第八話☆綿花
私の目の前には腰までの高さのフサフサの綿花が頭の上に生えた、謎の生き物が動いている。
キャハキャハ
口も目も何も無いが、その生き物は笑い声を発していた。
…なにこれ…
「ねぇ、これが…綿花?」
「えぇ、そうよ。この子が欲しかったのでしょう?」
歩くスピードはお世辞にも早いとは言えない。もしかして目が見えていないのだろうか?
…あ、壁にぶつかってる。
「確かにそう言ったけど…。この子、目が見えてないの?」
「いいえ。はっきりと見えてるわ。この子はちょっと知能が低いのよ。でも、危険は全く無いいい子よ。」
キャハ
私が首を傾けると、綿花も同じように首を傾けた。
あ、そこ首だったんだ…なんか、可愛いな
「この頭についてる綿花、引っこ抜いていいの?」
「えぇ、もちろん!でも、一本抜くごとに絶叫して油断したらリリィの耳が潰れるわよ。」
なにそれ…。それって有名なマンドレイクの仕事じゃないんですか…。
私の間抜けな顔を見て、レアはお腹を抱えて笑う。
「あははは!まぁ、そんな事しなくても、自然にボトって落ちてくるわよ。もう一匹くらい出しておく?」
「お願い!」
レアがもう一度指を鳴らすと、二体目の綿花が現れる。
ニャハハハ キャハッ
鳴き声に個体差があるんだ…。
綿花同士で頭の上の綿花を絡ませて遊び始めた。
せっかくだから名前つけようかなぁ。
「じゃあ、キャハって笑う子がキリ、ニャハって笑う子がニナね。よろしく!」
私の言葉に応えるように、二体の綿花がワサワサと頭の綿花を動かす。
「あら、眷属にするの??いいじゃない!!じゃあ、私の後輩ね…!」
「眷属…?」
「そうよ!多種族に名前をつけると、自分の眷属にできるの!
自分の絶対的な味方になるのよ。
信頼関係が築ければ、色々力が使えたりするわ。
でも、名前をつけるのは誰でもできることじゃ無いわ。互いに了承することが大前提で、他にも、主人の魔力量とか、素質とか、色々必要なのよ。」
「へ〜、そうなんだ…。じゃあ、レアは私の味方なんだね!嬉しい…!」
私はこの世界に来て、分からないことが多く、心のどこかで不安に思っていたのかもしれない。
レアの言葉に自然に笑みが溢れる。
「え、えぇ。リリィは常識知らずだから、色々教えてあげるわ。」
レアは私の言葉に一度驚いたあと、フンッとそっぽを向いてしまった。
ちょっと尖った耳が赤い。きっと照れているんだな。そんな様子がとても可愛い。
雨風を凌げる立派な家がある。布も作れる算段がつき、服もタオルなどもきっと作れる。
キュゥゥ〜…
「…お腹…空いた…」
少し心に余裕ができると、次に空腹が私を襲う。
考えてみればこの世界に来てから何も口にしていなかった。
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