ありますね。本能で理解して食べない物もありますが、中にはペロリと食…
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