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小動物カフェ行ってきたメモ

作者: ミチル

先日、小動物カフェなるものに行ってきた。

前々から気になってはいたが、コロナ禍に加えて出不精な性格のため、なかなか足を運ぶことができなかった。

小動物がだいすきだけど、ウチでは飼えないというかこんなものぐさ人間が彼らを幸せにできると思えないので、あえて飼わない選択をしていた。

でも間近で小動物を見たい欲求がずっと心の中にうずまいていた。だから、正直めちゃくちゃ楽しみにしていた。


お店は某大型商業施設の一角にあった。いきもの特有のにおい対策のためか、全面ガラス張りで他店舗と分離されている。

お店に入る前に入場料とドリンクバーの料金を支払い、ドリンク用のカップを受け取る。ファミレスのドリンクバーみたいな機械で各自注ぐシステムだ。


扉を開けるとまず小鳥たちがいた。何やら鮮やかな色彩のオウムやインコ、文鳥たちだ。目と鼻の先ぐらいにちょこんととまっている。文鳥ってこんな小さいんだ。黒と白と桃色が鮮やかで綺麗。小さくて繊細で美しくて何かの拍子にキズつきそうで怖いので思わずあとずさりしてしまう。

足元には白いハトがテケテケ歩いている。こちらも踏みそうで怖い。

「ギャーーーーーー!!!」

不意にクソデカ鳴き声がこだまして驚いた。声の主は色鮮やかな鳥たちだった。その図体からどうやったらその鳴き声が出るのか。耳をつんざくような鳴き声が何度も響く。落ち着かないので、早々にその場を立ち去る。もしかして彼らは「アヤシイヤツメ、タチサレーーーーーー!!!」とでも言っていたのか。


店内の通路を1匹のリクガメがのしのしと歩いていた。湯たんぽくらいの大きさだろうか。背中は褐色でゴツゴツしている。カメというと遅いものの代名詞みたいになっているが、彼の歩くスピードは意外と速い。4本の脚を一定のリズムで動かして着実に進んでいく。ぼんやり見ているうちに彼は通路の向こうに消えていった。


その横のゾーンではフェレットがハンモックの中で寝ていた。さわってもいいですよーと店員さんが言ったものの、なんだか躊躇してしまって触れなかった。白くて体がにょろっと細長い。よく見るともう一匹下敷きになっている。重くないのか。


次に目に留まったのはパンダマウス。思っていたより小さい。シッポの長さを勘定に入れなければ、自分の親指くらいか、それ以下か。まだ子供なのか、これで成体なのか。なにか穀物らしきものをぽりぽり食べている。かわいい。上があいた浅いアクリルの水槽のようなものの中にいるが、その床面積に対して2匹しか見当たらない。しかもすみっこにいる。びっくりさせたら申し訳ないので、静かに次に行く。


パンダマウスの隣のゾーンにはヒヨコたちがいた。高さ20センチくらい(測ってないからたぶん)の浅くて広いアクリルの水槽のなかに、黄色い毛玉がたくさん寄り集まっていた。ヒヨコのかたまりの上には電球が据え付けられている。なるほど、暖をとっているのか。

ヒヨコのえさが100円だったか200円だったかで売られていた。料金を箱にいれて、挽いた穀類が入った小さなカップを取る。手にえさを少し載せて、水槽のなかに置くと、ヒヨコが一斉に寄ってきた。手が毛玉に包まれる。くちばしで手の皮がつままれてくすぐったい。フサフサしたヒヨコの体がほのかにあたたかかった。

ほぼ全部おなじように見えるヒヨコたちの中に、1匹だけ妙にでかい奴がいた。なるべくえさが行き渡るように場所を変えて3度ほどえさをあげたのだが、そいつは毎回猛スピードで来る。その行動力でたくさんえさを食べていて成長が早いのかもしれない。個体によって素早さとかガッツみたいなものが違うのだろうなと思った。


モルモットとウサギもいた。みんな眠たそうにのっそりしている。ここでも別途えさを買って与えることができるようだ。おちょこのようなカップに数センチ角のキャベツと薄切りニンジンが何枚か入っている。一つ200円。料金を箱に入れて、カップを取って、振り向く。

さっきまで眠たそうにしていたモルモットたちが、立ち上がって水槽のへりに手をかけてこちらを見ていた。ウサギも寄ってきていた。先ほどまでと全然様子が違うではないか。

専用の小さなトングで、カップの中の生野菜をつまんで与える。一匹1枚食べられるようにしたら、野菜が1枚余った。誰にあげよう?みんなまだ欲しそうに見ている。ものすごく申し訳なさを感じながら、適当に誰かに渡す。渡した野菜をほかの子が取ろうとするが、なんとか死守しようとそっぽを向いていた。

まだ満足できない顔でモルモットたちが見つめてくる。もう1カップ買ってあげようか?いや小銭がない、やめとこう。

もう何もないとわかると彼らは巣箱の周辺に戻っていった。モシャモシャと干し草を食べている。やっぱり野菜に比べるとおいしくないのだろう。そりゃあこんな枯れ草おいしいわけないやろと、同行者が言う。いや枯れ草て、もうちょい言い方あるだろう。

ていうか家で飼っていたら山ほど生野菜あげられるのに。200円あったらキャベツ1玉、ニンジン3本くらい買える。何か却ってむずがゆい気持ちになってしまった。


奥には猛禽類がいた。空間はオープンになっているが、足が枝につないである。オオスズメフクロウ、メンフクロウ、ハリスホーク、ベンガルワシミミズク。目つきが鋭い。こちらが見るとばっちり目が合う。かわいいが怖い。特にミミズクの大きさ、おそらく犬くらいある。アイツ食えないのかなー目玉だけでも食えないかなーとか思っていそうでビクビクする。自分の前世はネズミとかカエルかもしれないなと思った。


ひととおり見たので入口に戻る。実はハリネズミやチンチラもいたが、壁と巣箱にはさまって寝てるか、完全に巣箱にひきこもっているかしていたのでスルーしていた。

先ほどのリクガメはまだ歩いていた。どうやら一定の速さで一定のコースをぐるぐる巡回しているようだ。周囲の何にも影響されることなくノンストップで。なんだか大物っぽいなと思った。


初めての動物カフェ体験はこんな感じだった。あのヒヨコ、ニワトリになったらどうなるんだろう。あの狭い店内で、ニワトリまで世話してもらえないのでは。どこかに引き取ってもらうのか。その他の選択肢まで考えるとなんだか鬱になってきたので考えるのをやめた。

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